風魔の小次郎 風魔血風録
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19部分:第二話 夜叉八将軍その七
第二話 夜叉八将軍その七
また武蔵の姿が消えた。今度は横だった。横に姿を現わすと素早い突きを繰り出す。小次郎がその突きをかわすとスコアボードを粉砕したのだった。
「くっ・・・・・・」
「俺の剣撃をここまでかわすとはな」
二人はそれぞれ声をあげた。
「風魔の中でもかなりやるようだな」
「おめえの剣も」
小次郎も言う。
「ただ長いだけじゃないんだな。それに影を踏ませねえ」
小次郎はそこからあるものを感じ取っていた。
「どうやら。ただの忍の技じゃねえな。何なんだよこれ」
「まさか倒すだけでここまで手間取るとは思わなかった」
小次郎の今の言葉には答えずにまた構えてきた。
「だが。それもこれで終わりだ」
「来るか」
武蔵の全身を強い気が覆う。その気を見て小次郎もあらためて構えた。
「ならよ。俺だってな!」
「受けよ」
「風魔烈風!」
先に仕掛けたのは小次郎だった。壬生を倒した風魔烈風剣を出す。しかし武蔵はそれをものともせず突きを繰り出す。それは。
「飛龍覇皇剣!」
「何ィ!!」
小次郎は咄嗟にかわそうとする。しかし間に合わない。武蔵の剣は小次郎の左の腿を貫いた。深々と刺さり血を滴らせさせていた。
「ぐわっ・・・・・・」
「咄嗟にかわしたか」
武蔵は小次郎のその腿から剣を抜いて述べた。
「本来ならば心の臓を貫いていた。流石というべきか」
「手前、今のは」
小次郎は今の一撃を受け蹲っていた。しかしそれでも顔を武蔵に向け闘志は失ってはいない。
「だが次で決める。もうこれでその動きを発揮することもできまい」
「くっ・・・・・・」
「小次郎、覚悟しろ」
再び構える。その時だった。
風が起こった。それはグラウンドでも同じだった。蘭子はその風を受けて自軍のバッターに対して叫んだ。
「今だ!」
バッターを見て叫んでいる。
「打て!風に乗せろ!」
「はい!」
そのバッターも蘭子の言葉に応える。誠士館のピッチャーはスライダーを投げた。だが風はそのスライダーをストレートにさせた。真ん中の絶好球となったそれは打ち抜かれた。打球はバックスクリーンに一直線に飛び先程武蔵が破壊したスコアボードに入り込むのだった。
「やった!逆転だ!」
「やりましたね蘭子さん!」
姫子も今のアーチに喜ぶ。白凰のサヨナラ勝ちだったからだ。勝利を掴んだ彼等は満面の笑顔でベースを踏み抱き合う。小次郎が来てから二度目の勝利であった。
その勝利のボールは戦場に入る。しかし今そのボールを右手で受け止めている男がいた。
「どうした小次郎」
「!?また風だと」
武蔵と壬生、そして八将軍を風が襲っていた。彼等はそれを前から受けて思わず防ぐ。
「あの小僧のものより強い」
「これは一体」
「夜叉相手に遊んでいるのか」
見れば一人の男がボールをその手に持っていた。左目に眼帯をした痩せ気味で精悍な顔をした長髪の男だった。制服は長ランであった。やけにカラーが大きくそれが首どころか頭の下半分のところにまで開かれている。
「遊ぶのもいいが程々にしておけよ」
「竜魔の兄ちゃん」
小次郎はその男の顔を見て言った。
「どうしてここに」
「俺だけではない」
だが竜魔はここで小次郎に対して言うのだ。
「他の兄弟達も一緒だ」
「何っ!?」
「兄弟だと」
八将軍が今の竜魔の言葉に声をあげる。すると。
その竜魔の後ろから長ランの男達がまるで影から出て来るように姿を現わした。皆その手に木刀を持ち口々に名乗りをあげるのだった。
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