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真田十勇士

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巻ノ八十四 高野山その十

「ただ道を進み極めたいだけです」
「武士のじゃな」
「ですから」
「では天下一の武士となりじゃ」
「そしてすな」
「わしを越えよ、わし以上のものになれ」
 こう我が子に言うのだった。
「よいな」
「はい、さすれば」
「影武者も覚えてな」
「その術も使い」
「存分に励むのじゃ」
「その様に」
「それで天下を巡るのもよい」
 この九度山を出てだ、真田家の限られた者達だけが知っている忍の道を使い。
「天下を知りそしてじゃ」
「これからのことを考える」
「そうせよ、流石にわしはここからは出られぬからな」
 何しろ真田家の主であり流されている張本人だ、だからこそだ。
「だから御主達だけでもな」
「外に出て」
「天下の動きを見て参れ」
「さすれば」
「幕府だけでなく諸大名の動きも見よ」
 昌幸は幸村にこうも言った。
「よいな」
「大名の方々も」
「それでどの家がどう考えどう動くのかをな」
「見てそして」
「頭に入れておくのじゃ」
「わかりました」
 幸村はまた昌幸に答えた。
「それでは」
「その様にな、では外に出るのじゃ」
「それがしも」
「是非そうせよ」 
 こう幸村に言ってだ、実際に天下に出ることを許した。こうして幸村も九度山から出られることになったが。
 その彼にだ、家臣の一人がこんなことを言ってきた。
「何でもこの山にです」
「九度山にか」
「来られる方がおるとか」
「それは誰じゃ」
「はい、何でも猿飛殿のご親戚とか」
「佐助のか」
「そう言われていますが」
 こう幸村に話した。
「どうされますか」
「佐助のか」
「そうです」
「そうじゃな」
 少し考えてからだ、幸村はその家臣に答えた。
「会おう」
「そうされますか」
「うむ」
 家臣にまた答えた。
「その者にな」
「では」
「幸い今十勇士は全てここにおる」
 猿飛だけでなくというのだ。
「出ていた者も帰ってな」
「それでは」
「すぐに拙者の屋敷に呼んでくれ」
 その者をというのだ。
「よいな」
「わかり申した」
「その御仁が来ればな」
 その時はとだ、幸村は言った。
「そうしようぞ」
「では殿も」
「会おう、しかしな」
「しかし?」
「佐助に親戚がおったのか」
「その様ですな」
「そういえば祖父殿と暮らしておったというが」
「その祖父殿でしょうか」
 家臣も今一つわからないといった顔で応えた。 
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