安い生命だが
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第五章
「本当に」
「そうだな、パラシュートは見たしな」
「あいつ等のであって欲しいな」
「本当にな」
「爆撃は成功したがな」
ブルームはジョーンズにあらためて言った。
「爆撃隊の連中もな」
「落とされてたな」
「死んだ奴もいるぜ」
「絶対にそうだな」
「三百いて二十機は落とされてたか?」
敵機や高射砲によってだ、エンジントラブルでフランスに不時着した機体もあった。
「随分やられたな」
「今回もな」
「しかしな」
「今回の出撃でもだな」
「結局上の方にとったらな」
大統領や彼の側近達にしてみればというのだ。
「予想通りかそれ以上かそれ以下か」
「数字のことか」
「俺達が生きるか死ぬかはな」
「そうした問題なんだな、やっぱり」
「ああ、それだけだよ」
まさにというのだ。数字だけのことなんだよ」
「俺達はその程度か」
「ああ、死んでもな」
「戦死者何人とか数字だけか」
「それが多いか少ないかだよ」
「安いな、おい」
ジョーンズは口の端を歪めた、そのうえでの言葉だった。
「俺達の命は」
「本当にそうだな」
「命懸けで戦ってるんだがな」
「地上部隊なんかもっと大変だぜ」
「フリッツ共と必死にやってるな」
「ノルマンディーでもそうだったしな」
上陸の時もというのだ。
「オマハなんか凄かったってな」
「ああ、血のオマハな」
「アフリカでもシチリアでもイタリア本土でもフリッツは粘ってるしな」
必死に戦っているのだ、彼等にしても。
「だからな」
「地上部隊は俺達以上に死んでるか」
「そうさ、けれどな」
「地上部隊の戦死もか」
「偉いさん達にとっては数字だよ」
そういったものに過ぎないというのだ。
「多いか少ないか」
「多ければ問題でか」
「少なかったらいいんだよ」
「俺か御前が死んでもだな」
「戦死者が少なかったらいいんだよ」
「正直戦争で死にたくないんだけれどな」
ジョーンズは本音を述べた、そこには偽らない真実があった。
「映画みたいにヒーローにはなりたいけれどな」
「ドイツ軍でも日本軍でも叩きのめしてな」
「そうして映画みたいにはなりたいさ」
アメリカ映画のだ、アメリカ映画のアメリカ兵はとにかく強い。弾が当たっても死なないか最初から弾の方が避ける位だ。
「けれどな」
「映画みたいにだな」
「勝って帰りたいんだよ」
「死なずにな」
「戦死者が少なくてもな」
それでもとだ、ジョーンズはさらに言った。
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