普通だった少年の憑依&転移転生物語
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【ハリー・ポッター】編
191 クリスマスの予言
SIDE ロナルド・ランスロー・ウィーズリー
吸魂鬼の大群がホグワーツに侵入したことにより、怪事がついてしまったもののグリフィンドールの勝利で終わった今シーズンの初戦。
オリバーの話によれば、スリザリン・チームのキャプテンのマーカス・フリントが吸魂鬼が侵入したことによって公平なゲーム足り得なかったのでと、再戦をマダム・フーチに要求していたらしいがアニーはスニッチを吸魂鬼が侵入してくる一分以上も前に手にしていたのでマーカス・フリントその提案はマダム・フーチによりすげなく一蹴されていたらしい。
……更にオリバーの話、フリントは〝わりと〟直ぐに引き下がったとの事なので、フリントもただ声に出しただけなのだろう。
閑話休題。
あの初戦で尚更有名になった選手が居る。
……云うまでもなくスニッチを捕まえ──試合を終わらせたアニーだ。
(……有名になる──もとい、モテる──それだけだったらなぁ…)
「……アニーめ…」
「……辛抱しましょう」
俺とハーマイオニーは鬱屈とした気分で、今日になって三人目の〝挑戦者〟を下した。
アニーは≪生き残った女の子≫としてもそうだが、成績は昨年度の順位は首位と僅差と優秀だし、容姿も母親(リリー・エバンズ)譲りで端麗だ。性格も以上の二点を鼻にかける事も無く温厚篤実を絵に描いた様なもの。一度ジョークを溢せば場の雰囲気は明るくなる。そして、決闘もべらぼうに強く、魔法の手腕も相当なもの。
……なので、今更その項目に〝クディッチが上手〟と云う1文が加わったところでなんのそのなのだ。
アニーの容姿は、去年までダーズリー家で受けていた虐待の様な仕打ちで乱れていた生活習慣が大幅に改善され、10人の内の9人が〝美少女〟と評するほどとなっていた。かつて〝ホグワーツ特急〟で邂逅した際には痩せほそっていた体つきも、13歳となった今は女性らしい体つきとなっている。
〝完全無欠美少女〟といえばそうなのだろう。……〝上は7年生下は2年生〟と──数多くの男子生徒からアプローチをアニーは受けていた。
……ただそれだけなら──俺が内心でごちた様に、〝それだけ〟なら良かったのだ。
―ボクは付き合うなら自分より強い人が良いな。守ってもらいたいし──具体的に云うのなら、ロンとハーマイオニーを同時に決闘で相手をして、それで勝てるくらいには―
四方八方から来る男子からのアプローチにそう返すようになったのは約一週間前の事。……良くアニーの言葉をよくよく考えれば判るが、万が一にも〝挑戦者〟が俺達に勝ってもアニーがその挑戦者と交際すると明言していない。
それでも一縷の望みに懸けて俺とハーマイオニーに突撃してくる男の多さは何たることか。……しかもアニーのうっかりなのか──はたまたわざとなのかは定かではないが、アニーは〝回数制限〟を設けていなかったのも俺とハーマイオニーをアンニュイな気分にさせる一因と化している。
……しかし、悪いことばかりではなく〝怪我の巧妙〟みたいな事も起こっていた。
早い話、俺とハーマイオニーの仲がより親密になったのだ。……恐らく、これはアニーが意図した事だろう。
アニーは〝ロンとハーマイオニーを同時に決闘で相手をして〟と言っていたので、それそのままハーマイオニーと一緒に作業することが多くなり──後は云うまでもない。
……尤も、二対一であることからして〝決闘〟とは云いがたいのだが…。
閑話休題。
……だから、最近はハーマイオニーと一緒に行動していると、〝王〟だの〝女王〟だの──主に悪い方向囃される様になった。ハーマイオニーもその揶揄には最初は頑なに突っ掛かっていたが、最近ではもう諦めている。
また閑話休題。
「……ロン、聞いているの?」
「ああ、聞いてるよ。……ホグズミードの事だろう?」
最近の状況にいろいろと思うところがあり気持ちを沈めていたのだが、一緒にダウナーな気分に陥っていたはずのハーマイオニーは先に復活していた。
サブの思考を思い返せば、アニーへの愚痴から一週間後に行ける事となった【ホグズミード村】の事だった。しかしいかんせん、サブの思考でのことだったので自信満々と云う訳にはいかなかったが、ハーマイオニーからの訂正は無かった。間違っていなかったのだ。
恐らくハーマイオニーの話は〝今回は来るの?〟──と云うことなのだろう。
(……どうすっか…)
ぶっちゃけた話、アニーは、ピーター・ペティグリューが生きていて──シリウス・ブラックが投獄された事については疑念を懐いている。
……ちなみに、〝シリウス・ブラック〟で思い出した事だがルーピン先生にはピーター・ペティグリューが生存している事をダンブルドア校長へ伝える様にと頼んである。……特にこういった場面っは報連相大切だからだ。
閑話休題。
(……かと云って、アニーにわざわざ校則を破らせてホグズミードにまで来させる理由は無いし、その上、アニーもそこまでホグズミードに興味津々じゃないみたいだし──〝抜け道〟もあるしなぁ…)
〝縛り術〟が使えるアニーは、〝暴れ柳〟のルートを使えば、時間こそ掛かるが【叫びの屋敷】を経由すればホグズミードへと行ける。……云うまでもなく校則違反だが。
(うーん…)
「ロンはまだホグズミードに行ってなかったわよね」
俺としてはホグズミード行きに関しては、アニーの事を抜いて考えれば〝どっちでも良い〟としか思っていなかったので、ハーマイオニーへの返事をしあぐねいていると、ハーマイオニーは心無しか頬を朱に染めていて…
「もし良かったら──」
そこそこ数の女性と懇ろな関係となって幾年月。ハーマイオニーの次の言葉が所謂〝デートのお誘い〟だと云うのは何となく判ったが、ハーマイオニーは〝現在地〟を忘れていた。
……ハーマイオニーが囃し立てる周りの連中に対して〝舌縛りの呪文〟を掛けるまで10…9…8…
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
ホグズミードにアニーが来ることもなく──〝英雄ピーター・ペティグリュー〟の話を聞くこともなく、あっという間にクリスマスが来た。
「それにしても──ここまで人が居ないと寂しいものね」
昼食を摂るため広間へと向かう途中、ハーマイオニーはアニーの“忍びの地図”を眺めながら感慨深げに呟く。
“忍びの地図”が示しているのは、俺とアニー、ハーマイオニーを除いたら片手で数えられるくらいの人数──たった3人だけだった。……去年もバジリスクの騒動で少なかったが、今年は更に少ない。
……ちなみにアニーはフレッドとジョージから譲られたと云う“忍びの地図”を持っているが、ハーマイオニーからはどうこう言われていない。大方、俺の知らないところで話を付けてあるのだろうと予想している。
閑話休題。
(おう…)
アニーに〝地図〟を仕舞わせ──広間に入ると、軽く面を食らってしまった。いつもなら広間には長テーブルが4つ並べてあるのだが、今日は横に立て掛けてあり、広間の中央に──量と人数から察するに12人分の料理が並べられているテーブルがあるだけだった。
(……何でパーシーは残らなかったんだか…)
テーブルにはダンブルドア校長、マクゴナガル先生、スネイプ先生、スプラウト先生、フリットウィック先生──そしてフィルチが各々に腰掛けており、諸教授──と管理人と食卓を並べられるのでパーシーの様な〝意識高い系〟──もとい、向上意欲のある人間だたら是非とも着席したいであろう食卓だ。
内心で〝パーシーに自慢してやろう〟、と意気込んで、お腹を空かせながらテーブルに近寄る。ダンブルドア校長が一声。
「メリー・クリスマス!」
テーブルに寄ってきた俺達の姿を確認したダンブルドア校長がそう迎えに入れてくれたので、俺達もちゃんと〝メリー・クリスマス〟と返しておく。
「入った時、一瞬広間だとは思いませんでした」
「……ことしのクリスマスはホグワーツにたった6人しか残らなんだ──故に余分なテーブルは横にはけておいたのじゃ」
ダンブルドア校長はアニーの言葉にそう応え、そこに更に「たった6人しか居らぬのに全部のテーブルを出しておくのも愚かしいものじゃしの」と茶目っ気たっぷりに付け足したところで広間の扉が開いた。
「げっ」
「シビル! これは珍しや!」
広間に入ってきたのは痩せた──大きな眼鏡が特徴的な女性だった。ハーマイオニーの嫌そうな呻き声と顔、ダンブルドア校長が口にした〝シビル〟と云う名前で俺とアニーにはその女性が〝占い学〟の教授であるシビル・トレローニーだという事が判った。
「ハーマイオニー、あの方って〝占い学〟の…」
「そうよ、トレローニー先生よ」
アニーに訊ねられたハーマイオニーは憮然としながら答える。教師陣は〝13人目は不幸だ〟とうんぬんかんぬん講釈垂れているトレローニー先生を座らせていた。
「……さて、〝一部〟を除いたら顔を合わせるのは初めてでしたわね私はトレローニー教授と申しまして崇高かつ繊細な教科である〝占い学〟の教鞭を執らせて頂いておりますわ──あら、あらあら? ……貴女もしかしてアニー・ポッター?」
ようやっと椅子に座ったトレローニー先生は同席者を見回して、その視線がアニーのところで止まる。いきなり水を向けられたアニーは「はぁ」と、まるでトレローニー先生に気に入られない様にトレローニー先生から差し伸べられた手を取る。
……その時だった。
「〝闇の帝王は、友もなく孤独に、朋輩に打ち棄てられて横たわっている〟」
まるで意図して〝そういう声〟にしていたであろうから声から一転してくもぐった声になってそう言い放った。
……ダンブルドア校長とスネイプ先生は驚いた様な表情をしていて、他の先生はいきなりのトレローニー先生の変貌にきょとんとしている。
更にトレローニー先生の〝予言〟は続く。
「〝その召使いは12年間鎖に繋がれていた。明くる年、6が双子になりし日の宵、その召使いは再び自由の身となり、ご主人様のもとに馳せ参ずる。闇の帝王は、召使いの手を借り、より強大により偉大な存在となりて再び立ち上がるであろう。その宵、月満ちし宵なり〟」
そこでトレローニー先生の〝予言〟は終わりトレローニー先生は先ほどまでの声音で「あれ? どうかなさいましたか?」と口にする。……トレローニー先生は自身の〝予言〟を覚えていなかった。
SIDE END
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