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真田十勇士

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巻ノ八十五 猿飛大介その九

「御主の目指すものは高い」
「今よりもじゃな」
「遥かに高い、果てがない」
「そうまで言っていいものか」
「だからじゃ」
「慢心せずにか」
「上を目指すのじゃ」
 忍者のそれをというのだ。
「十人でな」
「そしてじゃな」
「殿をお助けせよ、殿も目指されておられる」
「天下一の武士をか」
「果てしないその道を歩んでおられる」
「それでか」
「御主も歩め、十人で」
 また孫に言った。
「天下一の忍になるのじゃ」
「服部半蔵殿や風魔小太郎殿以上の」
「そうじゃ」
 まさにというのだ。
「より高い、空よりも高いな」
「そうした忍になり」
「場所に目指せ、よいな」
「うむ、ではな」
「まだ修行が足りぬと思えばな」
「伊予においてか」
「わしと修行をするのじゃ」
 孫に対して言うのであった。
「わかったな」
「そう思えば行くぞ」
「待っておる、しかしわしもな」
 ここでだ、大介は笑ってこうも言ったのだった。
「歳じゃ、だからな」
「何時までもか」
「おられるかわからぬ、しかしな」
「この世におる限りはか」
「御主が来ればな」
「修行をつけてくれるか」
「そうする、草木や石の声を聞けたな」
「うむ」
 確かにとだ、猿飛は祖父に答えた。
「それはな」
「ではさらにじゃ」
「上のところをか」
「わしもまだ至っておらぬが」
「二人でか」
「至りそしてじゃ」
 その至ったものをというのだ。
「得て殿をお助けせよ」
「そうしよう、ではな」
「うむ、待っておるぞ」
 伊予、この国でというのだ。
「この世におる限りな」
「それではな」
 こう言ってだ、最後に。大介は幸村に深々と一礼すると風と共に姿を消した。幸村はその風を身体に受けつつ。
 十勇士達にだ、こう言ったのだった。
「では我等はな」
「はい、これよりですな」
「天下の動きを見つつ」
「そしてそのうえで」
「鍛錬も積み」
「さらに強くなりますか」
「拙者は天下一の武士になる」
 幸村はあらためてだ、自身でも言った。 
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