遊戯王ARC-V 千変万化
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第8話
前書き
色々と批評を受けながらも先日とうとう終わってしまったARC-V
もうDDDが並ぶ場面を見ることもできなくなるマスタールール4
不安が先行するブレインズ
「増援はまだなのか!?」
「おい、背中を見せるな」
「うわああああ!?」
ああ、もう、いくら本拠地とは言えオベリスクフォースより多すぎだろうが。ゴヨウ・ディフェンダーの顔は見飽きたぞ。バトルロイヤルを生かして守備力20000前後をキープしているが、こちらは24体で融合した【キメラテック・オーバー・ドラゴン】に【メテオ・ストライク】と【安全地帯】と【デビリアン・ソング】でシンクロ召喚を邪魔しているからこその状況なのだ。
「ああ、もう、どうしてこうなるかな!?」
増援にやってきた警察っぽい存在を蹴散らしながら4時間ほど前を思い出す。
ランサーズの結成式後、予定通り3チームに別れた。まずはエクシーズ次元行き、これには隼とユースチームが向かうこととなった。向こうは未だにアカデミアからの襲撃があるからな。ある程度の数と力があるユースチームが支援物資の輸送を担当する。
次にスタンダートの防衛チーム。これには一般市民とプロから選抜された者が付くことになった。これまでのオベリスクフォースの傾向からのオレ監修のバーン・融合メタデッキが支給される。あとは、数で押せばなんとかなるはずだ。
最後にシンクロ次元に協力を求めるのがオレ、零児、零羅、セレナ、瑠璃、権現坂、塾長、デニス、月光、日光となっている。デニスは今回の大会で見つけた掘り出し者だ。中々柔軟に動ける人材として専用のペンデュラムも開発することになるぐらいには期待している。零羅は零児の弟らしい。『CCC』と言うカテゴリーのカードを扱う。対属性メタカテゴリーらしい。単一属性で挑むと死ぬな。それとも【御前試合】で嫌がらせの方向のほうが良さそうだ。月光と日光は零児が雇った裏業界のフリーのデュエリストで忍者だ。リアルファイト要員でもあるそうだ。
そんなメンバーでシンクロ次元にやってきたのだが、転移先が分かれてしまったのかオレの側にはセレナと瑠璃と日光だけだった。とりあえずは合流を優先しようとしたのだが、セレナの大ポカで警察っぽいのに追われることになった。日光に二人の護衛を頼んでオレが囮になったんだけど、オベリスクフォースと違い、奴らはバイクという機動力を持っているのが厄介で逃げ道のことも考えて移動しながら【キメラテック・オーバー・ドラゴン】で暴れているのだ。
「ちっ、挟まれたか」
途中から誘導されている感じはしていたが橋の上に誘導され前後を挟まれた。水面までは100mってところか。ええい、やるしかない!!【キメラテック・オーバー・ドラゴン】を踏み台にして橋から飛び降りる。
「飛び降りた!?」
「自殺か!?」
死にはしないだろうけど、痛いだろうなぁ。水面に飛び込み、デュエルモードからテストモードに切り替えて【素早いマンボウ】を召喚して掴まる。とりあえず街の外縁部から内縁部にまで移動して、下水の出口を見つけてそこから街に忍び込むことに。そこそこ移動してマンホールを押し上げる。おかしいな、変に重い気がする。マンホールをなんとか押しのけて這い上がり、元に戻して立ち上がり、ふらつき、壁に凭れる形になる。
「あれ?」
なんだ?身体がまともに動かない。おいおいおい、一体何が起こってる。膝が笑い始め、めまいまでしてきた。目が霞み、とうとう体を支えきれなくなって倒れる。意識が混濁していく中、聞き慣れた声が聞こえてくる。
「……ーゴ!?しっか……」
「ゆ、ず?」
柚子ではない誰かに抱きかかえられ、そこで意識を失う。
ユーゴにそっくりな彼を保護してから一日、未だに意識を取り戻さない。最初はユーゴだと思って連れ帰ったんだけど、見たことのないデュエルディスクにデッキも見たことのない機械族のデッキ。エクストラデッキには紫色や黒色の枠のカードが入っていた。それに、腰とジャケットの裏にはデッキホルダーがびっしりと付いていて、どれもが全く異なるデッキだった。シンクロモンスターのデッキもあったけれど、上と下で色の違うカードなんかもあった。それから風邪にうなされながら知らない人の名前やお父さんを呼んで、求めている。そして、何かに怯えている。
ここまでユーゴと違う部分が見えたら、顔はそっくりでも別人にしか見えなくなった。どんな人なんだろうな、この人は?これだけのカードを持ってるのだからトップスの人なのかな?それにしては全身ずぶ濡れだし、服も丈夫だし上等なものだけどトップスの人たちが着ているような感じでもない。なら、どこか遠くからの旅人?でも、移動手段も鞄も持ってなかった。どこかに置いているだけ?
「ぅぁ、こ、ここ、は?」
「気がついた?」
「……あ、ああ。君が、助けてくれたの?」
「まだ起きちゃだめよ。すごい熱だったんだから」
起き上がろうとする彼をもう一度寝かせる。
「すまない。この礼はちゃんとするよ」
「いいのよ、気にしなくても」
「それじゃあオレの気がすまないから。とりあえず、宿泊費の一部だとでも思って受け取ってくれ」
そう言って近くにおいてあったデッキケースからシンクロモンスターを取り出して私に渡してくる。
「【スターダスト・ドラゴン】」
「素材の制限なしでそこそこの攻撃力と守備力、自らをリリースして効果破壊を無効にして破壊する効果。そしてエンドフェイズに自己蘇生を果たす」
素材の制限がないのにこの性能、明らかにトップスの人達が使うようなカードだ。そんなカードを簡単に渡してしまうなんて、この人は一体何者なの?
「貰いすぎだわ」
「気にするな。余っているんだ。使われないカードほど可哀想なカードはないんだ。だから使ってやってくれ」
それだけを告げるとまた意識を失うように眠ってしまった。
【スターダスト・ドラゴン】
まるでユーゴの【クリアウィング・シンクロ・ドラゴン】のような力を感じさえするカード。キングのエースに似た力を感じられる。レベルと種族しか類似点がないのにそう思える。
オレがリンに助けられて2日、ようやく体調が戻って動けるようになった。お礼はどんなものが良いかと聞いたのだが、【スターダスト・ドラゴン】だけでも貰いすぎだと言い切られて何も渡せない。仕方ないので子供達にエンタメデュエルを見せてあげたり、デュエルの指導をしてあげたりする。住んでいる環境を見て理解していたが、デッキが恐ろしく噛み合っていない。【ギガンティック・ファイター】を持っているのに、戦士族が2枚しかなかったり、【アーカナイト・マジシャン】があるのに魔力カウンター関連のカードが無かったりとぼろぼろだ。それでも楽しそうにデュエルをしている。
そうだよな、デュエルは本来こういうものだ。それを武器にしているオレたちが異常なんだよな。だけど、そうしないと守れないものもある。リアルソリッドビジョン、登場が早すぎたということか。人類が正しく扱えなかった、そういうことなのだろう。
悩むのは後にしよう。とりあえず、もっと笑顔が増えるように子供達を連れてカードを拾いに行こう。結構な枚数が落ちてるみたいだからな。回収すれば十分使えるはずだ。
他の誰かがアクションを起こすまでは待ちの選択しかできないのが辛いけど、リンの傍を離れるわけにも行かないしな。塾長たちは無事だろうか?
徳松 LP4000 手札0
場
花札衛-雨四光- ATK3000
伏せ2枚
「これでオレの必勝コンボは完成した。もうドローすら必要ない!!これでもまだ生温いことが言えるか!!」
「熱を忘れたプロに居場所なんてない!!そんな熱を忘れたアンタにはオレが熱血指導だ!!ドロー!!」
「甘ぇんだよ!!【雨四光】の効果を発動!!相手がドローした時、1500のダメージを与える!!」
「甘いのはそっちだ!!今ドローした【禁じられた聖杯】を発動!!場のモンスター1体を選択し、そのモンスターの攻撃力を400アップさせ、効果を無効にする!!」
「何!?」
花札衛-雨四光- ATK3000→3400
「続いて【愚かな埋葬】を発動。デッキから【弧炎星ーロシシン】を墓地に送り、永続魔法【炎舞ー天磯】を発動。デッキから獣戦士族を手札に加える。オレは【熱血獣士ウルフバーク】を手札に加えて召喚。【ウルフバーク】の効果を発動。墓地から獣戦士族・炎属性・レベル4を効果を無効にして守備表示で特殊召喚する。【ロシシン】を特殊召喚して、更に永続魔法【炎舞ー天枢】を発動。この効果により、オレは1ターンに1度、通常召喚に加えて獣戦士族を通常召喚できる。【熱血獣王ベアーマン】をリリース無しで召喚。【ベアーマン】はレベル8だがリリース無しで召喚できる。リリース無しで召喚した場合、攻撃力は1300になるが問題ない。【ベアーマン】の効果を発動。オレの場の獣戦士族・炎属性・レベル4のモンスターをレベル8に変更する」
「レベル8が3体?チューナーもいねぇようだがどうするってんだ?」
「こうするんだよ。レベル8の【ウルフバーク】【ロシシン】【ベアーマン】でオーバーレイ!!3体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築、エクシーズ召喚!!【熱血指導王ジャイアントレーナー】」
熱血指導王ジャイアントレーナー ATK2800
「ほう、シャバにはそんな召喚があるのか」
「エクシーズ召喚は同じレベルのモンスター2体以上に重ねて召喚する方法だ。特殊召喚されたエクシーズモンスターは素材となったモンスター、ORUを墓地に送ることで効果を発動する。【ジャイアントレーナー】の効果を発動。ORUを1つ取り除き、カードを1枚ドローして公開する。そのカードがモンスターなら800のダメージを与える。そしてこの効果は1ターンに3回まで使える。行くぞ!!オレはORUを3つ取り除く!!さあ、熱血指導だ!!」
デッキに指をかけ、熱を失ってしまったプロデュエリストに熱くたぎる思いを思い出させるために、全力で引き抜く。かつて遊勝さんがオレを救ってくれたように、今度はオレがこの人を救ってみせる。
「1枚目【ウルフバーク】、2枚目【ベアーマン】、3枚目【RUMーアージェント・カオス・フォース】よって1600のダメージだ!!」
「ぬおおおっ!?」
徳松 LP4000→2400
「更に【アージェント・カオス・フォース】を発動。このカードは自分の場のエクシーズモンスターのランクを1つ上げた『CNo.』、または『CX』にランクアップさせる。ここからが本当の熱血指導だ!!【ジャイアントレーナー】をランクアップエクシーズチェンジ、来い、【CX 熱血指導神アルティメットレーナー】」
CX 熱血指導神アルティメットレーナー ATK3800
「【アルティメットレーナー】も同じ効果を持つ。行くぞ、ドロー!!【禁じられた聖杯】よってダメージはなしだ。【ジャイアントレーナー】の効果を使ったターン、オレはバトルを行えない。カードを2枚伏せてターンエンド」
柊修造 LP4000 手札2枚
場
CX 熱血指導神アルティメットレーナー ATK3800
炎舞ー天磯
炎舞ー天枢
伏せ2枚
「さあ、どうする。オレの手札には【ウルフバーク】と【ベアーマン】がいる。次のターン、もう一度【ジャイアントレーナー】が出て来る。そして【アージェント・カオス・フォース】はランク5以上のモンスターが特殊召喚された時、墓地から手札に加えることが出来る。必勝コンボは既に崩れた。さあ、どうする徳松さん、いや、エンジョイ長次郎!!」
「うるせぇ!!その名は捨てたんだ!!それに必勝コンボはまだ生きている!!」
「いいや、デュエルに必勝なんてものはない。あるのは面倒くさいだけだ。どれだけ強力なモンスターだろうと、どれだけ強固なロックだろうと、どれだけ殺意の高いバーンだろうと、どれだけ緻密なコンボだろうと、やぶれないものものなんてない!!それがデュエルだ!!思い出せ、アンタにだってそんな思いがあったはずだ!!例え負け続けようとも、勝ち続けようとも、デュエルは楽しいものなんだってことを!!エンジョイ長次郎の名から分かる。昔のオレとは違ってアンタは誰よりも楽しんでいたはずだ!!」
「昔の、お前さん?」
「オレがこの街からずっと遠くの街でプロだった頃、オレは『帝王』の二つ名で呼ばれていた。強力なモンスターの連続召喚で徹底的に相手を叩き潰すスタイル。しかも、基本は2軍デッキでそれを行い、2軍デッキでは対処できないと感じた相手には1軍デッキを使って徹底的に相手を叩き潰してきた。そんなオレにファンは付かなかったよ。試合の度にブーイングなんて当たり前だ。だが、そんなことはどうでも良かった。オレは相手を叩きのめせればそれでよかった。デュエルを楽しんでるんじゃない。相手を叩きのめすのが楽しかったんだ。デュエルモンスターズを始めた頃は、ただただデュエルすることが楽しかったはずなのにな」
今だからこそ思い出せるようになった。あのまま『帝王』をやっていれば、今でも暴力的なデュエルしかできなかっただろう。
「そんなオレにデュエルの楽しさを思い出させてくれた人がいた。その人に負けてオレはプロを辞めた。そしてその人に弟子入りした。『帝王』の二つ名を捨て、今じゃあ遊勝塾の熱血講師、柊修造だ。エンジョイ長次郎、アンタだってまだやり直せる。聞こえないか、あの音が、声が」
収容所中から徳松さんのデュエルを見せろと看守にカードを渡す声と、この部屋まで走ってくる音。そして、先頭の者が柵の前にまでやってきた。
「やった、まだ終わってねぇぞ」
「徳松さん、待ってました」
「こりゃたまんねえな」
「これだけの観客が集まったんだ。もっと熱く盛り上げよう!!」
「うるせえ!!オレのターン」
ターンを宣言してからも中々ドローをしない。だが、ドローを促すように観客達が長次郎コールを行う。そして、とうとうドローする。
「エンジョイ!!」
「「「しびれる~」」」
「来たぜ、魔法カード【超こいこい】を発動。デッキからカードを3枚ドローし、ドローしたカードが『花札衞』なら特殊召喚し、それ以外なら墓地に送り1000のダメージを受ける!!」
「ギャンブルか。それがアンタの切り札か」
「そんなんじゃねえよ。こいつはオレの生き様よ。行くぜ、オレの運命を賭けたドローだ!!」
「待ってました!!」
「世界一!!」
「デュエルとはすなわち人生なり。人生は一度きり、勝つ日もあれば、負ける日もある。負けを恥じず勝って驕らず、すなわちレッツエンジョイ!!」
「「「「「エンジョイ!!」」」」」
「1枚目」
「「「こいこい、こいこい、こいこい」」」
「エンジョイ!!」
「「「エンジョイ!!」」」
「引いたのは【代償の宝札】よって墓地に送られる」
エンジョイ長次郎 LP2400→1400
「2枚目!!」
「「「こいこい、こいこい、こいこい」」」
「エンジョイ!!同じく【代償の宝札】よって墓地に送られる」
エンジョイ長次郎 LP1400→400
「2枚目も外した」
「馬鹿野郎。破壊されたのは【代償の宝札】だ。どんな方法でも墓地に送られれば2枚ドローするカードが2枚も墓地に送られたんだ。これはむしろチャンスなんだよ」
「その通り。ここまでは想定通り!!そして3枚目!!」
「「「こいこい、こいこい、こいこい」」」
「エンジョイ!!【花札衛-松に鶴-】よって特殊召喚される。ただし、この効果で特殊召喚されたモンスターの攻撃力は0となり、レベルは2となる」
花札衛-松に鶴- ATK0
「そして、墓地に送られた【代償の宝札】の効果で4枚ドロー!!【神秘の中華鍋】で【松に鶴】をリリースして守備力分のライフを回復する」
エンジョイ長次郎 LP400→2400
「そして【超勝負!】を発動!!【雨四光】をエクストラデッキに戻し、そのシンクロ素材となったモンスターをレベル2として墓地より特殊召喚する。来い、【松に鶴】【芒に月】【桐に鳳凰】【柳に小野道風】その後、1枚ドローし、ドローしたカードが【花札衛】ならレベル2にして特殊召喚する。【花札衛】以外なら俺の場のモンスターを全て破壊し、ライフを半分失う!!」
「あの4枚で【雨四光】5枚で出すなら【五光】足りないのは【桜に幕】引くか、エンジョイ長次郎!!」
「言ったはずだ。勝つ日もあれば負ける日もある。引こうが引くまいが、それこそ人生。すなわちエンジョイだ!!」
勢い良く引いたカードは【桜に幕】よって特殊召喚され、場には5体のモンスター、チューナーが1体。来る!!
「俺はレベル2の【桜に幕】【松に鶴】【芒に月】【桐に鳳凰】にレベル2の【柳に小野道風】をチューニング!!その神々しさは聖なる光。今、天と地と水と土と金となりて照らせ。シンクロ召喚!!【花札衛-五光-】」
花札衛-五光- ATK5000
「攻撃力5000、それに魔法無効に戦闘するモンスターの効果を無効。ものすごい制圧力だ」
「これが俺の切り札よ!!そしてカードを2枚セットし【手札抹殺】を発動。【ウルフバーク】と【ベアーマン】を墓地に送ってもらおうか」
「くっ、2体を墓地に送り2枚ドロー」
このカードじゃダメだ。他のカードじゃ遅い。
「そして今伏せた2枚目の【超こいこい】を発動!!【松に鶴】【芒に月】【桐に鳳凰】をレベル2で特殊召喚!!」
「うおおおおおおおっ!!連続で決めてきたぞ!!エンジョイ長次郎が帰ってきた!!」
「最後に伏せていた【札再生】墓地から【花札衛】をレベル2で特殊召喚する。【柳に小野道風】を特殊召喚。再び現れろ【雨四光】」
花札衛-雨四光- ATK3000
「バトルだ。【五光】で【アルティメットレーナー】を攻撃!!」
「【ダメージ・ダイエット】を発動。このターン、オレが受けるダメージを半分にする」
柊修造 LP4000→2800
「【雨四光】でダイレクトアタック!!」
「【ダメージ・ダイエット】で半分だ」
柊修造 LP2800→1300
「オレはこれでターンエンドよ。さあ、お前さんの最後のドローだ!!」
徳松 LP2400 手札0
場
花札衛-五光- ATK5000
花札衛-雨四光- ATK3000
伏せ2枚
「諦めた時点でデュエルには勝てない。行くぞ、オレのターン!!燃え上がれ、オレの魂よ!!ドロー!!」
「その瞬間、【雨四光】の効果を発動。1500のダメージを与える」
「墓地から【ダメージ・ダイエット】を除外して効果を発動。このターン、効果ダメージを半分にする。ぬお!?」
柊修造 LP1300→550
「さらにカウンター罠【強烈なはたき落とし】を発動。今引いたカードを墓地に送ってもらう。どうでい、【手札抹殺】の時に盤面をひっくり返せるカードを引いていなかったようだからな。これで俺の勝ちだ」
「ああ、確かに【手札抹殺】の時は勝てなかったよ。だが、条件はアンタが揃えてくれた。行くぞ、デュエルモンスターズ史上最強の除去方法、【五光】と【雨四光】をリリースし、【溶岩魔神ラヴァ・ゴーレム】をエンジョイ長次郎の場に攻撃表示で特殊召喚!!」
「なにっ!?」
溶岩魔神ラヴァ・ゴーレム ATK3000
エンジョイ長次郎がラヴァ・ゴーレムの檻に閉じ込められる。
「檻の中で更に檻に閉じ込められるとは。なんという凶悪犯なんだ(棒読み)」
「何だこいつは!?」
「そいつは相手の場のモンスター2体をリリースして、相手の場に特殊召喚することしか出来ない変わったモンスターだ。そしてコントロールするプレイヤーのスタンバイフェイズ毎に1000のダメージを与える。だが、これで終わりだ。魔法カード【所有者の刻印】を発動!!全てのモンスターのコントロールを元々のプレイヤーに戻す!!」
エンジョイ長次郎が檻から釈放されて、今度はオレが収容される。
「バトルだ!!オレの熱血が全てを燃やし尽くす!!修造・熱血・ファイヤー!!」
「ぐおおおおおお!?」
エンジョイ長次郎 LP2400→0
ラヴァ・ゴーレムの攻撃でエンジョイ長次郎が吹き飛ばされ、オレも檻から釈放される。揺られてちょっと気持ち悪い。デュエルでは勝ったが、観客である囚人たちからは長次郎コールが鳴り止まない。
「久々に楽しいデュエルだった」
エンジョイ長次郎が起き上がり、観客に向き合う。そして両手を上げて高らかに宣言する。
「エンジョイ!!」
「行政評議会の者です。榊遊矢、リンの2名はフレンドシップカップへの出場が認められました。尽きましたはご同行を願います」
子供達が起きる前にリンと二人で朝食の用意をしている所に白服達が現れる。
「フレンドシップカップ?登録した覚えはないんだけど」
「出場登録は行われている。これがその書類だ」
白服がデュエルディスクを操作して登録書を見せてくれる。この字は零児の字だな。つまりは参加しろと言うわけか。リンの方も零児の字ということは、参加にかこつけて保護するということだろう。
「なるほど、事情は理解した。だけど、ちょっとだけ待ってくれるかな。子供達の食事を用意してからこっちも準備があるから。逃げはしないから中で待っていてくれても、いいよな、リン」
「えっ、ええ。大丈夫だけど」
リンは行政評議会、言ってしまえば最高権力者の命令よりも子供達を優先しようとする行為に少し驚いているようだ。朝食の用意をして子供達への置き手紙を用意してから拾ったカードで作ったデッキをテーブルに置いておく。頼むぞ【スクラップ】たちよ。子供達を守ってやってくれ。
白服達に連れられた先では、零児たちと言うか、全員が揃っていた。塾長と権現坂とデニスと知らない男は手錠を付けられてるが何があったんだ?
「零児、何がどうなってるの?」
「そういう君こそ何をしていた?」
「オレ?セレナがポカをやらかして、日光に二人を任せて囮になってただけだよ。まあ、その後に体調を崩してリンに保護されてた」
「何をどうやったら彼女と出会えるのかは知らないが、良くやったと言っておこう。事情の説明は?」
「してない。そっちに任せるよ。幸いなことに瑠璃がいるからね、セレナとは顔合わせだけでいいでしょ」
「おい、どういうことだ、それは」
セレナがなんか吠えてるけど、セキュリティに追われるきっかけを作ったのをもう忘れたのだろうか?
「えっ、直接言ってほしいの?」
「……いや、やっぱいい」
そうした方が良い。またガチ泣きされても困る。
「ねえ、遊矢。貴方は一体?」
「あ~、まあ、色々な事情があるとしか言えないかな。何処まで話して良いのかとか、そういうのが判断できないからトップの零児に聞いてくれ」
「分かった。遊矢がユーゴにそっくりなのも何か事情があるのね」
「それはリン自体にも言えることだ」
「話を戻そう。当初の目的を果たすために君にはジャック・アトラスを倒して欲しい」
「オッケー。あれ、でも確かフレンドシップカップの優勝者しか挑戦権がなかったんじゃあ?」
「そうだ、だからフレンドシップカップにも優勝してもらう」
「何か制限とかは?」
「ない。存分に君の力を見せてくれ」
「それに加えて君にはエキシビジョンマッチに出てもらう」
零児の隣、隣?上?まあ、高いところにいる五人の年寄りの中で最も目付きの悪いおじさんがそう言ってきた。
「エキシビジョンマッチ?」
「そうです。フレンドシップカップの前夜祭。それのメインイベントとしてフレンドシップカップの優勝者以外に、キングとデュエルを行える。それがエキシビジョンマッチです」
「それに出てもらい、何処までやれるのか。本戦の前のテストだと思ってもらってもかまわない」
「これは私達からの慈悲でもある。全く知らない相手に勝てとは言わない。一度だけその身でキングの力を味わってもらう。ですね、議長」
「はい。貴方もチャンピオンならデュエルを行うのが一番でしょう。ただし、エキシビジョンでは勝って貰っては困ります。そして態と負けて貰っても困ります。キングに違和感を持たせることなく、会場を盛り上げてデュエルを終わらせて下さい。それが、我々からの条件です」
「そのエキシビジョン、あなた方もご覧になられるのですよね?」
「もちろんです」
「観客の期待に答えるのも私、『千変万化』の務めです。そしてお見せしましょう。超一流のエンタメデュエリスト、榊遊勝の息子にして一番弟子、榊遊矢のエンタメデュエルを」
久しぶりの制限デュエルだ。難しい注文だけど、やってみせるさ。
後書き
ARC-Vではとうとう最後の最後まで完治することなかった振り子メンタル
運動できない奴は死ねという五光の魔術師
ロリをショタとして扱う契約を破棄しまくるブラック経営な社長
口下手すぎるパパン's
結局どうなったのかわからない遊矢シリーズと柚子シリーズ
株が上がり続けた権現坂
作中屈指のエンタメだった遊矢vsデニス
いつものことですが突っ込みどころ多いなぁ。
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