世界をめぐる、銀白の翼
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第三章 X《クロス》
戦場
「EARTH」本部ビル
まるで廃墟のようになった廊下
向き合うのは、クロコダイルアンデットとクラウド・ストライフ。
「なぜ彼女らを狙う」
「その方が力になるからさ」
「なに?」
「ま、それは置いといて。こうして一か所に集まってくれるとは、サービスご苦労!!!!」
皮肉を口に、クラウドに向かうクロコダイルアンデット。
クラウドはそれを受け、後ろに投げ飛ばすかのように流す。
そして、後ろに流したそいつに向き合い、改めてこいつの脅威を思い知る。
(流したというのにこの衝撃・・・・しかも流した先の壁がごっそりなくなっている。まともに受けたら・・・)
「打ァッッ!!!」
「二度と立ち上がれない、な!!!!」
ゴォン!!!
直線で突っ込んでくるクロコダイルアンデットに対し、真上から大剣を叩き落としてそれを止めるクラウド。
ワニの顎は閉じる、即ち噛みつく力は途方もないが、開ける力はさほど強くない。
こうして強引に閉じようとすれば、閉じられないことはないのだ。
現にこいつの大きく開かれた顎も、閉じられた。
だが、断じて防げるわけではない。
脅威の種類が変わっただけだ。
「閉じればいいとでも・・・」
ドッゴ!!!
「グ・・・ォオオッッ!?」
「思ってんのかァッッ!!!」
ゴゴン!!ゴガガガガガガガガガガッッ!!!!
顎は閉じ、無数の牙の攻撃はなくなったが、その代わりに固い硬い鼻面が突っ込んできて、大剣でガードしたクラウドごとそのまま壁を何層も貫いていった。
いまさらだが、ワニの皮は堅い。場合によっては銃弾すら弾くほどに。
ただえさえそれなのに、アンデットという肉体であるこいつのそれはすでに鋼鉄の域にも達している。
さらに言うならば突進速度もかなりのものだ。
それだけの速度で、それだけの硬度の物をぶつけられては、如何に翼人と言えども吹き飛ぶのは道理。
「がっ・・・こ、のっっ!!」
が、クラウドもそれだけで終わるような男ではない。
大剣から剣を一本分離させ、二刀でクロコダイルアンデットに切りかかっていく。
それを顎と爪で弾くクロコダイルアンデット。
「無駄よ!!俺の硬皮はそう簡単には斬れん!!」
こいつの言うとおり、この皮膚を切り裂くにはこれではだめだ。
一拍の空白を置いて研ぎ澄ませ、一閃を以って斬るしかない。
だが、その溜めすらをも許さないのがこいつの実力。
距離を取ろうにもさっきの一直線高速移動では溜める暇もない。
しかし
「ハァぁッッ!!」
「グッ、ォ?」
クロコダイルアンデットの体がぐらりと揺れる。
あまりの硬度にクラウドの剣は刃こぼれをしてしまっているが、そもそも斬れないのだから大した問題ではない。
「この・・・やろう・・・頭ばっか殴りやがって・・・」
「いくら皮膚が固くとも、衝撃は確実に脳に届いたようだな」
「揺れ・・・チッ・・・おグぁッッ!!??」
クラウドの攻撃がクロコダイルアンデットの皮膚には通らずとも、その脳を確実に揺らし、脳震盪を起こさせる。
視界が歪み、平衡感覚がなくなったクロコダイルアンデットに、クラウドの蹴りが命中し、その体がゴム毬のように廊下を撥ねてすっ飛んで行った。
「翼人を舐めるな!!!」
「クッ・・・ザァッっ!!!」
頭を押さえて振りながら立ち上がるクロコダイルアンデットに、クラウドが大剣を一つにし、滑空するように向かっていく。
それを上体を逸らして躱すクロコダイルアンデット。
そこからの噛みつき。
が、クラウドもそれを見切って回避、再び攻撃に移る。
互いの体が揺れ、激しい攻防が行われている。
このやり取りではまだ致命的な一撃は入っていないが、クロコダイルアンデットの牙や爪が徐々にクラウドを掠り始めている。
それに対し、クラウドが狙うのはこいつの目玉やのど元だ。
もはや斬れるであろう場所は、そこしか思いつかない。
しかし、相手もそれは解っている。
だからこそ、そこだけを重点的に守っているのだ。
「クラウドさん!!」
「!!(バッッ!!)」
と、そこに観鈴がクラウドに向かって叫び、それに気づいたクラウドがその場からバックステップで離脱する。
そしてその直後、クロコダイルアンデットに向かって観鈴からの衝撃砲が放たれた。
それは竜巻のようなもので、一本のその衝撃砲の中には乱回転をするいくつもの竜巻が内蔵されている。
そんなものを食らえば、どうなるかは明白だ。
上半身が右に、下半身が左に、頭が下に、腕が前に、足が上に
そんなめちゃくちゃな方向に捻じ曲げられていき、クロコダイルアンデットの全身から緑の鮮血が噴き出してきたのだ。
「げ・・・ふ・・・・」
「今だ!!」
そのタイミング。
その瞬間に、クラウドが大剣に魔晄を込めて大きく振り上げて構えた。
そしてその剣に観鈴がさらに衝撃を纏わせ、電動ノコギリのように超振動させる。
準備は整った。
「行くぞッッ!!!」
「ぬ・・・ぐぅぅうう!!!」
ドォウ!!
そんな風の音を置き去りにして、クラウドが疾駆。
黒き翼を背に、青の閃光を剣に宿らせ、純白の後押しを以って、眼前の敵へと斬りかかる。
ドゴッッ!!
「ゲバッッ!?」
クラウドの大剣がよろめくクロコダイルアンデットの腹部ド真ん中に見事命中し、その体を貫いた。
そして大剣に組み込まれた全ての剣が振動を纏いながら解放され、内部からも引き裂かれてゆく。
ギィィィィィィイイイイイイイイイイイイ!!!!
だが、振動波はまだ残っている。
それがその振動音をけたたましく鳴らし、甲高い音をまき散らす。
「吹き飛び、爆ぜろ!!」
ドォンッッ!!!
そして、その抑えられていた振動が衝撃となって一気に爆発、クロコダイルアンデットの背中から衝撃波が吹き出し、その体がノーバウンドで吹き飛んで、壁にぶつかりめり込んだ。
「・・・・フン」
それを見、クラウドが剣をビッ、と振り下ろして背を向けて、剣を頭上で回し、肩に引っ掛けるようにして背中に付ける。
直後、それに反応したかのようにクロコダイルアンデットが爆発し、その炎の中でバキン、という音が彼らの耳に聞こえてきた。
「やったぁ!!」
「ベルトも砕けたな。これでひとまず終わった・・・か」
そういって、クラウドがラウズカードを取り出し、手首のスナップで炎の中のクロコダイルアンデットに投げる。
カードは燃えることなくその体に向かって飛んでいき・・・・・・
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「ヘッヘッへっへ・・・・その程度か?蒼青さんよ!!」
「まだまだァ!!」
コックローチアンデットとの戦闘を始めてから、三分。
しかし、その相手をしている北郷一刀の体感時間は、そんなものではなかった。
コックローチアンデットの移動速度はすでにクロックアップレベルだ。
その攻撃方法は、徒手空拳。
二本の脚、二本の腕、そして、虫のような二本の鉤爪。
それに対して一刀は「ものまね」ともいえるような力を使い、仲間の力を次々と使って応戦している。
まず最初にカブトのベルト、終わればガタック、次にはファイズのアクセルメモリー、風足、アクセルトライアル・・・・・・
思い浮かぶ限りの高速戦闘を可能にする能力を借り受けて戦うのが一刀のスタイルだ。翼人の翼は無理だが。
ちなみに変身などはいちいちしていない。
生身でも十分移動には耐えられるからだ。しかし・・・・
「フッ、はっ、邪ァッ!!!」
「お、ダァ!!ぅおッ!!?」
コックローチアンデットの拳が一刀に伸び、それを左上腕で受けて右手で払い落としてからそのまま右拳を叩きこむ。
が、それをコックローチアンデットは屈伸で回避し、一刀の腹部を鉤爪で引っ掻くかのように裂いていく。
それには一刀もたまらず下がり、腹を押さえて驚愕する。
上級アンデットと交戦するのは初めてだが、まさかここまで強いとは・・・・!!
「さぁ(バッバッ)、もっと俺を(スゥ~)、楽しませてくれい!!(ダンッッ!!)」
一連の構えの動作を行いながら、コックローチアンデットが一刀を挑発する。
その構えに一切の無駄はなく、武人というのがふさわしいほどのものだ。
「ぜってーコスイ手使って来ると思ったのにな・・・・」
「あん?モチそういうのも使わないことはないがな。どっちかってーとそりゃドーベルの犬っこだ」
ダッ!!
そう話しながらも、コックローチアンデットが一刀に向かって中段突きを放って突っ込んできた。
まるで砲弾だ。漆黒の体がさらにそれを連想させる。
それをバックして下がる一刀。その後の追撃も次々と回避する。
が、ついに後ろがなくなり、背中にドっ、と壁が当たった。
「まず・・・・」
「もらったぁ!!」
「ッッ!?」
それを見逃すことなく、コックローチアンデットが顔面に向けて正拳突きを放ってきたのを、一刀が下半身を脱力させて一気にしゃがみこみ回避する。
一刀の頭上を拳が通過し、壁にボッ、という音と共にきれいな穴をあけていく。
「う・・・っそぉ」
「ラぁ!!」
「ぉうぁあ!!」
と、そこから腕を引き抜き、回し蹴りを放つコックローチアンデット。
しゃがんでしまっている一刀は受けるしかなく、とっさに巨大な金棒「鈍砕骨」を取り出してそれを盾にしながら吹き飛んだ。
直撃は避けたために吹き飛んだだけで大したダメージは通っていない。
しかし、背中をジットリと嫌な汗が伝っていくのがわかる。
一刀は翼人としては一番の後輩だ。
覚醒が遅かっただけではない。
観鈴、理樹、クラウドの三人は、もともとそう言った力を元の世界で使った経験がある。
それは前世の記憶から
それは虚構世界で
それは宿敵との戦いの旅で
しかし、一刀はそう言った力に飲み込まれて時空移動をしたことはあったが、自分自身が力を発揮したことはない。
ゆえに、翼人の中で最も多くの力を使え、最も扱えきれていないのだ。
「オォっ!!」
「う、ぬゥッ!!」
が、しかしそうはいってもやはり翼人。強いかどうかと言えば、もちろん強い。
彼の上に(あくまで戦闘面で)立つのは翼人の理樹とクラウド、後は数名の実力者のみ。
一刀の両手にはそれぞれ青龍偃月刀とレイジングハートが握られており、近ければ斬りかかり、遠ければ砲撃で応戦している。
それに対し、近づいて殴るしかないコックローチアンデットは当然高速移動でまず接近してくるが、一刀も高速移動の力にはストックがある。
彼自身は加速開翼できないが、こうすることで彼もそういった戦闘が可能なのだ。
「ち・・・・ポンポンと武器変えやがって・・・・めんどくせぇ野郎だなおい!!」
ブンッッ!!と、空気を震わす音と共に、コックローチアンデットの姿が消えて高速移動に入った。
それについていこうと一刀も腰に出して置いていたキックホッパーのベルトによるクロックアップでついていく。
(これが最後の高速能力・・・これで、決める!!)
そうして一刀がコックローチアンデットの背後に周り、レイジングハートを構えて突貫する。
超至近距離からの零距離砲撃&斬撃
それをもって終わらせようとしているのだ。
このままならば、コックローチアンデットに確実に命中する。
クロックアップに入らなくても、視認することぐらいはできる。それによってクロックアップした直後、背後に一瞬で回り込むことに成功していた。
しかし
「遅いぞ、人間」
「なッ!?」
高速移動のその世界で、コックローチアンデットの姿が消えた。
「消えた!?・・・・違う、まさか!」
「さらなる加速。貴様らには決してたどり着けない速度の極地!!まだまだノロいわ!人間がァッ!!!」
消えた、のではない。さらなる加速。
クロックアップと同等の高速の中で、さらに姿を消すほどの高速!!
ザシュッ!!
「アグッ!」
ガリっ!!
「うあっ!!!」
直後、一刀の体を幾度も鉤爪が遅い、全身にわたって切り傷と刻み込んでいく。
それに加えて、足首も切られてしまい、しゃがみこんでしまった。
戦闘自体は可能な傷だが、足首を負傷してはこれだけの高速移動はもうできない。
と、そこから引っ掻きは殴打へと変わっていき、一刀の全身を嬲りはじめた。
「どうしたどうした!?俺の速度に、ついてこれないことはなかったんじゃないのか!?」
「ぐ・・・こ・・・の、ォォォォォォォオオオオオオオオオオオオオおお!!」
「おぉ!?」
コックローチアンデットの声だけが聞こえるなか一刀が吼えた。
拳を食らったその一瞬。
自らの体を囮に使い、逆にその腕をつかみ取って開翼、翼の内から無数の武器を飛び出させてコックローチアンデットを攻撃した。
その武器の種類は実に多彩で、剣はもちろんのこと、槍、弓、銃、砲撃などのすべてが嵐のようにコックローチアンデットに襲い掛かる。
それだけの攻撃をコックローチアンデットは、最初の十くらいは何とか受け、流していたが、そのあとのものはまともに食らい、一気に吹き飛ばされていった。
そして、一刀がガクリと膝をついて四つん這いに倒れた。
流れた血も少なくなく、連続した高速移動に体力もそろそろマズイ。
しかし、まだ相手はそこにいるのだ。
そう思い、一刀が起き上がって吹き飛んだ先を見る。
しかし
「い・・・ない・・・・?」
しかし、そこにコックローチアンデットの姿はなかった。
一体どこに向かったのか。
一刀がヨロヨロと立ち上がってほかの場所に向かおうとする。
戦いが起こっているのは、ここだけではない。
to be continued
後書き
上級に初勝利か!?な戦場でした!!
蒔風
「流石にクラウドは強いな」
観鈴ちんの活躍も忘れないでね!!
蒔風
「それにしても一刀とは惜しかったというかなんというか・・・」
相手が悪かった、というしかないですね。
クロックアップ上においてのさらなる加速。
ハイパーゼクターでも出せばよかったんですが・・・
蒔風
「一刀の力は多くの力を使うからな。体力の消費も激しいのに、さらにクロックアップを連続じゃぁな」
ってかあそこからさらに加速とかコックさんマジ害虫
ちなみに一刀が出した棍棒「鈍砕骨」がなんなのかわからない方にご説明!!
これは「真・恋姫無双」の魏延(真名・焔耶)の武器です。
青龍偃月刀とレイジングハートは大丈夫ですよね!!
「EARTH」戦闘編はまだまだ続きます!!
蒔風
「次回、砲撃勝負、最期の一人?」
ではまた次回
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