世界をめぐる、銀白の翼
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第三章 X《クロス》
轟天
ドドドドドドンッッ!!
爆散する地面。
破裂する空気。
振動する夜空。
そして、相手に向かってはじけ飛んでいく戦士。
いま、戦いにおける最高潮で起こるような現象が、三つ四つほど同時に発生していた。
「ッッッっ!!!」
「■■■■■■■■■■■■■■■■―ーーーーーーーーーー!!!!」
「だらららららららららぁァァァッッッ!!!!」
ドーベルマンアンデットが疾駆し、それを恋が阻むようにして方天画戟を奮い襲いかかる。
が、その振るわれてくる方天画戟のたった一点に向かってドーベルマンアンデットが腰から抜いた双銃から銃弾を放ち、一瞬のうちに撃ち弾いてしまっていた。
「!?」
だが、恋の感じた衝撃は一撃。
無数の銃弾にもかかわらず、一撃だと感じてしまうほどに早い連射術。
しかしそれでも、彼女にはそれに対し驚く時間はない。
恋は方天画戟を弾かれながらもその手を放すことなく、逆に弾かれたことによってできた勢いをそのまま一回転して受け流す。
そして、もう一度襲いかかる斬撃。
が、ドーベルマンアンデットは即座に自分の足元に向かって銃弾を放った。
一体どれだけの威力が・・・否、一体どれだけの早さで、何発の銃弾を放ったのか。
その反動でドーベルマンアンデットの体が浮き、恋を飛び越えるようにしてそれを回避し、バーサーカーへと突っ込んでいった。
と、そこでバーサーカーが、まるで待ってましたとばかりに振り上げて待機していた岩の塊のような斧剣を、その重量と剛腕をもって力の限り叩きおろした。
大地が裂け、直線上にあった木々が軒並み吹き飛び掻き消えた。
その衝撃にドーベルマンアンデットの体も当然吹き飛ばされるが、いかんせん戦闘不能に追い込まれるまでではなかった。
「紙一重で躱した・・・・」
「いっけーーーーーーーーーー!!バーサーカーーーーーーーーーー!!!」
それをみて、恋が驚愕しイリヤが応援する。
あの斧剣による攻撃は、とてもじゃないがそれ自体を交わしたところでどうにかなるような攻撃ではない。
生半可に見切ろうとするならば、衝撃に身体をさらわれてあの破壊の潮流にのまれて粉みじんになるだけなのだから。
しかし、こいつはそれすらをも見切り、回避した。
衝撃で体は後退させられながらも、それでも回避と呼べる行為を確かにしたのだ・・・・!!!!
「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■――――――――――――!!!!」
それを見、まだ仕留めていないことを確認したバーサーカーが標的に向かってその破壊を実行しに突進していく。
ドーベルマンアンデットが吹き飛びから着地し、前を見るとそこには岩石のような巨体があった。
「チッ!!」
それを軽いバックステップをしながら飛び上がり避け、そのままバーサーカーの肩に乗り、踏み台にして後ろに回ろうとするドーベルマンアンデット。
が、後ろに回った瞬間にバーサーカーも斧剣を振り回しながら反転、その遠心力を使って方向転換と攻撃を同時に行ってきた。
標的は、飛び越えたばかりでまだ着地できていないドーベルマンアンデットだ。
それに対し相手は宙で銃を連射、その斧剣の根元を狙って軌道を逸らそうとしてきた。
無論、その程度で変わるバーサーカーの攻撃ではない。
しかし、それでも意味はあった。
銃の反動でドーベルマンアンデットの身体が動き、その斧剣は結果として命中することはなかったのだから。
が、そこに恋の方天画戟がすっ飛んできた。
着地したドーベルマンアンデットはそれを両腕で受けるものの、衝撃にまるで万歳でもするかのように弾き上げられてしまった。
方天画戟がフォンフォン、という音を立てて回転しながら地面に落ち、突き刺ささる。
と、方天画戟と一緒にすっ飛んで来でもしたかのようなスピードで恋が走り込んできた。
そして、地面に突き刺さった方天画戟を掴み、そこを軸にして一回転、ドーベルマンアンデットのどてっ腹に強烈な後ろ回し蹴りを叩きこんだのだ。
「げっふ!?」
それにはドーベルマンアンデットもさすがに吹き飛んだ。
その先にはバーサーカーがいて、咆哮を上げながら斧剣を両腕で振りかぶって待っている。
それを見たドーベルマンアンデットはとっさに身体を地面に落した。
スライディングする形になり、ドーベルマンアンデットがバーサーカーをくぐりぬけていったのだ。
横に薙がれた斧剣の下をすれすれに潜り抜け、バーサーカーの股下から数十発の銃弾を叩きこんで、さらにはそのまま背後に抜けて背骨の位置を下から上に、正確に撃ちぬいていった。
その攻撃にぐしゃりと身体がねじれて地面に倒れるバーサーカー。
彼の皮膚には、通常の銃弾など通らない。
しかし、同じ個所にこいつは少なくとも八発ずつ打ち込んでいるのだ。
しかも、打ち出しているのは上級アンデットの武器になっている銃である。
それだけの数を打ち込まれては、さすがの彼の背骨も砕けるだろう。
背骨(支え)を失えば、体が崩れるのは当然だった。
が、本当に恐ろしいのはこいつの連射速度だ。
背後に回った一瞬でバーサーカーの背骨をハチの巣にし、しかもその放った銃弾の数は見た弾痕の×8だけの数があるのだから・・・・・!!!
そこで崩れてしまったバーサーカーの巨体を飛び越え、恋が方天画戟を手に飛びかかってきた。
それを体を回転させて回避し、顔面に銃弾を放つドーベルマンアンデット。
しかし、恋はそこであえてさらに踏み込む。頬の真横に銃身が来るほどにまで。
そうなってしまっては銃弾など当たらない。
ドーベルマンアンデットは距離を取ろうと回し蹴りを右でミドル、そのまま左の踵でハイ、右足で足払いという順に回転して放ち、それを受けて後退した恋に向かって最後に銃口を向けた。
が、それに臆することなく恋は攻撃が終わると即座に接近し、その首を取ろうと方天画戟をつきだしてきた。
良い的になるだけだ。
そう思い、ドーベルマンアンデットが引き金を引いて恋の頭を吹き飛ばそうとする。
しかし
「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■!!!!」
そこに復活したバーサーカーが割って入り、銃弾をすべて皮膚で受け止めてしまったのだ。
彼に、一度放った技は通用しない。
彼を倒すには異なった攻撃をいくつもする必要があるのだ。
そして、バーサーカーは壁になりながらもドーベルマンアンデットに突進し、拳をふるって襲いかかった。
それに対しドーベルマンアンデットは、ピョン、と軽く飛んで、あろうことかバーサーカーの肩の上に着地したのだ。
「チェックメイトぉ~~~~~」
そしてそんなふざけた声を出し、バーサーカーの顔面に向かって引き金を引いた。
しかし、効かないものは効かないのだ。
自分にたかるハエを追い払うかのようにバーサーカーが腕をふるうが、それに合わせてドーベルマンアンデットは背中、頭、反対の肩へと飛び移ってなおも銃弾を浴びせにかかる。
と、そこに恋が割って入り、ついにドーベルマンアンデットの後ろ襟のような個所を掴んで地面に引きずり下ろした。
地面に倒されるドーベルマンアンデットだが、即座に恋に向かって足払い、そのまま立ち上がり、回転しながら銃弾を放ち同時に蹴りなどの攻撃もしてきた。
ガン=カタと呼ばれる戦闘方法だ。
銃を使った格闘技、とでもいったらわかりやすいだろうか。
しかし、その攻防虚しくドーベルマンアンデットの首元に恋の手刀が命中し、さらにはバーサーカーの蹴りが横っ腹に、体制を崩したところに恋の蹴りとバーサーカーの拳が叩きこまれてその体が森を突き抜けて吹き飛んだ。
「や、やったの!?」
「・・・・・・・・・・・・・」
「・・・まだ。腕で防がれた」
暴風雨のような戦闘だったために、到底顔の出せないイリヤが、終わったのかと二人のもとへと駆けてきた。
しかし、恋曰く終わってはいないらしい。
最後の二人の蹴りと突きは、何とかガードされたらしいのだ。
しかし、あれだけの威力。おそらく腕はただでは済んでいないだろう。
と、そこでバガァッ、という破砕音が聞こえてきた。
見ると、吹き飛んだ先の大木に背中からめり込んでいたドーベルマンアンデットが、両腕両足を大の字に開いて、そこの木を弾き壊して脱出したようだった。
が、口や胴体からはポタポタと緑色の血液を流し、ベルトに至っては「ピキ・・・ピピキ・・・・」と今にも割れそうな音を出しているのだ。
終わりは近いように見えた。
「が・・・はぁ・・・やはりわたくしめはまだ未熟者でしたなぁ・・・こっちにも何体か連れてくりゃぁよかったぜ・・・」
そんな言葉を吐くドーベルマンアンデット。
それを見て聞いて、恋とバーサーカーが身構えた。
なぜならば、このアンデット。
この状況になってもいまだ―――――
「このままベルト割られちゃぁ退場になっちまいますでな。逃がさせてもらいましょか!!」
笑っていたからだ。
ジャカッッ!!!
そう言って、双銃を構えるドーベルマンアンデット。
しかし、これだけでは終わらなかった。
ジャカジャカジャカジャカジャカジャカジャカカカカカカカカカカカカカッッッ!!!
「!!??」
「な、何よあの数!!??」
「・・・・俺の銃が二丁しかないと思っていたのか・・・・甘いですよ?」
そういうドーベルマンアンデットの握っている銃の数は、確かに二丁だ。
しかし、それはあくまで「握っている」数。
他の銃は、それぞれの腕を筒状に囲むようにして、くるくるとゆっくり、回っていた。
それはまるで、ガトリング銃。
しかもそれは腕だけでなく、胸の前に一つ、そして両肩の上にもあり、計五砲のガトリングがあるように見えた。
ガトリング一つ一つはまず、最前列に銃がこちらに銃口を向けた形で魔法陣でもあるかのように回転し、その隙間から狙うようにしてその後ろにも同じように銃が置かれていた。
合計でいくつあるのだろうか。
そして、こいつの連射速度から考えて、一秒に打ち出せる弾数は容易に億を越え、兆を越え、京にまで達する勢いすらあるだろう。
「未熟ゆえに、逃げに入ります」
「なっ・・・・」
「黒空流星群!!!」
DORRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRR―――――――――――――――――――――!!!
そうして放たれた、無数の弾丸は、もはや弾丸として迫って来はしなかった。
砂嵐が一つの大きな塊に見られるのと同じように、この銃弾の嵐は五つの塊となって三人に向かって飛び、森を吹き飛ばすどころかその直線上をきれいさっぱり消滅させてしまった。
そしてそれが止んだころ、そこにはもうドーベルマンアンデットの姿はなかった。
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ボコ・・・ゴ、ボコォッ!!!
「ぷ、はぁっ!!げほげほ・・・だい、大丈夫!?二人とも!!!」
それから数分後
黒空流星群の跡となった地面の下から、土を押しのけてバーサーカー、恋、イリヤの三人が出てきた。
無論、無事ではない。
あの一瞬で、バーサーカーは地面を斧剣でえぐり飛ばし、隠れるための穴を掘った。
そしてそこに恋とイリヤが飛び込み、恋はそれでも伝わってくる衝撃から守り、そして土に押しつぶされないようにイリヤを下に抱きかかえていたのだ。
バーサーカーは地面に潜れはしたものの、最後だったので当然受ける衝撃も大きい。
しかし、それでも彼は初撃で三つ命を落としたものの、その後のは耐えきっていた。
「ゴ・・・ォォ・・・・」
「ハァ・・・・・ハァ・・・・・・つか・・・れた・・・・」
「大変大変大変・・・・・と、とりあえず城に!!」
そう言って狼狽するイリヤだが、彼女とて聖杯戦争のために送り込まれた魔術師なのだ。
すぐに冷静を取り戻し、バーサーカーを霊体化させてひっこめ、恋の体を背中に抱えてずるずると歩き出した。
それから五分。
比較的早めに彼女は屋敷から助けに来た渡やセラたちに会うことができ、無事に城に戻った。
屋敷を取り囲んでいたアンデットはもういない。
ドーベルマンアンデットがひいた瞬間に、彼らもいなくなっていた。
to be continued
後書き
はい、天も轟く戦闘でした!!
ドーベルマンアンデットが特化したのは連射術と素早さです。
速さではなく、素早さです。
近接戦闘においてかなり優位になりますね。
そして連射、速射。
さらには実は持っていたものすごい数の銃。
二丁じゃなかったんだね
イリヤは守れても、損害は大きいです。
バーサーカーなんて背骨で一回、黒空流星群で三回、命を失ってますからね。
え?城の方ですか?
あっちのアンデットは有象無象ですので、無双してきましたよ!!
一階部分は完全に瓦解してますけどね。
さて、では次回はついに出てきた天才科学者!!
ではまた次回
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