監獄ロック
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第五章
「何時でもね」
「そうですか」
「そうしたいんだよね」
「そうなりました」
この気持ちの変化も話した。
「ここに来て」
「あの人達を元気にしたくなったんだね」
「そうなりました」
実際にとだ、俺はまた答えた。
「ここに来て」
「よかったよ」
マネージャーの声が笑っていた、そのうえでの言葉だった。
「そう考えてもらってね」
「あの人達の顔を見ていたら」
「罪を犯してしまって」
「はい、それで落ち込んで沈んで後ろ向きになってましたから」
顔に出ていた、そうした暗いものが。
「その気持ちを何とかです」
「前向きにしたくてだね」
「歌いましたし」
それも普段より余計にだ。
「あえて明るい曲も選んで」
「それでだね」
「また行かせてもらいたいです」
またマネージャーに言った。
「そしてあの人達に聴いてもらいたいです」
「それで笑顔にだね」
「なってもらいたいです」
少しでもだ、本当にそうなってもらいたいと思った。
「是非」
「そうだね、それじゃあね」
「はい、また」
「わかったよ、じゃあ社長には話しておくから」
「お願いします」
「ただこの仕事は慈善だから」
それでやっているからだというのだ。
「正直お金はね」
「ああ、お金は他のところで稼ぎます」
とりあえず今は学費位はだ。
「ですから」
「いいんだね」
「そうした仕事じゃないってわかってますから」
だからだ、このことはもう最初からだ。
「いいです」
「そうか、それじゃあね」
「また今度ですね」
「行こうね」
「はい、そしてまた歌います」
ここでもだ、俺はギターを手に言った。
「そうさせてもらいます」
「それじゃあね」
「色々わかりました」
今日のことでだ、本当に。
「世の中犯罪といってもですね」
「色々な罪があってね」
「色々な犯罪者の人がいますね」
「そうだよ、一概に犯罪者といってもね」
それこそだ。
「君が嫌うみたいなね」
「碌でもない奴がいて」
「ああした人達もいるんだよ」
「そしてああした人達はですね」
「前向きになってね」
そしてというのだ。
「明るく生きていくべきなんだよ」
「罪に負けることなく」
「誰でもそうなってしまうかも知れないからね」
「そのこともあって」
「励ましも必要なんだよ」
「俺また歌います」
マネージャーに約束した。
「あそこで、それであの人達の曲もです」
「作るんだね」
「そうします」
「そうしたらいいよ、じゃあね」
「はい、事務所に帰ったら」
「次のアルバムの打ち合わせをしようね」
「お願いします」
俺はマネージャーに笑顔で応えた、車のバックミラーに映るその顔は確かな笑顔だった。その笑顔を見て俺はまた思った。またあの人達の為に歌おうと。
監獄ロック 完
2017・3・30
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