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普通だった少年の憑依&転移転生物語

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【ハリー・ポッター】編
  186 ハグリッドの授業


SIDE ロナルド・ランスロー・ウィーズリー

「全く、トレローニー先生と来たら! これなら〝占い学〟なんて取らなければ良かったわ!」

「まぁまぁ、先生方にも色々あるだろうさ」

〝占い学〟に対して憤慨するハーマイオニーをアニーはやんわりと宥めようとするも、ハーマイオニーは激昂したままその怒りのボルテージを全く下げなかった。

どうにもハーマイオニーから漏れる数々の怒りの言葉のを繋ぎあわせて類推すれば、ハーマイオニーは〝占い学〟の教師──シビル・トレローニー先生から(いた)く辛辣な言葉をいただいたらしい。

まず、事の起こりはマクゴナガル先生から〝特別授業〟を今夜から始めると聞いた俺とアニーはハーマイオニーやネビルと合流して存分に──ネビルも交えて昼食を楽しもうとした時である

俺が〝ルーン文字学〟、アニーが〝数占い学〟の評弁を──ハーマイオニーは“逆転時計(タイム・ターナー)”でどちらにも出席しているのを知っているので主にネビルに聞かせた。

そして〝占い学〟の話を──〝占い学〟を受講しているネビルから聞こうとしたその時、ふとネビルの口から発せられた「僕、死ぬかもしれない」と云う弱気とも自虐とも取れる言葉にハーマイオニーが噛みついたのが始まりだった。

最初はハーマイオニーもやんわりとネビルを(いさ)める程度にしようとしていたようだが、そのネビルへの諫言(かんげん)を考えている途中、ハーマイオニー自身がトレローニー先生から言われた言葉がフラッシュバックしたのか──今てなっては自分で自分を怒らせている様にしか見えなかった。

発言者であるネビルは、そんなハーマイオニーの怒気に()てられたのか、たじたじだった。……ハーマイオニーの激励を受けているネビルの顔からは一切悲壮感が見えなくて、先のネビルの弱気な発言は、自虐──(ある)いは自身への発破だった事が判った。

ふとアニーとハーマイオニーを見れば、いつの間にかハーマイオニーの怒りのボルテージはすっかりと治まっていた。

「ホグワーツにトレローニー先生が居るのは、きっとダンブルドア校長にも考えが有ってのことだよ──ハーマイオニーもそれは判っているでしょ?」

「それは…そうだけど…」

ハーマイオニーはそんな風に口ごもっては、ついぞトレローニー先生への悪口を引っ込めた。……あそこでハーマイオニーが悪態を続ければ、それは〝ハーマイオニーがダンブルドア校長を信用していない〟と云う事になりえる。

アニーが巧いこと誘導してハーマイオニーを抑え込んだのだと──何となくたがそう思った。……すると、隣からネビルの感嘆するかのような溜め息が聞こえてくる。

「うわぁ、何度見ても凄いね」

「割りとよくあることだ。……ネビルもその内見慣れるさ」

――「呼んだかい、兄弟」
――「来たぜ、兄弟」


ネビルのアニーへの感嘆に簡単に返していると背後から聞き覚えのある〝二人〟の声で話しかけられる。……首を捻るだけで確認してみれば、声を掛けてきたのは云うまでもなく、フレッドとジョージだった。

「ようやく腹据えてくれたんだな」

「まぁな」

「うん。オリバーの熱意に負けちゃった」

「オリバーも喜ぶだろうぜ!」

俺とアニーがそう短く首肯しながら答えれば、フレッドとジョージは大きく喜んだ。

フレッドとジョージには今朝、アニーと一緒にクィディッチチームへの参加する事を──〝オリバーへは言わない様に〟と伝えてある。

……どうしてそんな事をしたのかと云うと…

去年、俺とアニーはオリバーからの誘いを幾度と無く断っている。今更、どんな顔をしてオリバーの前に出れば良いか判らないのだ。……つまり、フレッドとジョージに頼んだのはオリバーへの取り次ぎだ。

「判ってるじゃあ」
「行こうぜ」

フレッドとジョージに連れられながら、オリバーの元へ足を運んだ。

………。

……。

…。

「……やぁ、ロン、アニー、何の用だい?」

……オリバーは曖昧な表情を俺とアニーに向けている。……それもそのはず、オリバーからしたら俺とアニーはラブコール──もとい、クィディッチへの勧誘を何度も断っているのだ。オリバーの微妙な表情も納得出来る。

……ちなみにフレッドとジョージには席を外してもらっている。

閑話休題。

「単刀直入に言うぞ、オリバー。……俺達クィディッチ・チームに参加すると決めた」

「……何だって?」

オリバーは信じられない事を聞いたかのように俺の話に(いぶか)りながらも食いつく。そして次はアニーが畳み掛けるかのオリバーに言葉を発する。

「だから、クィディッチにボクとロンは参加するって言ったの」

「……それはマダム・フーチに言うことだろう」

オリバーはアニーの言葉にまるで拗ねた様に──或いは〝ぬか喜びは御免だ〟とばかりにこぼす。……確かに、クィディッチ・チーム参加したいのなら来週辺りから始まる選抜に出れば良いだけなのだが…。

「ボク達は筋を通したかったからオリバーのところに直截(ちょくせつ)来たんだよ」

フレッドとジョージには先にクィディッチに参加する事を伝えてあるが皆までは言わないでおく。……そして俺がアニーの言葉を継ぐ。

「判らないか? ……つまり、俺とアニーはオリバー──それとフレッド、ジョージのクィディッチに対する熱意に負けたんだよ──っ!?」

「へっ!?」

「今日と云う日をどれだけ待っていただろうか…っ!」

オリバーの〝クィディッチ愛〟に負けた事を伝えれば、オリバーはがばり、と勢いよく立ち上がり情感をありありと込めながら俺とアニーの手を取る。アニーはいきなりの事に驚きすっとんきょうな声を上げる。

更に驚く事に──オリバーは泣いていた。

「来年以降心配事が消えた──正に肩の荷が降りた気分だよ」

「お、おう…」

(……おっふ…)

内心で軽く溜め息を()く。

……実はと云うと、俺とアニーはオリバーの前で箒に跨がった事がないのだが、オリバーの異様な喜び様を見て軽く引きかける。……しかし、オリバーが大いに喜ぶ理由には検討がついていた。

(フレッドとジョージは一体どんな風に持ち上げたのか…)

去年にしろ今年にしろアニーが【隠れ穴】──我が家に居るときフレッドやジョージと一緒にクィディッチの練習をしたことがあり、フレッドとジョージはアニーの箒捌きを知っている。

……なので双子の兄からオリバーに伝わっていたのだと断定した。

「よーし! 今日の夕方から選抜に向けての特訓だ!」

「はは…」「はは…」

なおも喜びの色を引っ込めないオリバーに、俺とアニーは異口同音に乾いた笑いを出すことが精一杯だった。

SIDE END

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

SIDE アニー・リリー・ポッター

オリバーを宥める事に終始していた所為か昼休憩の時間はあっという間に終わって、ボク達は〝魔法生物飼育学〟の授業を受ける為に【禁じられた森】の近くへと足を運んでいた。

この授業、〝魔法生物飼育学〟で使う本は【怪物的な怪物の本】と云う、〝怪物的な〟──と云う様に、どんな魔法をどんな意図で掛けられたかは定かではないが、本自体が生きている本で、〝ちゃんとした手順〟を踏んで大人しくさせないと、本を開けようとすれば本が噛み付いてくる。……物理的にだ。

……本の宥め方を知らなかったのか──ボク達を除く皆はそんな本に辟易としていて、その不満を代表するかの様にマルフォイからヤジが飛んでくる。

「で──あの、うどの大──もとい先生は、こんな──読もうとすると噛み付いてくる本を使って、一体どんな授業をしたいんでしょうかねぇ」

「なんだ、宥め方を知っとるのはアニー、ロン、ハーマイオニー、ネビルの四人だけか。……アニー、悪ぃが、皆に本の宥め方を教えてやってくれ」

「見付けたのはロンなんだけど──背表紙を撫でれば一発で大人しくなるよ」

「よぅし、そうだ、撫でりゃあよかんだんだよ。……ありがうなアニー、グリフィンドールに10点!」

ボクとハーマイオニーやネビルは、〝偶然〟に〝ちゃんとした手順〟を見付けたらしいロンから【怪物的な怪物の本】を宥める方法を聞いていたので何気なくハグリッドからの質問に答える。

……ちなみに〝ハグリッド先生〟ではないのは、ボクが授業の前に冗談がましく〝ハグリッド先生〟と呼んでみたところ、やんわりと断られた。……どうにもハグリッド曰く親しい人から敬称を付けられたくはないのだとか…。なので授業中もハグリッドの事は〝先生〟と呼ぶだけにしている。

閑話休題。

「ちっ…。ロングボトムすら知っている事を僕が知らなかった…? あの森番め…贔屓しやがったな」

「あら、ネビルはハグリッドに教えられてなんなないわ。……だって私達は授業が始まる前からロンに本の宥め方を聞いていたもの」

しかし、自身の質問で公然的に〝ネビル以下〟とされたマルフォイは面白くなかったのか、顔を歪めながら舌打ちをしながら悪態を()くも、ハーマイオニーがそれに噛みついた。

……ハーマイオニーの事を≪穢れた血≫などと揶揄(やゆ)しているマルフォイの事だ、当然マルフォイからしたらハーマイオニーのそんな態度は面白いものではなかったのか、気取った表情で更に口を開きハーマイオニーを揶揄する言葉を投げ掛けそこからはもう水掛け論だった。

「大体──」

「それなら言わせてもらいますけど──」

(もう無茶苦茶だよ)

マルフォイはとハーマイオニーはいっそ互いに杖を抜き放ちかねない程に険悪な雰囲気となり、これ以上は見過ごせないと思って杖を出そうとした──その時だった。

「……“舌縛り(ラングロック)”」

「むべっ!?」「へむっ!?」

ロンの底冷えさせられるような声で〝舌縛り〟の呪文が紡がれ、マルフォイ──それとハーマイオニーから苦悶の声があがる。

「さて問題。……今はしているんだったけ──ネビル」

「え? えっと──〝魔法生物学飼育学〟の授業…?」

いきなり水を向けられたネビルはロンからの質問におずおずとしながら答える。するとロンは穏やかな声音でネビルに「正解」と返す。

「……後は判るよな──二人とも」

ロンはそう杖を一振りしてハーマイオニーとマルフォイの〝舌縛り〟を解く。

「礼を言うぞ、ロン。……なぁ二人とも──皆もだが、喋っちゃなんねぇ──とは言わねぇが、俺の話はよく聞いてくれ。中には気性の荒い生き物もいるからな」

ハグリッドは緩みそうになっていた雰囲気を正したロンにお礼を言う。

その後ハーマイオニーとマルフォイは──特にロンに嫌われたくないハーマイオニーは、ロンの諫言(かんげん)が効いたのか──二人とも静かになったので、無事にハグリッドの初めての授業が終了したのだった。

SIDE END 
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