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真田十勇士

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巻ノ八十四 高野山その七

「御主達には時折な」
「はい、外に出てですな」
「世のことを調べてくる」
「そうせよというのですな」
「そうじゃ」
 その通りという返事だった。
「よいな」
「はい、わかりました」
「それではです」
「我等殿のお言葉通り世に密かに出てです」
「世のことを調べてです」
「こちらに戻ってきます」
「頼むぞ、その時はな」
 こう言って時折外の世界を調べさせた、だが幸村自身は流石に九度山から出られず昌幸と共に留まった。そして世の動きを聞くと。
「ふむ、お拾様とか」
「はい、徳川の千姫様がです」
「ご成婚されます」
「そのお話が進んでいます」
「内府殿が将軍になられ」
「江戸に幕府を開かれましたし」
「その江戸もです」
 こちらの話も出た。
「かなりです」
「今現在天下から人を集めまして」
「城を築き町を整え」
「これまでにない普請が行われております」
「大坂の時以上の」
「凄いものになっております」
「ふむ、幕府を江戸に開かれてか」
 幸村もその話を聞いて言う。
「そのうえでか」
「城も町もです」
「人を多く集めてです」
「普請にかかり」
「江戸はかなり変わろうとしています」
「これまで何もなかった場所がです」
「とてつもない大きな城が出来てきてです」
「町も出来てきてです」
「川も堤が整えられ」
「見違えるまでに変わろうとしています」
「それが今の江戸です」
「江戸がそうなればな」
 どうなるかとだ、幸村はその江戸のことを思い出しつつ述べた。
「やはりな」
「違いますな」
「そうですな」
「関東全体がです」
「これまでとはうって変わりますな」
「鎌倉や小田原だけでない」
 それこそというのだ。
「あの地が大きく変わるとな」
「関東の全てがですな」
「大きく変わり」
「これまでとはうって違う」
「そうした様になりますか」
「そうなるであろう」
 こう十勇士達に述べた。
「やはりな」
「ですか、ではですな」
「これからもですな」
「江戸のことを見よ」
「そうせよというのですか」
「そうじゃ、ただ気をつけよ」
 ここでこうも言った幸村だった。
「ここにも真田の忍道がありそれを使っているが」
「ですな、ここに入った時からです」
「視線を感じます」
「幕府からの目付ですな」
「それが常にいますな」
「伊賀か」
 幸村は鋭い目になり言った。 
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