レーヴァティン
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第三話 生きるか死ぬかその五
「御前の場合」
「そう見えるが実際にだ」
「そう思ってるんだな」
「そうだ」
実際にというのだ。
「だからだ、まずは神殿に行ってだ」
「そうして抜けるかどうかやってみるか」
「まずはな、そしてだ」
「それからか」
「抜ければよし、抜けなければだ」
「その時はどうするんだ?」
「適当に歩いてどうしてこの世界に来たのか見極めてだ」
やはり言葉は冷静なままだ、淡々とさえしている。
「運命があれば決める、しかし運命が悪いものならだ」
「それに従う人間じゃないだろ」
「運命は変えるものだ」
毅然とした返事だった。
「自分の手でな」
「この世界でもか」
「変える、その時はな」
悪いものであろうともというのだ。
「それだけだ、しかし抜けないとだ」
「運命を探しに行くか」
「そうする、貴様はどうする」
「俺か」
久志は英雄の今の問を受けるとだ、まずは。
考える顔になってだ、そのうえで彼に述べた。
「どうしたものか」
「農家だの何だの言っていなかったか」
「向いてないとか言ってただろ」
「では何をして生きる」
「こっちには俺が就けそうな仕事なさそうだしな」
駅員等だ、タクシーやバスの運転手もいいと思っている。
「適当に探すことになるか?抜けなかったら」
「そうか」
「ああ、どっかで肉体労働でもするか」
「それは止めた方がいいな」
肉体労働と聞いてだ、英雄はすぐにこう告げた。
「こうした世界で肉体労働をしようと思えばだ」
「ブラックかよ」
「俺達の世界ではそうなる」
「そういえばこうした世界って奴隷が付きものだな」
「そういうものだな」
「奴隷がない国もあったよな」
「日本だな」
古代はあったが文明が進展するにつれてなくなった。
「奴婢が廃止されてからだ」
「日本では奴隷がなかったからな」
「差別されている人達や重労働を強制されている人達はいた」
「けれどだったな」
「そうした国もあるにはあったが」
「ここはどうだろうな」
「中世の欧州に酷似した社会だ」
英雄は村で見たものから話した。
「と、なればだ」
「当時の欧州は奴隷いたからな」
「欧州やメソポタミアは奴隷が長くいた」
メソポタミアからペルシャ、そしてイスラムと変遷してもだ。ただしイスラム社会ではムスリムならば奴隷から解放された。
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