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ハイスクールD×D 黒龍伝説

作者:ユキアン
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  7話

グレモリー眷属VSオレ一人という変則レーティングゲームの開催が決定した。会長の指示で戦った場合、オレの持ち味が生かしきれておらず、観戦していた悪魔達から不満の声が上がったのだそうだ。そのために急遽組まれたレーティング。ハンデとしてルールとフィールドはオレの希望に合わせてくれるそうなのでフラッグストライクのディフェンスを貰い、フィールドは前回と同じショッピングモールにしてもらった。

フラッグストライクとはオフェンス側とディフェンス側に分かれて行うレーティングゲームで、通常のレーティングゲームの勝利条件に加えて、オフェンス側はフラッグを破壊することでも勝利となり、ディフェンス側は制限時間までフラッグを守れば勝利となる。そしてディフェンス側は先に会場入りし、フラッグの位置を決定してから罠を仕掛けることが許されている。フラッグは一度設置すると場所の変更はできない。

他は通常のレーティングゲームと変わらない。まあ、オレがやられれば負けだな。そして向こう側もグレモリー先輩がやられれば負けだ。

さて、ゲームに向けて色々と調査と調達にいきますか。





よし、罠はこんなものでいいだろう。あとはスモークを大量に焚けば準備は完了だ。セラフォルー様の要請通りにフード付きのコートとゴーグルとマフラーがちょうど良い。それらに加えてグローブと特注の靴を用意してある。さて、敵がどこにでてくるか。確率は5分の1。出来れば前回の本陣だったフードコートはやめてほしい。

アナウンスと同時に感知結界に反応有り。場所は、ショッピングモールの南側出入口。よっし、ベターな位置だ。素早く音を立てずに移動してスモークに驚いて戸惑っているグレモリー先輩達の元に忍び寄り、アルジェントさんの口元をガムテープで塞いで、後手に手錠で拘束して拉致する。そのままスモークの薄い位置まで連れて行き、手榴弾型の聖水散布装置の上に横たえる。

「起き上がるとレバーが起きる。そうすると高純度の聖水200mlが散布される。一発リタイアは確実だ」

アルジェントさんにそう告げてからその場を離れてグレモリー先輩達を確認しに行く。魔力でスモークを散らしたのか、少しずつスモークが薄くなっていたので予定を変更して吹き抜け部分の天井にワイヤーアンカーを使って張り付く。スモーク内でゴーグルを赤外線スコープに交換して様子を伺う。

全員が一塊になって周囲を警戒しながら移動しているようだ。だが、上への警戒が薄い。たぶん、飛行などに使う魔力や黒い龍脈の力を感知するつもりなのだろうが、想定が甘すぎる。最後尾にいるゼノヴィアさんが通り過ぎたところで追加のスモークグレネードををグレモリー先輩達の前方に向かって投げると同時に天井から急降下、スモークグレネードの方に意識が行っているゼノヴィアさんに裸締めを決めると同時に再び天井に戻る。ほとんど抵抗なく10秒程でゼノヴィアさんが意識を失い、転送され、って今の転送で場所がバレる!?

ワイヤーをある程度伸ばしながらブランコの要領で2階に飛び降りて逃走する。

『リアス・グレモリー様の騎士、リタイア』

わざと音を立てながら走り、おもちゃ屋にまで誘導する。展示されているおもちゃのスイッチを全て入れて、その中に改造して用意したエクソシスト達が使う銃とカメラを取り付けた戦車を3台紛れ込ませる。そのままスタッフルームから換気用のダクトに入り込んで隣の本屋のスタッフルームまで移動して展示物に紛れ込ませている戦車に取り付けたカメラを確認する。

一番近くにいるのは木場か。砲塔をちょい右、少し下に向けてっと。何も知らずに近づいてきた所を、くたばれ!!って、あの距離で急所を外しやがった!?まあいい、利き腕は潰した。時間をかければそれでダメージは増える。存在がばれた以上は隠密の意味はない。こいつは放棄して残りの2台。棚の隙間に放り込んだやつと、別のおもちゃの箱をかぶせたやつ。先に箱をかぶせたやつだな。ラッキー、目の前に兵藤の背中がある。ほいっ

『リアス・グレモリー様の兵士、リタイア』

これで危険な兵藤とゼノヴィアさんを仕留められたな。次はロスヴァイセ先生と姫島先輩だな。棚の隙間のやつの射角には誰もいないので再びワイヤーアンカーで天井に張り付き、スナイパーライフルを構える。ハートショットにだけは気をつけておもちゃ屋から出てくるのを待つ。出てきた所で1射ずつ聖魔剣を削って作った弾丸を叩き込む。障壁で防ごうとしたようだが、それが原因で弾丸が体内に食い込んだままになり、苦しみながらリタイアしていく。

『リアス・グレモリー様の女王、戦車、リタイア』

これで一先ずは落ち着けるな。無差別に爆撃されるとフラッグがやられる可能性があったからな。頭の固いグレモリー先輩だけなら、それをされる心配は低いからな。前の時のように壊しすぎるとリタイアだと思っているだろうからな。ここからは持久戦に持ち込みながら精神的に追い詰めるか。

スコルとハティを呼び出して犬笛を使って指示を出して散開する。まずはスコルに遠吠えを上げさせて存在を知らしめる。そして逆方向からハティを駆けさせて大きな物音を立てさせ、両方とも音を立てずに位置を変えさせる。そしてまた、時間を置いてから同じことを繰り返させる。

その間にオレは最後の仕掛けの様子を伺いに行く。う〜ん、もうちょい時間がかかるか?かき混ぜれば少しは進むかな。物干し竿でかき混ぜてからその場を後にしてグレモリー先輩達の様子を確認する。スコル達が襲い掛からないと気づいたのか、緊張が少し薄れているようだ。ダメダメだな。相手はスコル達だけではないんだから。とりあえず、アルジェントさんの所に誘導するためにスコルに一度襲わせる。ただし、爪と牙を使わないようにしてだ。

固まっていた所にスコルとハティが飛びかかり、頭突きや蹴りでグレモリー先輩達を吹き飛ばして、また煙に身を潜める。そして再び遠吠えと物音でアルジェントさんの居る場所まで誘導する。

『リアス・グレモリー様の騎士、僧侶、リタイア』

しばらく待っているとアナウンスが流れる。これで残りはグレモリー先輩とギャスパーと塔城さんだけか。よし、休憩にするか。スコルとハティを呼び戻してフラッグを置いた位置まで戻る。スコルとハティに特製の餌、無臭のジャーキーを与える。できる限り痕跡を消す必要があるためにわざわざ用意したものだ。オレもマフラーをずらして水を飲んでカロリーメイトを食べる。それが終わればスコルとハティをブラッシングしてやる。

今頃、グレモリー先輩達は疑心暗鬼に囚われているだろう。相手の姿は見えない、ダメージを受けすぎた、ダメージを与えられていない、予想外の戦法、急に止まった攻撃、その他もろもろがグレモリー先輩達を追い詰めているだろう。このままリザインされる可能性もある。そうならない方がいいのだが。

グレモリー先輩達が移動するのに合わせて、オレたちも移動を開始する。接敵しないように注意して逃げ回り続け疲労と緊張が限界を迎えるまで傍で待ち続ける。フラッグに関しては見つかりかけたが、堂々と置いているために逆に気づかれなかった。そして、細いワイヤーを張っただけの簡単な罠に引っかかり消耗していく姿を見ながら準備が整ったのを確認して最後の仕掛けが発動する場に案内する。

結界に穴を開けてスモークを少しずつ排出し、堂々と正面からグレモリー先輩たちの前に姿を表す。

「くくく、どうですかグレモリー先輩。オレの裏の実力は?」

「匙!?くっ」

放たれた滅びの魔力を横に跳んでかわす。

「会話をする余裕もありませんか。なら、終わらせましょう」

飛びかかってくる塔城さんと複数のコウモリに分かれるギャスパーを確認して、最後の仕掛けを作動させる。次の瞬間、ショッピングモール内の全てのスプリンクラーが作動して、聖水を散布する。聖水に全身を焼かれてグレモリー先輩たちの姿が消える。

『リアス・グレモリー様の王、戦車、僧侶、リタイア。このゲーム、匙元士郎様の勝利となります』









グレモリー先輩達とのレーティングゲームから一週間後、オレはゲーム時に何をしていたのかを解説することになった。しかも、テレビ収録もされることになった。セラフォルー様に言われてしまっては受けざるを得なかった。そして解説のためだけにフィールドは保存されているらしい。

「え〜っと、とりあえず解説を始める前に言っておきます。ゲーム中に仕掛けるだけ仕掛けて使っていない罠や道具がありますが、それに関しては一切公表しません。対策を取られてしまいますので。解説に関しても質問に答えるという形にさせていただきます」

これはセラフォルー様にも認められており、テレビ局の方も最初から聞いているが、念のためである。

「質問に関してですが、我々の元に集められた中から厳選させていただいております。その上で私どもから追加の質問をさせていただきます」

「ええ、では始めましょう」

質問1.フィールド内を煙に満たしていたのはなぜか?

「まずは姿を隠すためです。今回は隠密をメインに進めるためにフィールドを煙に満たしていました。それに加えてグレモリー眷属のギャスパーの神器の対策でもあります。詳細に関してはリアス・グレモリー様に許可を頂く必要がありますので、ここでは控えさせていただきます」

「フィールドを煙に満たし続けたのはどういった道具を用いられたのでしょうか?」

「フィールドの各所に煙を発生させるスモークディスチャージャーという機械を幾つか置き、フィールドのギリギリの位置に結界を張って煙が拡散しないようにしています。また、それとは別に人間が使う非致死性兵器のスモークグレネードを幾つか用意しています」

そう言ってから懐に入れてあったスモークグレネードを取り出して、試しに一つ使ってみせる。

「こんな感じですね」

質問2.魔力を使っていなかったようですが何故ですか?

「最近、禍の団の活動が活発になっています。その中の一派である英雄派、彼らは人間だけで構成されています。なら、人間にとって当たり前である武器などを使ってくる可能性があります。そのためにどんなことができるのか、というのが今回のコンセプトになっています。そのために自前の魔力や翼での飛行、神器の使用を控えています」

「では、天井に張り付いていたりしたのはどうやってですか?」

「このワイヤーアンカーです。少し値段が高かったですが、2tまで物を吊り下げれる上に、巻き取りもかなり早いです。ただ、その分磨耗も激しいので定期的なメンテナンスは欠かせません」

質問3.フェンリルに指示を出していないようでしたがあれはフェンリル達の判断ですか?

「指示を出していないように見えていただけです。実際にはマフラーに縫いこんであった犬笛を使って指示を出しています」

質問4.フラッグはどこに設置していたのですか?

「案内しましょう。こちらです」

移動するのはスポーツ用品店。そこにあるゴルフクラブのコーナーの端にあるパターの具合を見る場所のホールに設置されているフラッグを見せる。

「アレがそうです。一回だけ接近された時はドキドキしましたね」

質問5.煙の中でも普通に見えているように動いていましたが何故ですか?

「赤外線スコープです。まあ、これが無くてもある程度の場所なら分かります」

試しに目隠しをしてからスタッフの一人にショッピングモール内に隠れてもらった。5歩進むたびにつま先に仕込んである鉄板で床を叩いて反響で物の配置を確認しつつ、匂いでスタッフを探す。柑橘系の整髪剤を使っているのでかなり分かりやすい。見つけると距離を離すので走って追いかけて腰にタックルする。

「五感を鍛えるとこんなことも可能になりますね」

逃げたスタッフに罰としてキャメルクラッチをかけながら答える。

質問6.銃撃の威力が強すぎるような気がします

「弾丸が特別製です。普通のエクソシスト達が使うのは光力そのものを弾丸にした物、分かりやすく言えば魔力弾とかわりません。ですが、オレが使ったのはエクスカリバーの刀身を削って作った物です。簡単に言えば小さな聖剣を弾丸と同じ速さで投げつけているような物ですから」

「そんな簡単にエクスカリバーを削ってもいいんですか?」

「ある程度の量なら自己修復も可能ですので。削って作るのにも時間がかかるので、十分な量を確保できます」

質問7.あれだけの聖水を用意するのにかかった費用は?

「タダです。自家製なんで」

「自家製?」

「正確には準備期間中に作りました。ここのスプリンクラーは水道管が使えない状態でも屋上にあるタンクの水を放水できるようになっています。ですのでタンクの水の方を使うように細工を施し、タンク内にエクスカリバーとアロンダイトを投げ入れておきました。そうすることでタンクの水がエクスカリバーとアロンダイトの力に染まって自家製聖水の完成ですね」

質問8.最後の聖水の散布は賭けだったのですか?

「いいえ、多少は我慢してましたが余裕でした。理由は簡単です。あの時の服装は全て撥水性ですので聖水はほとんど服に弾かれています。顔の周りが多少空いているのでその分は我慢する必要がありましたが」

質問9.リアス・グレモリー様達に勝目はありましたか?

「もちろんです。その勝目を消す動きを意識してリタイアさせていきましたから。一番怖いのはゼノヴィアさんです。彼女を序盤でリタイアさせていないと苛立って手当たり次第に魔力砲?聖剣だから聖剣砲かな?まあ、それを打たれるとフラッグが壊される可能性がありましたから。その後に赤龍帝の兵藤や範囲攻撃が多い姫島先輩とある先入観がないロスヴァイセ先生を落とした時点で勝目はほとんどなくなりましたけど」

「先入観ですか?」

「リアス・グレモリー様とは同じフィールドでレーティングゲームを行ったことがあるのですが、その際に周囲を壊しすぎないようにという特殊ルールが採用されていました。つまり、周囲を壊して回るということがものすごくやりづらいんです。だからこそゼノヴィアさんと兵藤だけは先にリタイアさせておきたかったのです。あの二人は、なんというか、まあ、あれですので」

言葉を濁して答えたのだが、スタッフの方々も苦笑いしているのでわかってもらえたようだ。




さらに後日、セラフォルー様に呼び出され兵藤の家の地下に朝早くから呼び出された。この場にはグレモリー先輩とその眷属、会長とその眷属、スコルとハティ、セラフォルー様にサーゼクス・ルシファー様、そしてグレイフィア様が揃っている。

「みんな、集まってくれてありがとう♡今日は色々な面白い物を見せようと思って集まってもらったの☆」

この時点で若干嫌な予感がした。会長も何かを感じ取ったのか若干身構えている。そして始まったのはオレが眠っていた間にあった若手悪魔へのインタビュー。これはディオドラ・アスタロトが禍の団に所属していたために放送されずに破棄される物だったのだが、それをサーゼクス・ルシファー様が回収していたのを持ってきたのだそうだ。そのインタビューの中で乳龍帝という単語が聞こえてきた。詳しくは後々分かるとセラフォルー様が言うことで引き下がる。

次は、先日オレが受けたインタビューだ。これを見てグレモリー先輩達が落ち込んだが、仕方ないと割り切った。あとはエクスカリバーとアロンダイトの雑な扱いに突っ込まれた。

「失礼な、もはやエクスカリバーとアロンダイトはオレの体の一部だ。自分の体を雑に扱う者などいないだろう」

「「「「「「「「「「ダウト」」」」」」」」」」

アルジェントさんとスコルとハティを除く全員にダウトをコールされてしまった。

「あなたは一度、自分の命を投げ捨てたことがあるでしょうが」

会長にそう言われてしまうと反論できない。くっ、ここは引き下がるしかないのか。ちゃんと手入れもしっかりしたのにな。

続いて流れた映像は、『乳龍帝おっぱいドラゴン』

頭がいたい。あと、グレモリー先輩達を見る目が変わりそうだ。子供向けらしいけど、教育に悪そうなんだけど。内容は普通だ。普通だけど、おっぱいドラゴンとスイッチ姫はまずいだろう。一番気になったのがテーマソングだな。作詞作曲振付に魔王様が2名堕天使総督が1名の合作だからな。ツッコミはやめておこう。やぶへびだろうし。

続いて『魔王戦隊サタンレンジャー』これは内容も普通に大丈夫だった。魔王様達が出演しているのを除けばだけど。ちなみに人気は微妙だそうだ。この時点でオレと会長は警戒というか覚悟を決めた。

セラフォルー様がこっちの方面に手を出していないはずがない。趣味と仕事を一緒にこなせるんだから。だから身構えたオレ達は悪くない。だが、次の映像は予想の斜め上だった。

『怪盗蛇龍』

コートにゴーグルとマフラー装備のオレが主人公であっちこっちの悪徳貴族どもや裏組織の金品を盗みつつ、警察側の会長と何故か居る素顔のオレを誘導しながら不正の証拠などを掴ませる結構ガチなアクションもある特撮だった。えっ、なにこれ?会長も知らなかったのか目が点になっている。とりあえず突っ込ませてもらおう。

「なんで見せたこともないオレの切り札がばんばん切られてるんですか!!」

「「えっ?」」

「えっ?」

魔王様二人が疑問を返してきた。もしかして墓穴掘った?

隠し通そうにも周りに知られてしまった上に、セラフォルー様が興味津々だったために道具を除いた全ての切り札を公開させられてしまった。なんとかグレモリー先輩たちには内密にしてもらえはしたが。

エクスカリバーと黒い龍脈の合わせ技である分身に、ヴリトラの神器とオレの魔法を組み合わせて強引に作った影に潜り込む技に、指向性を収束させることで破壊力を増したエクスカリバーの飛ぶ斬撃に、エクスカリバーの自己修復機能を己に付与してブーストすることで行う超速再生に、10分もの溜めによって発動できるヴリトラに仮の肉体を与えて分離する黒龍解放までも見せる羽目になってしまった。うぅ、折角の切り札が。また新しく開発しないと。

そして、やっぱり作ってた『魔王少女レヴィアたん』
何故か禁手化のオレが登場してたけど、追い剥ぎに身ぐるみをはがされたようなオレには突っ込むだけの気力がなかった。









「元士郎先輩、今どこに住んでいるんですか?」

学校では後輩で悪魔としては先輩の仁村留流子に尋ねられた。なんでも送った書類が戻ってきていたそうだ。ああ、そういえば現住所を変更していなかったな。まあ、変更しても郵便物とかは一切届かないけどな。そう説明すると首を傾げられたので

「ウチに来てみるか?」

何故か生徒会全員を招待する羽目に。お茶菓子残ってたかな?分身体に買いに行かせるか。



いつもとは違い、直接コテージの前にまで転移する。

「本当に山奥ですね。ライフラインも通っていない気がするのですが」

「魔法って便利ですね」

犬笛を吹いてスコルとハティに身だしなみを整えてから帰ってくるように指示を出してから会長の質問に答えると変な目で見られた。

「えっ、ライフラインを自前で用意してるんですか!?」

「簡単でしょう?術式を構築して魔法陣として再構築して仕掛けてやれば魔力を流すだけで使えるし、汎用性が高いから生活に困ることもないですし」

全員が驚いているところを見るとどうやら異常らしい。エクソシスト達が使う武器と同じことじゃないか。

「いえ、術式から魔法陣への再構築が技術的に確立していないんですよ。昔からちょっとずつ作られて、武器ならともかく生活に関わる物の魔法陣は灯りと純水の生成位なんですよ。それでも発明した家にはかなりの特許料が支払わられています。それを、そんな簡単に。一体幾つ作ったのですか!!」

「え〜っと、灯りが光量別で5種類、水の浄化、水の生成が硬水から軟水まで5種類、水を温めるのが温度別に7種類、冷蔵庫代わりの冷気発生が温度別に3種類、コンロ代わりの火の生成が火力別で7種類、エアコンみたいなのに8種類を組み合わせで、バッテリーみたいに魔力を蓄えるのが容量別に3種類、あとはドライヤーっぽいのに5種類で44種類とバッテリーの魔法陣から他の魔法陣への供給ラインの魔術的な回路とスイッチですね。構築中のが電気の生成とそれをバッテリーに流しこめる物理的な回路です」

「一財産どころか歴史書に名前が載るレベルですね。何時からですか?」

「スコルとハティのためにこの周辺を買い取ってからです」

「となると1ヶ月程度ですか」

「時間が空いているときにちょこちょことやっていたのが一日換算なら」

「……全部でどれだけの時間をかけましたか」

「そうですねぇ〜、最初は手こずってましたけど一つ完成させてからは楽になりましたね。最初の灯りに丸3日、光量の別が一つ30分程度、新しいのに2時間程度、調整版が30分、ドライヤーに素材調達を除いて組み立てなんかに3時間、エアコンみたいなのに分身2体と一緒に8時間、バッテリー、回路、スイッチの工作に丸2日ってところですね」

「……はぁ〜、この件はお姉さまに相談して調整するしかありませんね。他にも何かありそうですが、聞くと後悔しそうですのでお姉さまに任せます」

「まあ、あるといえばありますね。まだ開発中だったりしますけど」

「言わなくていいです」

「わかりました。それでは、立ち話もなんですからどうぞ」

鍵を開けてコテージに案内する。椅子は4脚しかなかったが、そこは応用の効く黒い龍脈で椅子を作れば済む話だ。テーブルも小さな物しかないのでこちらも黒い龍脈で作ってクロスをかける。お湯を沸かし始めたところで分身がスコルとハティを伴って帰ってくる。

「お待たせしました。何分、誰かを招待するのは初めてな物でして何もない物ですから」

皿なども予備を含めて4組みしか無いのでクッキーの盛り合わせを大皿に乗せてだす。ティーカップとソーサーは生徒会室から持ってきているので問題は無い。

「スコル、ハティ、どっちが勝ち越していた?」

スコルが返事をするのでスコルが勝ち越していたのだろう。

「今日はスコルだな」

スコルが自分の寝床であるマットに移動する間にブラシを用意する。待ちきれないのか吠えて催促するスコルの元まで苦笑しながら向かい、隣に座ってブラッシングを始める。傷んでいたり枝毛になっている部分は爪に魔力をまとわせて切り取り、傷を負っている部分に聖母の微笑(劣)で癒す。

「こら、今日はお前が負けたんだろう。邪魔するな」

じゃれついてくるハティの頭をわしゃわしゃと掻いてやる。悲しそうに声を上げるが、スコルが勝ったのは久しぶりなのだ。今まで我慢していた分、丁寧にケアをしてやりたいのだ。

「明日また頑張れ、スコルだってちゃんと我慢してただろうが」

そういうとようやく離れたハティに苦笑していると会長達が驚いていた。

「どうかしましたか?」

「いえ、匙が笑っているところなんて初めて見ましたから」

「......オレってそんなに笑ってませんでしたか?」

「学園で見る元士郎先輩の笑っているところって作り物感が強すぎて」

「初対面とかならともかく、少しでも付き合いができれば作り物だと分かるぐらいには笑ってないな」

言われて人生を振り返ってみれば普通に笑ったことなど最近になってようやくだった気がする。

「それに倒れる前と比べて、丸くなりましたよね」

「えっ、太った?黒い龍脈で体型は調整してるんだけど」

「いえ、体型じゃなくて性格がです。って、ちょっと聞き捨てならないことが」

「どうした?」

「体型、調整するってどういうことですか?」

「言葉通りだが。余分に着いた筋肉を落としたり、場所を移し替えたり。最近は悪魔稼業の方でも脂肪を取ったり移し替えたりなんかをやっているが」

「確保!!」

「「「「「「了解!!」」」」」」

会長の命令が出る前に生徒会のみんながオレに飛びかかってきていた。その目はオレがよく見る獲物に襲いかかる捕食者の目だった。あまりの出来事に反応できずに簡単に拘束されてしまった。あっ、スコル、ハティ、待てだ。味方だから、今は興奮してるだけだから落ち着けよ。あとでちゃんとケアしてやるから。

「匙、正直に答えなさい。守秘義務である契約者の名前はいいです。ですが、それ以外のことを全て正確に答えてください。最近の悪魔稼業で新規の契約者のどんな願いを叶えているのですか?」

「シミ・そばかす・ニキビを綺麗に除去したり、お腹周りや二の腕周りの脂肪を取り除いたり、その脂肪を胸に移したり、美容関係が多いです」

「アンケートが上がってきていないのは何故です?」

「契約が完了していないからです。無理やり体をいじるわけですから副作用があっても困りますので一週間に1時間前後の施術で一ヶ月を目安にしています。ですので、早くても来週の火曜日だと思います。シミとかの除去はもう上がって聞いているはずですけど。そっちの方は即日なので」

「ちなみに対価はどの程度の物をもらっているのですか?」

「シミとかの除去に範囲で変わってきます。高くても5000円だったかな?脂肪の除去・移し替えは2万円前後です」

「デメリットは?」

「体をいじる訳ですから、オレに体の情報を全部知られることになります。一応、カルテみたいなのも管理していますが、個人情報ですので厳重に保管。契約の完了と同時に破棄と記憶消去するようにギアスをかけてます」

「記憶消去はどのような感じですか」

「契約内容と契約が完了したことだけは認識できるようにしています。ですので施術中の内容はほとんど覚えていない状況です。施術中の雑談ぐらいなら覚えているでしょうけど」

「なるほど。では、今すぐ同じことを私にしなさい」

「えっ!?」

「あっ、会長ずるいです」

「私達も」

「貴女達はあとでも構わないでしょう。別にするなとは言いません」

「やるのは確定事項ですか?」

「「「「「「当然」」」」」」

「はぁ、わかりました。個人情報を取り扱うところ以外は同時進行で出来ますので、一人10分辺りの問診を全員が終えてからまとめてやります。ちょっとカルテの用意をしてきますので、5分後に隣の部屋に来てください」

簡単な説明を終えてからラインを全員に接続して自室に入る。あ〜、何人か内臓の調子が悪いみたいだな。無理なダイエットで栄養バランスが崩れてホルモンバランスも崩してるな。確かサプリがここら辺にあったな。抽出して渡してっと、ホルモンバランスは各自でなんとかしてもらおう。

ラインにペンをもたせてまとめてカルテを作って裏面に名前を書いて伏せる。準備が完了したところでドアを開けて会長を呼ぶ。おっと、ここから先はオレの記憶には残らないぜ。

後日、グレモリー先輩達に召喚されたのは笑いがこみ上げてきた。悪魔が悪魔を召喚してどうするんですか?まあ、呼ばれた以上はきっちりお仕事をしますけど。

 
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