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吸血姫はアホ可愛い!・ω・`)

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36話「ロリへの愛は世界を救うか?⑧~通じない電話~」

 
前書き


ネタバレ伏線ver
http://suliruku.blogspot.jp/2017/02/36.html

★★★ 

 

ロシア軍の目を誤魔化すついでに、魔法の鞄から出した黒い迷彩色の装甲車に乗り換えた。故障してないラジオを使って、移動しながら情報収集できて便利である。
だが、状況が状況だけに、どこのニュース番組も垂れ流す情報が――ブラド氏の人類裏切り疑惑一色だった。

『いや~ブラド氏の裏切りが発覚して凄い事になってますね~。政治評論家のヤーンさんはどう思いますか?』
『余りにもタイミングが都合が良すぎますな』
『はぁ……?』
『ネット上に流出している書類が出回って、圧倒的な速度で炎上しているのは誰かの意図を感じますぞ』
『そ、それはどういう事でしょうか……?』
『きっと、うちのテレビ局とか、他のマスコミのお偉いさんがバグダイン氏から賄賂でも貰わない限り、ここまで迅速に、裏付けも取れていないネタで炎上する事はないでしょう』
『録音ストップー!CM流して!』
『これでエネルギー切れの心配はいらない!原子炉を搭載したスーパーカーっ!これで第二階層での補給も困らない!買うなら今っ!世紀末社をよろしくぅっー!』

この物騒なCMを最後に――ラジオが壊れた。白真珠が殴った訳ではない。魔力を浴びた事で壊れたのだ。

「お師様!ラジオが壊れました!これは魔物の襲撃フラグですよね!」

焦りを紛らわせるかのように白真珠が騒いだ。しかし、今、走っている所は草原地帯である。待ち伏せするのに向いていない。バックミラーとサイドミラーを確認しても、どこにも魔物の姿はない。というか、こんな所を徒歩で移動する魔物がいたらアホだろう。銃火器が有利すぎるから自殺行為だ。
さらに5分ほど経過しても――

「……何にも起きない……?お師様……?悪党がどこにも居ません」

「いや、ラジオが壊れたのは大量の魔力を浴びた証だ……魔物の大軍や魔力を使わない限り、こんな事にはならんぞ……まぁ、人間と魔物が数万規模の大規模衝突すれば、遠くにいてもラジオは壊れると思うが」

「そういう可能性ってあるんですか?」

「魔物は基本、少人数で行動するから、そんな大軍を動員する事はないな。爆弾の餌食になるし。草原という地形だと米軍は強いぞ。魔物1万匹が死傷する間に、米軍兵士が味方の誤射で1人死ぬかどうかだな。統計的に考えて」

米軍の兵器は、無駄に高性能なのだ。火力を抑えないと破滅するダンジョン世界だが……その環境下に適した兵器を作って配備しているし、銃弾や砲弾に魔力を帯びさせる『ザ・ウェポン』という魔法を俺が開発して、その特許料を俺にジャブジャブと払ってくれるし。俺の個人資産が一兆円以上あるのは、ほとんど米軍のおかげと言っても良いのだ。超大国の軍事予算は地球最強なのである……戦場が惑星サイズで広すぎるから、予算の関係で対応できない所が悲しい……。

「俺たちは、今できる事をやるだけだ。ちょっと手を離すだけで事故る速度だから、白真珠は俺の携帯で、繋がるまでドナルド先輩に電話をかけてくれ。さすがにこの状況で片腕運転は不味い」

そう言って、俺は魔力対策を施した携帯端末を白真珠に渡した。
小さな手で受け取った白真珠はボタンをポチポチと押して、俺の電話帳を見て調べているようである。
「良かった……女性の知り合いが少なそう……」と、俺のプライバシーを暴きたてて安心していた。その調子でドナルド先輩の電話番号を探し当て、電話ボタンを押す。

「あれ……なんか……通話できませんよ……?」

『回線に莫大な負荷がかかっています。しばらくの間、電話をお控えください……安い商品を買うならカグヤ一万円ショップ!一万円ショップにようこそ!』

女性のアナウンスの後に、CMの音が流れた。これは酷い……。

「何が起こっているのか知らんが……悪徳都市や国連軍の基地で何か凄い騒動でも起きたのか……?というか、逆効果すぎるだろ……このCM。客が来るどころかクレーマーが大量に到来するぞ……」

「あ、あの、さっきラジオで警察がお祖父様の事務所を襲撃したって言ってましたけど……アジトで見つけた書類って……凄い証拠品になるんですか?」

「一応……あれを偽造された代物だとしよう。そういう場合の事を考えると、すぐにブラドさんが逮捕されても有罪になるとは限らないが……悪徳都市では腐った人脈と金が物を言う。
バグダインの手下みたいな奴らが、今頃、ブラドさんを捕まえようと躍起になっているはずだ。そういう奴らの手に渡った場合……無事には済まないだろう……現場の暴走とか、事故死とか、密室裁判でも始まって、ブラドさんが処刑されかねない。下手したら自殺扱いの変死体で発見されるかも……」

「あれ……その場合だと……ドナルドさんがバグダインの手下って事になるんじゃ……?だって、書類をネットにUPしろって言ったのは、ドナルドさんですよね?なんか違和感を感じます」

「……ひょっとしたら……ドナルド先輩はバグダインの手下なのかもしれない……選挙事務所での爆発騒ぎも……今考えればドナルド先輩が一番怪しい。俺と白真珠を容疑者から除くと……ドナルド先輩くらいしか、あの部屋を爆破できた奴がいないんだ。
爆破された部屋へ行ける通路はたった二つで、その内の一つを俺たちが使っていた訳なんだし……」

俺は思い返す。夜の通路で出会った冴えないオッサン――ドナルド先輩と白真珠とのやり取りを。

---

「分かりました!犯人はドナルドさんです!部屋をわざと爆破して犯人じゃない振りをしているんです!単独行動しているなら、アリバイって奴を証明できませんよね!たぶんっ!」

「いやいや、僕が敵側ならブラドさんはあの世へと行ってるよ?どこに寝ているのか知っているんだしね」

「お師様!考える事は全部、任せました!」

中略

「分かりました!やっぱり犯人はドナルドさんです!消去法で考えました!」

「白ちゃん……僕が自作自演で部屋を爆破なんて……すると思うのかい?それにほら――」

ドナルド先輩はゆっくりと言葉をつづけた。

「僕にはこんなアホな爆破事件を起こす動機がないじゃないか」
-----

……ををっ!?白真珠が真犯人を見事に当てていたっ!?よく考えたらドナルド先輩の行動が怪しすぎるぞっ!暗い笑みを浮かべていたし、声も冷めていた事が多々あった。
ガチでドナルド先輩が今回の黒幕の一人かもしれない……。

「いや、待てよ……だがこれだと不自然さが残る……ドナルド先輩はブラドさんを殺そうと思えば、何時でも殺せた訳なんだし……いや、自分が罪を被りたくないから、遠回りな方法を選んだのか?」

「次あった時、骨を折らないと駄目って事ですね!わかります!改心するまで指を1本1本折りましょう!お師様の先輩だから、念入りに殴って語り合って、正義の心に目覚めてもらおうと思います!」

白真珠が魔氷剣を掲げた。どうやら骨を折るを通り越して、凍らせる気満々のようだ。これでドナルド先輩が冤罪だったら笑い事では済まないが、先輩が犯人の可能性が高すぎて弁護できない……。

「と、とりあえず状況を確かめるために、さっさと悪徳都市に戻ろう。さっきのロシア軍は白い装甲車=ブラド一味だと考えて攻撃したんだろうし。この黒い車なら目立たないはずだ」

「あの……未だにドナルドさんと電話が通じません。ずーと回線に負荷がかかってますって言葉ばっかりです」

『安い商品を買うならカグヤ一万円ショップ!一万円ショップにようこそ!』

CMの音が、さっきから何度も何度も車内に響いた。可笑しい。悪徳都市の通信インフラって……元々、日本が担当していたはずだ。
日本という国は、21世紀初頭に大津波で3万人以上の死者を出して以来、あちらこちらに予備の通信設備を建てまくって対策している国だから、その予備が稼働しているはずなのに……なんで回線に負荷がかかって通信できないんだ?悪徳都市に結構近づいているのにありえないぞ……
あとまぁ……都市の方角から逃げていく冒険者たちの車両がいた。不思議だ。
反体車線は、災害から逃げる動物の群れのように、次々と車が通っている。どの人間も胸元に銀バッジや金バッジを付けているから、結構、高ランク……本当に嫌な予感がするぞ……。
下手したら既に悪徳都市が陥落しているかもしれん……。世界最強の米軍を撃破する方法を、魔物たちが思いついたのだろうか?
遮断装置がある限り、魔族の空間転移は防げるし、その環境下で米軍に勝つのは魔王でも無理だと思うぞ……。逆に遮断装置が壊れたら――一方的に米軍は狩られて家畜にされちゃうだろうなぁ……。

「ドナルドさんを殴りたいなぁ~。ロリの噂は75日間も相手を苦しめるって事を教えてあげますよ!」

俺、この戦いが終わったら……年齢差とか気にせずに、隣の可愛い娘に告白したいんだ……。
---

(ノ゚ω゚)(ノ゚ω゚)米軍ってどれくらい強いの?

(´・ω・`)ワープゲートの周りに二重包囲網敷いてるから、誤射で1人死ぬ間に魔物10万匹殺せそう

(ノ゚ω゚)(ノ゚ω゚)ひでぇや。



 
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