風魔の小次郎 風魔血風録
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16部分:第二話 夜叉八将軍その四
第二話 夜叉八将軍その四
「多分駄目だと思う」
「どうしてそう思うんだよ」
「だって皆が言ってるから」
皆がと言うのだった。
「そういう時は大抵駄目だって時だから」
「ふうん。あっ、名前は」
「絵里奈よ」
少女はこう名乗るのだった。
「飛鳥絵里奈っていうの」
「そうか、絵里奈っていうのか」
「うん」
「絵里奈って頭いいんだな」
「じゃあお兄さんは頭悪いんだね」
「ああ・・・・・・っておい」
ノリで答えたところですぐに突っ込み返す。
「何言わせるんだよ」
「御免御免。それでお兄さんの名前は?」
「小次郎っていうんだ」
「小次郎?」
「ああ」
絵里奈の言葉に答える。
「名字は?」
「名字・・・・・・」
こう問われると困った顔を見せてきた。
「ちょっとな。一族の方針でないんだ」
「ないの」
「そういやそうした時は風魔って書いているかな」
「風魔っていうの。変わった名前だね」
「それもそうかな」
言われて少し首を捻る。
「里にいたらあんまりわからねえけれどな」
「それでね、小次郎」
絵里奈はまた小次郎に声をかけてきた。
「ああ、何だ?」
「メル友にならない?」
「メル友!?」
「うん。携帯でメールのやり取りしてね」
にこりと笑いながら小次郎に顔を向けて言う。8
「駄目かな。絵里奈いつも寂しいし」
「まあそうだよな。ずっとここにいるんだからな」
「お兄ちゃんが時々来てくれるけれどそれでもね」
「そうか。よし、わかったぜ」
絵里奈に対して笑顔で応えて言う。
「つまりあれだろ。文通だよな」
「文通!?」
「お手紙でやり取りするんだろ。違うのか?」
「ううん、まあそうだよ」
小次郎のその言葉にこくりと頷く。
「じゃあいいよね」
「おうよ・・・・・・あっ」
小次郎はふと風を感じた。後ろを振り向くとまた風が出て来ていた。
「また風が出て来たな。それじゃあ」
すぐに窓の手すりのところに足をかける。絵里奈はその小次郎に対して声をかけた。
「仕事だから。また来てね」
「ああ、またな」
小次郎は跳んでグラウンドの方に戻った。その彼と入れ替わりに一人の男が入って来た。長い紫の覆いに花束を持っている。それは。
「あっ、お兄ちゃん」
「絵里奈」
その男は鬣を思わせる精悍な髪を持った男だった。顔は引き締まり端整である。眉が上がっておりその下には鋭い光を放つ目があった。超長ランを着ている。
「誰か来ていたのか」
「お友達が来ていたの」
開いたままの窓から彼に応える。
「お友達?」
「うん、そうだよ」
兄に対して告げるのだった。だが彼はそれが何かよくわからなかった。わからないまま話を続ける。それが終わってからグラウンドに向かうとその前で彼の目の前に八人の男達が出て来た。
「何だ、御前達」
「何だではない」
彼等は男に対して横一列に並んで立っている。その状況で彼に対して言うのだった。
「まだ仕掛ける時間ではないが」
「御前に聞きたいことがあってな」
「何をだ、黒獅子」
「武蔵」
名を呼ばれた黒獅子が武蔵の名を言い返してきた。その両手の指をボキボキと鳴らしている。
「貴様、何を考えている」
「何をだと?」
「とぼけているわけではあるまい」
今度は闇鬼が彼に言ってきた。
「我々をここに集めたことだ」
「我等夜叉一族百八人」
陽炎が右手の扇子を己に仰ぎながら述べる。
「全て夜叉姫様の下に対等の筈」
「しかもだ。その中での最強の俺達をここに一度に集める」
白虎が見えている片目を鋭くさせていた。
「それにより八つの地域の抑えが不安定になりかねないのだが」
「そうだ。同志達を統括して治めている我々をだ」
紫炎はその手にライターを弄んでいる。
「呼ぶとはな。何を考えているのか」
「武蔵、貴様」
雷電はその手に鎖を持っている。それをジャラジャラと鳴らしている。
「夜叉を乗っ取るつもりか」
「夜叉を?馬鹿な」
「馬鹿なで済まないがな」
今度口を開いたのは妖水だった。
「貴様は元々夜叉の者ではないのだからな」
「むっ」
今の妖水の言葉に武蔵は顔を強張らせた。
「何が言いたいのだ」
「我等は生粋の夜叉」
不知火は既に身構えようとしていた。顔にも敵意を見せている。
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