世界をめぐる、銀白の翼
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第三章 X《クロス》
攻防
深夜
とある駅前広場で
「変身!」
「カァ~プ」
光夏海が、キバーラと共に変身し、仮面ライダーキバーラへと姿を変え剣を構えた。
その眼前には三体のアンデット。
右から見ておそらくそれぞれ、松、竹、梅の始祖たるアンデットだろう。
確かに、蔦や蘭の始祖たるアンデットがいたから植物系のモノがいておかしくはないのだが、こう並んでは竹ぐらいしか見た目ではわからない。
「あれ、なんのアンデットなんでしょう?」
「さあ?みんな植物、って言うのははっきりしてるけどね」
「とにかく・・・ここから先にはいかせません!!」
夏海がキバーラに聞くが、まあわかるわけもない。
しかし、ここですべきことは決まっている。
ここは涼宮ハルヒの家の近くの駅前だ。
もう数キロ先に行けば彼女の自宅がある。
少女たちの収集の際、当然こんな時間なので集めきれない少女もいたのだが、ハルヒに関しては話が別だ。
彼女に自身の力―――世界を無意識に改変させるほどの力を自覚させてはならない。
そのために、とりあえず彼女がここに来ていたのだ。
「EARTH」からの話だと、すぐに増援が来るそうなのだが・・・・
「まだみたいですね・・・」
「なぁに言ってるのよ夏海ちゃん。わたしたちなら余裕よ?」
そんなことを言っていると、三体のアンデットがそれぞれの葉を飛ばし、キバーラに向かって攻撃してきた。
それを剣振りながら弾いていくキバーラだが、いかんせん数が多すぎる。
「ど、どうしましょう!?」
「うーん。わたし、人間を変身させられはするけど、その分形態変化とかはできないのよねぇ」
「それじゃだめ押しじゃないですか!!」
「だぁいじょうぶ。その分、お兄ちゃんよりも優れたところがあるんだから。行くわよ!」
そういって、キバーラの背から白い翼のようなエネルギーが噴出し、それによって一気に攻撃ごとアンデット三体を飛び越え背後に回った。
「ハァっ!!!」
そして直後、ジャギィ!!という音とともに振り返ってきたバンブーアンデットを縦に切り裂き、そのままベルトをも叩き割った。
「かぐや姫が入っていたら真っ二つだったわね」
「そんなことより、次ですよ!」
そのアンデットにカードを投げつけ封印消滅させるキバーラだが、ほかの二体は逃れ、パインアンデットが針のような棘を飛ばし、追ってくるキバーラを押しとどめた。
その隙にプラムアンデットが一直線に目的地へとジャンプしていく。
「この・・・邪魔を・・・しないでください!!」
キバーラを向かわせないよう邪魔をしてくるパインアンデットにそう叫んだキバーラが、背のエネルギーを剣にまとわせ、頭上に掲げて構えた。
その間も棘の弾幕が彼女に飛んできているのだが、それはエネルギーの膜によってすべて弾かれてしまっている。
「ハァァァアあああ!タァッ!!!」
そして、一振り。
その一振りによって剣から斬撃が飛び出し、パインアンデットへと向かっていった。
無論、それを腕でガードしようとするパインアンデットだが、目の前でその斬撃が散り消え、直後全身を切り裂かれて爆発した。
この斬撃は、一つに見えて一つではない。
無数の細かい斬撃波が固まることで、一つに見えているだけだったのだ。
「ふう・・・急がないと!!ハルヒさんが!」
そうして、カードをアンデットに投げて、その姿を封印消滅させるキバーラ。
戻ってきたカードを回収し、彼女が急いでプラムアンデットを追っていった。
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ザァッ・・・・・・
とある一室。
ベットでは時たま「神」とも表現されるような少女が眠っている。
そんな涼宮ハルヒの寝室に、梅の花びらが舞ったと思うとまるで忍のようにプラムアンデットがその場に姿を現した。
そして、ハルヒの体に手を伸ばし、その体を抱えあげ、窓の桟に足をかけて外へと出ていく。
ハルヒは熟睡しており、全く起きるそぶりなどない。
このまま彼女は連れ去られてしまうのか。
そう思われた。
しかし
ドドドドンッ!!
「・・・・・ギゥ?」
「困りますね。我らが団長を連れて行ってしまっては」
パインアンデットの体に三発の赤い光弾が命中し、その足をその場にとどめた。
そして、住宅街の道にアンデットが着地すると、そこには一人の青年が立っていた。
立っていたのは、SOS団副団長で、自称超能力者の青年である。
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「ここか・・・・?」
キバーラと松竹梅のアンデットが戦闘を行っていた場所からから、また少しばかし離れたマンションの前。
そこに、また別のアンデットが三体立っていた。
その真ん中にいる個体は、堅そうな皮膚に、振ればしなるような剣を持っていて、しかも言語を発していた。上位である。
「行け」
そう一言、脇にいるアンデットに発すると、うち一体がマンションの壁に張り付いてひょいひょいと登っていく。
全身は緑。四つん這いになって這っていくその姿は間違いなくカエルのそれだ。
そうして、ある一室の前にぴたっと止まって、中をぎょろぎょろと確認しはじめた。
深夜とあって、部屋の中は真っ暗だ。
しかしそうでなくても、この部屋には生活感という物が稀薄な気がする。
そして、フロッグアンデットがその中に侵入しようと、口の中をモゴモゴさせてから何やら紫色の液体をべっ、と吐き出し、べちゃりと張りつけた。
すると静かにガラスは溶け、大穴があいてその穴から侵入しようと手をかけた。
《final vent》
そんな時だ。
そんな無機質な音声が聞こえ、小さく、本当に小さなタンッ、という音を立てて、屋上から何かが飛び降りてきた。
頭上を見上げるアンデットには何も見えない。
視界に広がるのは漆黒の夜空と、マンションの小さな光のみ。
しかし直後、そこには敵がいたということを、フロッグアンデットは身体を顔面から貫かれながら思い知った。
見えたのは、漆黒の中でもさらに黒さを映えさえた一点。
そしてそれは一筋の斬撃となって、フロッグアンデットを貫き、地面に叩きつけたのだ。
ドシャッ、という音を立てて、フロッグアンデットが落ちてくるとそこにカードが突き刺さり、その体を消滅させた。
カードが飛んできたのは、マンションの陰から。
そこに立っていたのは、アギトと龍騎の二大ライダーだ。
「貴様らは・・・・」
「城戸さん、あいつしゃべってますよ?」
「上位アンデット、って言うらしいな。強いみたいだぞ?」
と、そこにさらにふわりとマントをなびかせて、仮面ライダーナイトもその場に降りてきた。
「馬鹿とアホで会話してないで、早くこいつらを倒すぞ」
「はーい」
「蓮、俺のことバカって言うなよ!津上も、はーいじゃないだろ!?」
そんな漫才をする三人だが、目の前のアンデットはそれを見ても特に反応することはなく、三人を見ていた。
「仮面ライダー・・・というものか」
「ん?そうですけど、あなたは?」
「自己紹介して仲良くなろうという間柄でもあるまい?」
「まあ、そうですけどね」
「はぁ・・・やるぞ。お前はそっちだ」
アギトとそんな簡単な会話をしてからそう命じると、残った一体のアンデットが走り出し、ナイトに襲い掛かって行った。
「うわぁ・・・こいつらなんのアンデットなんでしょうね?」
「知るか」
「っしゃぁ!行くぜ!」
ナイトに襲い掛かっていくのは、ヤシの始祖たるアンデット。
そしてアギトと龍騎には、上級アンデット―――桜の始祖たるブロッサムアンデットが襲い掛かった。
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ドンドンドンッ!
ハルヒを担いでその場から逃げようとするプラムアンデットを、古泉一樹が赤い光球を投げ放って押しとどめていた。
現在この場で彼が力を使えるのは、ほかでもないハルヒの力だ。
古泉の推測では無意識化で自分に降りかかる脅威を察知し、そして自分を守れるだけの力を古泉に与えたのだ。
ゆえに今、こうやってアンデットを押しとどめておいているのだが・・・・
(この力で充分・・・とでも思われているのでしょうか?少々きついのですが)
そう、実際には倒すには至らない。しかし、古泉はさほど焦ってはいなかった。
なぜならば、彼女がこの程度の力で充分だという認識で力を使えるようにしてきたのならば、それで大丈夫なのだということなのだから。
そして
ギャリリリッ!!
アンデットの体に、鞭のようなものが巻き付いて、その場にハルヒを落とさせた。
そしてそれをキャッチしたのは、バイクフォームで突っ込んできた仮面ライダーアクセルだ。
「これは・・・」
「よくやった。後は任せろ」
そういって古泉の肩を叩いたのは、レヴァンティンを連結刃にして握っているシグナム。
そしてその腕を大きく上に振り上げて、アンデットをコマ回しのように上空へと投げ放った。
「ギ・・・ギヒィ・・・・?」
「紫電、一閃!!」
《アクセル!マキシマムドライブ!!》「絶望が、お前のゴールだ!」
ド、ドンッ!!
シグナムの紫電一閃、アクセルのアクセルグランツァー。
その二撃が確実にプラムアンデットに叩き込まれ、その体が燃え盛りながら地面に落ちていった。
「ありがとうございます。僕だけではどうにも倒せそうもなかったので」
「仕方ない。あれは不死生物だ。こうしなければ倒せんからな」
そういって、アクセルがカードを投げつけ、アンデットを消滅させた。
その間にシグナムがハルヒを起こさないように部屋に戻し、二人の元に帰ってきた。
「何が起きているんです?」
「彼女の存在上、まだ連絡していなかったな」
「実は・・・・」
そうして、事の次第を古泉に伝える二人。
ほどなくしてキバーラも追いついてきた。
しかし、ほかの場所でも、戦闘は行われている。
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《FINAL VENT》
「オオっ!」
ドゴォ!!
サバイブへと強化変身したナイトが、パルムアンデットにファイナルベントを発動させて吹き飛ばした。
そしてそれをカードに封印消滅させると、いまだブロッサムアンデットと戦っている、アギトと龍騎の元へと走っていった。
すでにアギトはバーニング、龍騎はサバイブへと強化変身しているのだが、堅い樹皮とその技量によって、攻撃らしい攻撃が全く入らないのだ。
「こっちは二人とも炎だってのに・・・・」
「これはキツイ・・・ですね・・・」
「ハァッ!!」
と、そこで息を切らして構え直す二人を飛び越え、ナイトがダークブレイドで切りかかってく。
しかし、それすらもいなされ、逆に回転からの後ろ蹴りで飛ばされてしまった。
「ガハッ・・・」
「「桜切るバカ、梅切らぬバカ」、という言葉を知らないのか」
「お前は、枯れてもいいからな」
「なるほど」
そんな何とも思っていないような声を出しながら、ブロッサムアンデットが腕をかざして三人に向ける。
そしてその腕の前に、桜の花びらが押し固められて行き、エネルギーを纏って高速回転し始めた。
「な!?」
「まずい!!」
《《guard vent》》
キュボッ、ドッゴォ!!!!
そして、それは撃ち出されて三人へと向かい、大爆発を起こす。
「・・・・・ガードするか」
しかし、ブロッサムアンデットはやれたとは思っていなかった。
現に、土煙が晴れたそこには三人の姿はしっかりとそこにあった。
だがしかし、無事でないことも確かである。
ナイトと龍騎が二人掛かりでガードベントを発動させたものの、それでもあの衝撃には耐え切れずにサバイブが解除され、アギトのフォーム内でも耐久力なら随一のバーニングフォームすら、ノーマルのグラントフォームに戻っていた。
さらに言うならば、攻撃のエネルギーをアギトは真っ向から殴りかかっていたために現在は仰向けに倒れており、龍騎とナイトは膝立ちになってすぐには立ち上がれない状態だ。
「なんて火力・・・・だ・・・」
「く・・・ぉおお・・・・」
「・・・上々だな」
ガシャァッッ!!!!
ブロッサムアンデットがそう呟き、マンションの一室を見上げると、その窓ガラスが派手に割れて、ガラスの雨と共に何かがどしゃりと落ちてきた。
それは透明であり、地面をバタバタとのた打ち回ったのちに姿を現し、バキン!とベルトが割れて沈黙した。
おそらくはヒトデの始祖たるアンデットだ。
こいつは三人が交戦している間に壁を登り、しかも身体を擬態で隠していた。
だが、どうやら撃退されてしまったようで、今こうして落ちてきたのだ。
「む・・・・・?」
そして、ブロッサムアンデットが見上げた先のマンションの一室に、一人の少女が立っていた。
その部屋の主である、長門有希。
その少女を見てからブロッサムアンデットは顎に手を当て、少し考えたのちに踵を返してその場を去ろうとする。
「まて・・・・どこに行く!!」
その背に、何とか這い上がった龍騎が剣を構えて聞くが、ブロッサムアンデットは特に振り返ることもなく、ポツリと言ってその場から消えた。
「あれでは見込めないな」
そうして、この地の脅威は去って行った。
再び、謎をその場に残して。
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「兄貴ぃ、来ないよ・・・」
「は・・・どぅせ俺なんか・・・」
一方朝比奈みくる宅前。
そこに仮面ライダーキックホッパー、パンチホッパーである矢車想と影山瞬とが体育座りで待機していた。
こちらにはアンデットの「ア」の字もない。
二人は変身することもなく、黙々とカップめんを食べていた。
「なあ・・・こっち来ないんじゃ・・・」
「かもしれんが、来た時が大変だからな。それに・・・こんなのが俺らにはお似合いだ・・・・」
「兄貴ぃ・・・」
「・・・・泣くな」
「「はぁ・・・・」」
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「いてて・・・・」
「大丈夫か、津上」
「ええ・・・・ありがとうございます照井さん」
「いや・・・問題はない」
それから一、二時間後
もうあと一時間もすれば夜も明けようかという時に、照井、シグナム、夏美が長門のマンションにやってきて津上たち三人と合流した。
古泉は明日・・・・というかもう時間的には今日、学校があるために家に帰らされた。
警察官がサボりを見逃すわけがない。
「では、アンデットが「これでは見込めない」・・・・そう言ったんだな?」
「ああ。わっけわかんねぇよ。あそこまでしといて間違いでした、かよ・・・」
「だけどそのおかげで助かったんですから。文句は言えません。気持ちはわかりますけど」
「確かにそうだけどさぁ・・・・・」
そして、そこでは、その六人が情報のやり取りをしていた。
長門はすでに寝ている。
というか寝かされている。
彼女のスペック上、不眠不休でも大丈夫なのだろうが、津上がそれはいけないと寝室に押し込んだのだ。
「涼宮ハルヒ、長門有希。この二人は力を持つ少女としてはかなりトップクラスに入るはずだ」
「だがそれを「見込めない」・・・・?訳が分からないな」
照井とシグナムが聞いた話を頭で整理し考えるが、どうしてもわからない。
なぜ彼女たちは見逃されたのか。
さらに朝比奈みくるの家で張っていた矢車と影山からの話だと、アンデットは現われすらしなかったそうだ。
「ただ単に力のある少女ではない、ということか・・・・?」
「いったい何が・・・・」
「どうなってるんでしょうねぇ・・・」
そうして、六人はほどなくしてその場から「EARTH」へと帰還した。
考えても始まらない。
わかったことは、とりあえず彼女たちは狙われない、ということだ。
to be continued
後書き
と、言うわけで今回は深夜の攻防
蒔風
「さて、ただ力がある、というだけではなさそうだな」
ええ、力があるというだけではないです。
それを考えれば、十人は何とか絞れるかと。
ちなみにそう考えると、美琴はかなりギリギリだったんだなぁ、といまさら思いましたwwww
蒔風
「そういえば地獄兄弟の二人はどうしたんだ?」
あのまま直帰しましたよ。
蒔風
「哀れな・・・・かわいそうに・・・・」
しかし、それがネタ
蒔風
「次回、今度はマリアージュ事件を進めたいらしいな?」
そうですねぇ・・・・
ではまた次回!!
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