風魔の小次郎 風魔血風録
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127部分:第十二話 聖剣の真実その一
第十二話 聖剣の真実その一
聖剣の真実
「痛いな」
竜魔は柳生邸の一室で兄弟達を前にしてその片目を閉じて呟いていた。
「兜丸と麗羅がここでか」
「命は無事だ」
劉鵬がその彼に答える。
「何とかな」
「それは不幸中の幸いだが」
「しかしだ」
次に口を開いたのは霧風だった。
「戦闘は難しいな。二人共傷は深い」
「飛鳥武蔵」
今度口を開いたのは項羽だった。
「またあの男か」
「あの二人でも負傷は避けられなかったか」
小龍はそれが無念であるようだった。
「しかも攻撃まで通用しなかったそうだな」
「信じられん話だがな」
林彪はその顔を険しくさせていた。
「そうらしい。特に麗羅の炎を受けても無傷だったそうだ」
「だからつってもよ」
最後に小次郎が吼えた。
「あのままあいつを放っておいていいのかよ。二人やられたんだぜ」
「静まれ、小次郎」
しかしその彼を竜魔が窘める。
「少し。感情が昂ぶり過ぎているぞ」
「けれどよ。それでも」
「命は無事なんだ」
劉鵬がその彼を宥めるようにしてこのことをまた述べた。彼の顔を見ながら。
「だからそれは安心しろ、いいな」
「それはそうだけれどよ」
「だが。戦力的には危なくなったな」
霧風が今度言ったのは戦力についてだった。
「夜叉はもう八将軍が全員復帰する頃だ」
「いよいよだな」
「そう、いよいよだ」
項羽に対しても述べる霧風だった。顔は冷静であるが語っていることは彼等にとっては深刻なことである。
「いよいよ来る。全員な」
「これで夜叉は十人」
小龍は冷徹に数を述べた。
「それに対する我々は」
「二人が抜けるのだから」
項羽もまた顔を曇らせる。
「七人か」
「俺も入れてだよな」
「当たり前だ、この馬鹿」
数を言った林彪はすぐに小次郎を叱った。
「御前も風魔の人間だぞ。入れない筈がないだろう」
「だといいけれどな」
「七人対十人」
竜魔もまたこのことを言う。
「数の上では劣勢は否めない」
「どうする?竜魔」
劉鵬の顔も深刻なものになっていた。
「里から。誰か呼ぶか」
「夢魔か」
霧風は同じ九忍の最後の一人の名を出した。
「あの男を呼ぶか。ここは」
「いや、それは止めた方がいい」
だがこれはすぐにその竜魔によって退けられてしまった。
「今回はな」
「何か不都合があるな」
「最近風魔の里の周りも物騒になってきている」
彼はそこを指摘して退けたのだった。
「あの銀色の髪と目の連中を見た者がいるらしい」
「あの連中か」
小龍は彼等のことを聞いて顔を暗いものにさせた。
「俺は東北に出没していると聞いていたがな」
「それが今度は風魔の里にか」
林彪も言うのだった。
「危ないなんてものじゃないな」
「メンバーも決まっているしな」
項羽が指摘したのはここであった。
「援軍は今更無理か」
「それに間に合う可能性はない」
竜魔はそこまで考えていた。
「俺としても是非夢魔は来て欲しいがな。やはり里の護りは必要だからな」
「じゃあ俺達だけでやるしかないか」
「七人でか」
「やれるところまでな」
「二人の分まで」
「やってやるか」
劉鵬、霧風、林彪、項羽、小龍がそれぞれ述べた。そして最後に小次郎が。
「次の勝負は剣道だったよな」
「うむ」
竜魔が彼の言葉に頷いた。
「その通りだ」
「場所は何処だ」
「敵地だ」
竜魔が次に言った言葉はここにいる六人の心を強張らせるには充分だった。
「敵地っていうとまさか」
「そう、そのまさかだ」
林彪に対してあえて冷静に答える。
「誠士館だ」
「やっぱりな。そこか」
「誰が行く?」
小龍は兄弟達の顔を見回しながら問うた。
「誰が。敵地に行くんだ」
「俺が行く」
最初に名乗り出たのは項羽だった。
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