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魔法少女リリカルなのはINNOCENT ~漆黒の剣士~

作者:月神
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第35話 「真夏のデート?」

 は~い、皆さんごきげんよう。
 グランツ研究所の美人姉妹の妹ことキリエ・フローリアンよ。長いこと出番がなかったけど、別にサボってたわけじゃないからね。私はなのはちゃん達と違って高校生だし、グランツ研究所のお手伝いとか色々あるの。そう色々とね♪
 さてさて、冗談はこのへんにして話を進めましょうか。
 今日はとある休日、ブレイブデュエルが本格稼働してから初めての大型イベント《ブレイブグランプリ》も日に日に迫ってきてるわ。真夏の暑さにも負けないくらいに多くのデュエリストが今日も来るべきその日のために腕を磨いてるに違いないわね。
 け・れ・ど……今日はグランプリの話じゃないの。だって私は今日はショウ君とデートなんだもの。まあお姉ちゃんもいるんだけど、そのへんは気にする必要はないわ。だって私はお姉ちゃんと違って欲望に素直だから!

「ねぇショウ君、お姉さんアイスが食べたいんだけど~」
「なっ……何をやっているんですかキリエ!」
「見ての通りショウ君の腕に抱き着いてるだけよん」

 もうお姉ちゃんったら自分が抱き着いたわけでもないのに顔を真っ赤にしちゃって可愛いんだから。もっといじめたくなっちゃう。
 それにしても……あんなに小さかったショウ君がこんなに大きくなるなんてね。今じゃ私が見上げないといけなくなっちゃったわ。まあ~私としては小さくて可愛い子も良いけど見上げる方が好きかしら。背伸びしながらキスとか乙女として憧れちゃうし……

「そんなの見れば分かります。いいから離れてください!」
「もう、そんなに怒ってるとしわが増えるわよ」
「え、そうなんですか!? ……って、誰が怒らせてると思ってるんですか!」

 そんなの私に決まってるんじゃない。けれど~私としてはショウ君の彼女でもないお姉ちゃんからあれこれ言われる筋合いはないと思うのよね。まあ私もショウ君の彼女じゃないんだけど。だからショウ君から言われるのは仕方ないわ。言われても素直に聞くとは限らないけどね。

「アミタ、周りには人も居るんだから大人しくしてくれ」
「え、私が悪いんですか!?」
「いや、悪くはないけど……アミタが反応すればするほどキリエが面白がるだけだから」

 さすがはショウ君、お姉さんのことよく分かってるわ。お姉さん嬉しくなっちゃう。だから……もっと強く抱き着いてみたり

「なあキリエ」
「何かしらん?」
「何でさっきよりも引っ付くんだ?」
「それは~ショウ君がお姉さんのことよく理解してくれてるからそのお礼みたいな」

 ショウ君だって年頃の男の子なんだから嬉しいくせに。自分で言うのもなんだけど私って可愛いし、スタイルだって良いんだから。つまりW・K・S……うん、そろそろ引かないと危険ね。ショウ君の目が段々冷たくなってきたし。正直に言うとちょっとゾクゾクもしちゃうんだけど、さすがに嫌われる方が嫌だから。

「まったく……ショウ君も恥ずかしがり屋さんね。男の子なら嬉しい状況でしょうし。ちゃんとある胸だって当たってるんだから」
「一般的にはそうだろうがキリエみたいに毎度の如くされると何も感じなくなるんだよ。人間は慣れる生き物だからな」
「うん、ちょっと待ってくれるかしら。何だかその言い方だと私がする行為が良いものじゃなくて悪いものみたいに聞こえるんだけど」
「良いか悪いかで言えば悪いだろ」

 バッサリ!?
 ひ、ひどいわ……私がただショウ君のことを誘惑してるように見せかけてお姉ちゃんが反応するのを楽しもうとしているだけなのに。でもこの程度で挫けるキリエ・フローリアンじゃないわ。

「もうひどいわねん、確かに周囲への配慮とか道徳的に悪いかもしれないけど……男としては悪くないでしょ?」
「いや悪いけど」
「そ、即答!?」

 え、な、何で……私って美人だし体って十分に魅力的よね。あんまり自分でそういうこと言うのも正直なところどうかと思ってるけど、周囲からは可愛いだとか綺麗って言われたりすることもあるわけだから多少なりとも自信を持っていいはず。なのにどうしてショウ君からは不評なのかしら……
 いったい私の何がいけないのかしら……確かに普段はふざけてばかりだけど、この前ショウ君は私に私の良いところはそれなりに知ってるとか言ってくれたわよね。それに毎度の如く抱き着いたりしても本気で嫌そうにはしないというか、なんだかんだで相手はしてくれるわけだから嫌われてはないはず。
 なのにどうして……単純に私がタイプじゃない?
 うーん……何故かしら心がズキズキと痛むわ。まるで昔可愛がっていた男の子から「もう子供じゃないんだからお姉さんぶんなよな」って言われたみたいに……例えてみたけど、これは何か違うわね。冷静に考えるとこの子も思春期を迎えたんだ、とか私のこと異性として見てるのねって思いそうだし。

「お姉さん悲しい……そんな風にショウ君を育てた覚えはないのに」
「育てられた覚えはないからな」
「ガク……ねぇショウ君、せっかくのデートなんだし手くらい繋ぎましょうよ。ね?」
「なななな何を言ってるんですか!? い、いいですかキリエ、そういうのはこ、恋人同士がすることです。ショウさんとキリエはそういう関係じゃないんですからするのは風紀的にもよくありません!」

 はぁ……我が姉ながらこの純情ぶりは可愛さを通り越して呆れてくるわ。本当は自分だってショウ君と手を繋いだり、腕を組んだりしたいくせに。顔の赤さから考えるとそこを通り越して昼間から考えちゃいけないレベルまで到達してる可能性もあるけど。
 やれやれ、基本的に素直なくせに何でショウ君への想いは素直に言えないのかしら。これじゃあ、いつまで経っても進展しないって言うのに。
 私の見立てが正しければ、お姉ちゃんがショウ君を好きになったのは今に始まったことじゃないわ。あれは遡ること10年ほど前、ショウ君がまだ物心ついた頃の話。ショウ君と私達姉妹は一緒に遊ぶというか、私達がショウ君の面倒を見ていたわけだけど、そのときにお姉ちゃんはこう言ったわ……

『わたし、おおきくなったらショウくんのお嫁さんになります!』

 正直私も小さかったからどういう経緯でそんなことになったのかは覚えていない。ただ主動だったのは私達姉妹でしょうからおままごとでもやっていたんじゃないかしら。それで1日中遊んでてショウ君のことが好きになってしまったお姉ちゃんはそういうセリフを口にしたんだと思う。
 まあここだけ聞けばよくある昔話になるわけだけど……お姉ちゃんは今でもそのときのことを鮮明に覚えているというか、あの頃からずっとショウ君のことが好きなのよね。前にそのことに触れたら過敏に反応してたし。
 あぁ……何て純情なお姉ちゃん。純情すぎて高校生とは思えないわ。なのはちゃんやフェイトちゃん達にこの手の話をしたときくらい大人としての余裕がないし。今まで事あるごとに背中を押してきたけど全く効果がないのよね。私のやり方が悪いのかしら……仮にそうだとしても8割くらいはお姉ちゃんに責任があるはずだわ。

「キ、キリエ……急に黙っちゃいましたがどうかしましたか? もしかしてお腹でも痛いんですか?」

 さっきまで怒っていたのに何て優しいお姉ちゃんなの……やれやれ、もういっそのことショウ君から告白させるように動こうかしら。お姉ちゃんは私と違って真面目だからショウ君も邪険にはしないし、好きか嫌いかで言えば好きな方でしょうから。
 というか、お姉ちゃんはこんだけ分かりやすいんだからショウ君に察しなさいと言いたい気分ね。でもショウ君は別に鈍い子じゃないしお姉ちゃんの気持ちに気が付いてるんじゃ……それで知らない振りをしているとしたら、もしかして好きな子が居るということ?
 ……ありえない話じゃないわね。不思議なことにショウ君の周りには美少女が揃っているし。まあその大半は年下なんだけど……もももしかしてショウ君は年下好きなのかしら。でも大体の子は小学生だし、それが好きということはロリコンということに。
 でもそう考えると私やお姉ちゃんに見向きもしない理由の説明は出来るわ。単純に昔から馬鹿やってきたせいで私達を異性として見ていないだけという可能性ももちろんあるんだけど。くっ……お姉さんをこんなに惑わせるなんてショウ君あなたって子は何てひどい子なの。

「大丈夫よお姉ちゃん、このあとのデートプランを考えていただけだから」
「なっ……私も居るんですからこ、これはデートなんかじゃありません。というか、何でそうあなたはいつもいつもそうなんですか。私の心配を返してください!」
「そっちが勝手にしたのに返せだなんて横暴ね。大体お姉ちゃんは頭が固すぎるわ。年頃の男女が一緒に出掛けてるんだからこれはデートでしょ。ただショウ君が両手に華ってだけで……お姉ちゃんだってデートって思った方が楽しいでしょ?」
「そそそれは……い、いえでもデートとは本来1対1で行うものであって。……しかし、私達は知らない仲でもないですし、何より自分の中でそのように思うのは自由。ということは……あぁでも!」

 ほんと……お姉ちゃんは可愛いわね。お姉ちゃんを見ているショウ君は「今日もアミタは元気だな」くらいの顔しかしてないから可哀そうにも思えてくるけど。
 というか、お姉ちゃんはショウ君のどこに惚れたのかしら。今では背も高くなってるし、顔立ちも男らしくなってそこそこにイケメンだとは思うけど……お姉ちゃんが好きなったのは私達よりも小さい頃。今と違って素直で可愛かったのは認めるけど、気持ちとしては弟に向けるそれになるのが普通じゃないかしら。我が姉ながら不思議だわ……

「キリエ、アミタが好きなのは分かるがあまりからかってやるなよ」
「それは無理な相談かしらん。だってこれが私とお姉ちゃんのスキンシップだから。というか、あんまりストレートにお姉ちゃんが好きとか言われると私がシスコンみたいに聞こえるから遠慮してほしいわね」
「シスコンの気はあると思うんだが……」
「な、何を言ってるのかしら。そんな根拠……」

 …………。
 ………………あれこれ見られてきただけにないとは言えないわね。よくよく考えてみると、私ってショウ君に結構恥ずかしい姿を見られてきてるんじゃないかしら。
 お姉ちゃんとケンカしちゃってなかなか仲直りできずに泣いちゃった時とか……熱を出したときに人恋しくなって寝るまで手を繋いでてとか言っちゃった時とか。それに……

『何でキリエは花を育ててるの?』
『それはわたしの担当だからよん。正直面倒臭かったりするんだけど……』
『そっか……でもずっとやってるんだからキリエは偉いよね。それに……おれはキリエは育てた花好きだよ』
『え……』

 ………………何であの時のことを私は思い出しちゃってるわけ!?
 いや確かにあの時のことは私とショウ君だけの思い出ではあるけど、まだショウ君が小さい頃の話なのよ。身長だって私だって低いし。なのに何であの時の私はD・T・M――ドキドキでトキメキがマックスなの!?
 というか、何で今ドキドキしてきてるの。落ち着け、落ち着きなさいキリエ。あなたは妖艶さが売りなお姉さんでしょ。年下の男の子に負ける女じゃないわ。

「キリエ? ……何だか妙に顔が赤いが」
「な、何でもないわ。夏空の下、外に出てるんだから体温が上がってるだけよん!」

 何で見透かしたかのように優しくしてくるの。普段は冷たいというか、無関心を決め込んだりするくせにこういうときだけ……昔から居てほしい時には居てくれる子だったけども。
 あぁそうよ、そうですよ……あれこれ何でお姉ちゃんが惚れた理由が分からないとか言ったけど、どこに惚れたのかなんて分かってるわ。私にとっても最も付き合いの長い男の子なんだし……
 でも……私の中にあるこの気持ちはお姉ちゃんのとは違う。
 ショウ君は私にとって弟みたいな子……それは今も昔も変わらない。どんどん男らしくなっていってるから私自身もその変化に戸惑ってるだけ。決してお姉ちゃんと同じ気持ちなんかじゃないわ……そう、決して。
 だって私はお姉ちゃんをショウ君とくっつけようと考えるんだから。まあシュテル達でも良いかなって思ったりすることもあるけど、やっぱりお姉ちゃんは血の繋がった家族だしそこは贔屓しないとね。

「本当か?」
「本当も本当よん。というか、そんなに女の子の顔を覗き込むのはどうなのかしら。あんまり覗き込むようだとお姉さんが君の唇を奪っちゃうわよ♪」
「だ~か~ら~あなたは何を言っているんですかキリエ! 私はあなたをそんな風に育てた覚えはありませんよ。というか、私の目が黒いうちはそういうことは許しません!」
「じゃあお姉ちゃんがする?」
「なななななな……し、しませんよ! 人の目だってあるんですから!」
「あらん、それは周りに人がいなかったするってことかしら?」
「――っ!? キリエ、いい加減にしないと怒りますよ!」

 あのねお姉ちゃん、理解が追いついていないようだから言ってあげるけどすでに怒ってるわよ。
 まったく……さっきから風紀を気にするような発言をしてるのにそれじゃあダメじゃない。風紀お姉ちゃん《あみたん》の称号が泣くわよ。この場合は称号じゃなくて愛称かもしれないけど、まあ細かいところは置いときましょ

「怒ると可愛い顔が台無しよん」
「怒らせてるのはあなたじゃないですか。それにキリエから言われてもあまり嬉しくありません!」
「あまりってことは少しは嬉しいのね……仕方ないわ、ならショウ君から言ってもらうことにしましょう」
「おい、さらりと人を巻き込むな」
「あら、その程度でそんなこと言ってると今日1日持たないわよ。だって今日は水着だって買いに行く予定なんだから」
「え……ちょっ、キリエそんなこと私は聞いてませんよ!? そもそも、今日の予定は買い出しのはずです!」
「夕方までに戻ればいいんだから色々と回れるじゃない。今は夏なんだし水着を使う機会はあるでしょ。そ・れ・に……お姉ちゃんだって新しい水着ほしいんじゃない?」
「う……それは」

 ここで言葉を詰まらせたあたり、私の見立て通り去年よりも大きくなってたみたいね。まあ私が大きくなってるんだからお姉ちゃんが大きくなるのは必然とも言えるんだけど。え……どこがかって? や~ん、そんなの胸に決まってるじゃない♪

「というか、お姉ちゃん考えてみなさい。今日は合法的にショウ君を連れ回せるのよ。お姉ちゃんだってショウ君と水着を選んだりしたいでしょ?」
「そ、それは……でもとても恥ずかしいです」
「まったく……見せたいくせにヘタレなんだから。まあ水着は別としても服とかだって一緒に見て回れるんだから色々とやれることはあるのよん」
「な、なるほど」
「というわけで……今日のショウ君とのデート、一緒に楽しみましょうね」


 
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