魔法少女リリカルなのはStrikerS 前衛の守護者
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第二十九話 模擬戦 スターズ
スターズの模擬戦が始まる。
ティアナの作戦を見てなのはは?
そして、アスカはどう動く?
魔法少女リリカルなのはStrikerS 前衛の守護者、始まります。
outside
ライトニングとスターズが入れ替わる。
なのはが変わろうと言ったが、フェイトはそのままスターズの模擬戦も担当すると言い張ったのだ。
「もう、しょうがないなぁ」
ちょっとだけムクレるなのは。
「そう言うなよ。フェイトはお前の身体の事を心配してんだからさ」
ヴィータが苦笑してなのはを宥める。
「分かってるけど……フェイトちゃんは、ちょっと心配性なんだよ」
「違うだろ?お前が無茶ばっかすりから心配性になったんじゃねぇか」
ヴィータのツッコミに、なのははウッと言葉を詰まらせた。
心当たりが有りまくりなので反論できない。
そこに、模擬戦を終えたライトニングメンバーが来る。
「おう、ご苦労さん」
ヴィータに迎え入れられたアスカは、バツの悪そうな顔をする。
「ドジッちゃいました」
「でも、それで課題も見えてきただろ?またビシバシ扱いてやっからな。主にシグナムが」
「ひぇ~!」
悲鳴を上げるアスカに、思わず吹き出すエリオとキャロ。ついでになのは。
「でも、いい動きしていたよ、みんな。ちゃんと訓練の成果が出ていたよ」
なのはの嬉しそうな言葉に、アスカ、エリオ、キャロはホッとした表情を浮かべた。
「さて、スターズの二人はどうかな?」
ヴィータが腕を組んで、訓練場に目を向ける。
(変な気を起こすなよ、ティアナ)
ライトニングの模擬戦は終了した。それも、好感触でだ。
にも関わらず、アスカは不安を覚えている。全てはティアナを心配しての事だ。
(ハラオウン隊長相手に、付け焼き刃の近接戦なんて通用しないぞ。いつも通りにやってくれよ)
一人、不安そうな表情をしているアスカをよそに、模擬戦は始まった。
バリアジャケットを装着したティアナとスバルは、空中に浮かぶフェイトを見た。
スバルに空戦特性があるので、今回は空中戦も視野に入れての模擬戦になる。
「準備はいいみたいだね」
「「はい!」」
フェイトの言葉に、二人は大きい声で返事をする。
スバルはいつでも動き出せるように前傾姿勢になり、ティアナもクロスミラージュを構えて臨戦態勢になる。
それを確認したなのはが合図を送った。
「それでは、模擬戦開始!」
「ウイングロード!」
なのはの合図と同時にスバルがウイングロードを発動させ、フェイトに向かって駆け出す。
それをフォローするように、ティアナが魔力弾をフェイトに放つ。
いつも通りの動きだ。
「そうだ、それでいい」
二人の動きを見ていたアスカが、ホッとしたように呟く。
「まだ始まったばかりだろ」
ヴィータが呆れるように言うが、アスカにそれを返すような余裕はない。
(下手な事するんじゃねぇぞ。今までの教導の成果を見せればいいだけなんだからさ)
不安を抱えながら、アスカは模擬戦を見守る。
ウイングロードを駆け上がったスバルが、フェイトとの間合いを測りながら接近する。
「まだ遠いね……来た!」
フェイトはティアナに目を向ける。
いくつもの魔力団を発生させたティアナが、フェイトに狙いをつける。
「クロスファイヤァァァァシュウゥゥゥゥト!!」
一斉に魔力弾がフェイトに撃ち出される。
それを見たヴィータが首を傾げた。
「なんか、キレが無いな?」
魔力弾の動きが、ティアナにしては若干遅く感じられた。
「コントロールはいいみたいだけど……」
なのはも違和感を感じたのか、心配そうな目でティアナを見つめる。
「……」
険しい表情になるアスカ。
(疲れか、仕掛けか。どっちだ?)
胸騒ぎがする。
アスカは何とも言い難い、気分の悪さを覚えていた。
フェイトは絡みつくように迫る魔力弾を引き離すように速度を上げた。
そのフェイトの前に、青色の魔力道が現れる。
その先から、スバルがリボルバーナックルを構えて突進してきた。
(味方を巻き込まない為に、スバルは幻影……?いや、実体!)
「うおりゃあぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
高速回転したリボルバーナックルがフェイトを襲う!
「危ない!」
フェイトは咄嗟にバリアを張ってスバルの攻撃を防ぐ。同時に振り返って魔力弾をバルディッシュで叩き落とした。
スバルが一旦離れる。
スバルが無事だったのでフェイトは安堵の表情を浮かべた。が、すぐに引き締まった顔になる。
「スバル、今のは危険だよ!味方の攻撃に巻き込まれるよ!」
「すみません!でも、ちゃんと防ぎますから!」
スバルが謝りながら離れて行く。
「まったく、危ねぇな!」
スバルの危険な行動に、ヴィータが声を荒げる。
「本当だね。今のはちょっと減点かな」
なのはも、残念そうに呟く。
なのははまだ気づいてない。スバルとティアナが、この先さらに危険な事をしようとしている事に。
「スバルさんは何であんな軌道をとったんでしょうか?アスカさん……アスカさん?」
返事がないので、エリオが隣のアスカを見る。
が、そこには誰もいなかった。
「あれ?キャロ、アスカさんがどこ行ったか知らない?」
「え?あれ?居ない?」
キャロも、エリオに言われて初めてアスカが居ない事に気づいた。
アスカside
あのバカ野郎が!
ハラオウン隊長相手に近接戦を挑む気だ!それも、期を見てティアナが決めるつもりだな!
オレは見学していたビルの階段を駆け下りていた。
「やめろ、ティアナ!それは強さじゃない!」
ハラオウン隊長相手に近接戦で一本取れれば、周りが認めてくれるとでも思っているのか?
その結果を出す為に、今までの自分を捨てるのか?何の為の精密射撃なんだ?
いや、何の為に高町隊長の教導を受けていたんだ!
「違うんだよ、ティアナ!今のお前には、まだ必要じゃないんだ!」
止めないと、あいつらを止めないと!
outside
スバルと打ち合っていたフェイトは、周囲に気を配る。
(ティアナがいない。どこ?)
フェイトの視界にティアナは見あたらない。
本来であれば、スバルを援護するべきなのに、今は一対一の状況になっている。
そのスバルも、間合いを詰めても防戦一方を決め込んで、アスカのような戦い方をしている。
普段のスバルの良さが出ていない。
「なにやってんだ、あいつら?」
二人の動きに、ヴィータが困惑する。
「どうしちゃったのかな?スバル、ティアナ」
なのはの表情が、悲しそうに曇る。
「!」
フェイトは視界の隅に光る物を捉えた。ティアナだった。
遠い位置からクロスミラージュを構えている。
そのクロスミラージュの先に、光が集まっているのが確認できた。
「砲撃?ティアナが?」
驚くフェイト。一瞬だが隙ができる。
『特訓成果、クロスシフトC。行くわよ、スバル!』
「おう!」
その隙を突く。
スバルはカードリッジを一発消費し、ローラーでフェイトに突撃する。
「うおぉぉぉぉりゃあぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
魔力により強化されたナックルがフェイトに突き出される。
「くっ!」
ガッ!
バリアでナックルを防ぐフェイトだったが、スバルは強引に押し込んでくる。
ガガガガガガガッ!
お互いの魔力が弾け、衝撃が周囲に響く。
最初は押していたスバルだったが、徐々にフェイトに押し戻されている。
「ティ、ティア!」
歯を食いしばり、フェイトの圧力に耐えるスバル。
スバルを押し込みながらも、フェイトはティアナを警戒していた。
(どのタイミングで砲撃を撃つ?まさかスバル諸共って事はないと思うけど……え?)
不意に、ティアナの姿がゆらいで消えた。
幻影!
「本物は?」
フェイトは周囲を素早く見渡す。
すぐにウイングロードを走るティアナを捉えた。
手にするクロスミラージュの先端から、オレンジ色の魔力刃が突き出ているのが見える。
「バリアを切り裂いて、フィールドを突き抜ける!」
ループ状になっているウイングロードを一気に駆け上がったティアナは、頂点からフェイトめがけて飛び降りた!
「一撃必殺!」
スバルがフェイトを抑え、ティアナが頭上から攻撃を仕掛ける!
「でぇあぁぁぁぁぁぁ!」
「やめろおぉぉぉぉぉ!」
バサッ
幻影のティアナが消えた時、ヴィータは、なのはが手にしたファイルを落とした事に気づいた。
「どう……」
どうした、と聞こうとしたヴィータは、なのはが悲しそう顔でバリアジャケットを身につけているのを目にし、言葉を失った。
なのはは何も言わず、模擬戦が行われている方へ向かって飛んで行った。
アスカside
オレはビルを駆け下りて、模擬戦が行われている地点に向かって走り出した。
あそこまでバカとは思わなかった!
オレ魔力のは、あと一回発動できるかどうかって所か。
何とかアイツ等を止めよう目を向けると、ハラオウン隊長とスバルが鍔迫り合いをしているのが見える。
ティアナは……いた!
ループ状になっているウイングロードを駆け上がっている。
ん?クロスミラージュの先から何か……魔力刃か!本気でやるつもりかよ!
そう思っていたら、ティアナがウイングロードから飛び降りた!
下にはスバルに抑えられたハラオウン隊長がいる。
フラッシュムーブじゃ間に合わない!
迷っている間はなかった。
オレは、今まで一度も成功した事のない最速魔法を発動させた。
「ソニックムーブ!」
outside
フェイトはスバルを押さえつけながらティアナの動きを目で追っていた。
ループ状のウイングロードを駆け上がるティアナ。クロスミラージュの先にある魔力刃が確認できる。
(だとすると、バリアを斬り裂いて、捨て身の一撃必殺…そんなの、教えてないよね…)
フェイトも、なのはのように悲しそうな表情になる。
(スバルを押さえつけて、バルディッシュでティアナを……え?)
「やめろおぉぉぉぉぉ!」
「きゃっ!」
反撃プランを練り上げた瞬間、フェイトは第三者の圧力に弾き飛ばされた。
それは、まさにティアナが斬りかかる瞬間であった。
飛び散る血の滴が、スバルの頬にかかった。
それと同時に、
「があぁぁぁぁぁ!!!」
獣の咆哮のような叫び声が周囲の空間を揺らした。
「な…っ!」
ティアナは、自らの魔力刃が捉えた人物と結果を見て絶句した。
スバルのナックルを受け止め、ティアナの魔力刃を右腕で貫通させて防いでいるのはアスカだった。
右腕を貫いた魔力刃から、血が滴り落ちる。
「あ…あぁ…」
ウイングロードに着地したティアナは、それを見て叫びそうになる。
スバルは、あまりの事にパニックを起こして言葉を失っている。
「ブ、ブレードリリース!」
平常心を失ったティアナが魔力刃を収めるが、それが悪かった。
魔力刃がせき止めていた血が、噴水のように噴き出してきてティアナのバリアジャケットを赤く染め上げた。
「あ…あぁぁぁぁぁぁ!」
ティアナは返り血から逃れるように、一本向かいのウイングロードにバックステップで飛び移る。
「な、な……何やってんのよ!アンタは!」
ティアナが叫ぶ。
フェイトに対しての作戦。それがなんでアスカに…
(やべぇ…でかい血管やっちまったか?血が止まらねぇ)
アスカは傷を見た。尋常じゃないくらいに出血している。
ウイングロードがアスカの血で染まって行く。
アスカは左手を右脇に差し込んで圧迫した。
腕に繋がる血管は必ず脇を通る。だから、左手で血管を圧迫してやれば出血は治まる。
短期間なら、止血効果を得られるのだ。
止血を終えたアスカがティアナを睨む。
「何をやってるだぁ?それはこっちのセリフだ!何をしている、ティアナ!」
血塗れの右腕をダラリと下げてアスカは怒鳴った。
「これのどこが今までの教導の成果だ?高町隊長はこんな事は教えてない筈だぞ!何を考えている!」
厳しい言葉がティアナに突き刺さる。何も反論できず、ティアナは俯いてしまう。
スバルもフェイトも、口を挟む事ができないくらい、アスカは激怒していた。
「オレ達は同じ方向を見ていたんじゃないのか?みんなで支え合って、一緒に強くなって、誰かの役に立つって、そう思ってたんじゃないのかよ!なに一人で、どこに進もうとしてるんだ!」
「……」
「答えろ、ティアナ!全部一人で決めて、一人で進むって言うつもりか?スバルを巻き込んでおいて、そんな事は言わせねぇぞ!」
「ア、アスカ!私は…」
「お前は黙ってろ!」
間に入ろうとしたスバルを一喝するアスカ。
アスカがここまで怒りを露わにしたのは、六課に来て初めての事だった。
その剣幕にスバルはたじろいでしまう。
「兄貴の夢を引き継いで執務官になるのが目的だったよな?だから力が欲しかったか?」
ピクッ
”兄貴”という言葉に反応したティアナが顔を上げてアスカを見る。
その目は、ひどく動揺している。
「ふざけんな!お前の兄貴がどんなヤツかなんて知らねぇが、今のお前を見て誉めるとでも思ったか!」
「な、何を…」
「無茶な練習して身体を痛めつけて、本番で教導に外れた事をして、そんなのを喜ぶ兄貴だったのかよ?違うだろ!」
「や、やめ…」
「結果を出せばいいって思ったんだろ?ハラオウン隊長から近接戦で一本取れれば、誰もがお前を認めてくれるって思ったんだろ!」
「ち、ちが…」
「誰も認めないさ、そんな事をしたってな!答えろ、ティアナ。何の為にこんな事をした」
「………」
ティアナは答える事ができなかった。
激情に駆られたアスカは容赦をしなかった。
疑問であった原因をティアナにぶつけてしまったのだ。
「劣等感か?」
「!」
劣等感。その言葉にティアナの目がつり上がる。
「六課に来て、隊長達は歴戦の勇者。フォワードも、レアスキルや才能の溢れた連中ばかりだ。劣等感から焦りが生まれた。違うか?」
「そんな事、ない…」
ティアナが口を開く。はっきりとした口調だったが、その響きは暗いものだった。
「違わないな。お前は間違いなく焦ってたんだよ。それを悟られまいと装っていたけど、アグスタでそれがバレた」
「!!」
「そこで結果を出そうとして焦った、そして失敗した。挽回しようと訓練に打ち込もうとした。でも、お前は以前から高町隊長の訓練に不満を持っていた」
「!!!」
ティアナの目が大きく見開く。
「基礎と基本の繰り返しの訓練に意味を見いだせなくなっていたんだろ?そして、もっと分かりやすい強さを求めた。今までの精密射撃じゃなく、結果の分かりやすい近接戦をだ。自分の良い所を捨てて、付け焼き刃の武器を手にしたんだよ、お前は!」
「…さい……」
ティアナが何かを呟いた。だが、それは誰にも聞き取れなかった。
「お前、本当に高町隊長の教導を受けて何も感じなかったのかよ!」
「…るさい……」
「どれだけ隊長がオレ達の為に頑張ってくれてるか、考えた事ないのか?お前が一番長く高町隊長の訓練を受けている…」
「うるさい!」
ティアナがアスカの声を遮るように叫び、クロスミラージュを向けた。
「ティ、ティア!ダメ!」
スバルが悲鳴を上げる。
「うるさい!うるさい!うるさい!うるさい!うるさい!うるさい!」
クロスミラージュに魔力が集まり、先端に光球が形成される。
「アンタに何が分かる!アタシは強くならなくちゃいけない!もう誰も傷つけないように!守れるように!」
「…よく見ろ、ティアナ・ランスター」
感情を爆発させたティアナに対し、アスカの声は冷静…いや、冷たかった。
「アグスタの時、誤射した時の結果。そして、今お前がやった事の結果がこれだ。二度も同じ過ちをして、それか?」
「だ、黙れ!」
「魔力刃に、いまクロスミラージュでチャージしている魔法。それがお前の欲しかった物か?違うだろ?」
「黙れと言ってる!」
「今の自分の行動が正しいと言えるか?胸張って兄貴に言えるのか?」
「いいかげんに…」
クロスミラージュに集まった魔力が膨れ上がる。今のティアナに冷静さは無い。
「そんな事をしても誰もお前を認めはしねぇぞ!いい加減に目ぇ覚ましやがれ!」
「黙れえぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
クロスミラージュの照準がアスカを捉えようとする。
だが、クロスミラージュが捉えたのは、白いバリアジャケット…なのはだった。
アスカを守るように立ち、ティアナを静かに見つめている。
「クロスミラージュを下ろしなさい、ティアナ」
いつもの、優しい物言いではない。冷たい声だ。
「あ…あぁ…」
怯えたように、一歩後ずさるティアナ。
「隊長、待ってください!」
アスカがなのはに詰め寄る。まだ、ティアナとの話が終わってないと訴える。
「アスカ君、もういいよ。下がって」
「隊長!」
「下がりなさい」
ゾクリ
静かな口調であったにもかかわらず、アスカの背筋に冷たい物が走った。
(こ、これがオーバーS魔導師の…高町なのはの本気か…)
なのはに気圧され、アスカはそれ以上何も言えなくなった。
「何でかな?何で教えた通りにやってくれないの?ティアナ、私の教導って、そんなに間違っていたかな?」
あくまで静かに、だが、それが逆に圧力となってティアナを飲み込む。
スバルもその雰囲気に飲まれて動けない。
「練習の時には言う事を聞いているフリをして、本番でこんな危険な事をやるなんて……練習の意味、無いじゃない」
なのはの言葉、それがティアナに重くのしかかる。
カタカタと震える手で、それでもクロスミラージュを下ろさないティアナ。
魔力を保持したまま、クロスミラージュをなのはに突きつけている。
「ちゃんと、練習通りにやろうよ」
「それじゃ足りないんです!」
なのはが言い終わらないうちに、ティアナが叫んだ。
「アタシには何も無い!魔力も!才能も!支えてくれる家族も!何もないアタシから、強くなろうって言う思いまで捨てろって言うんですか!」
ティアナが泣き叫ぶ。それと同時にクロスミラージュの魔力は膨れ上がった。
「少し、頭冷やそうか……」
なのはの足元に魔法陣が浮かび上がる。
「え?」
なのはが攻撃準備を始めた事に驚くスバル。
(砲撃?)
アスカは、どこか冷静に現状を見ていた。
(いや、違う?砲撃じゃない…?)
なのはは右手の人差し指で十字を切る。
「クロスファイヤー…」
「うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
ティアナが魔法を完成させた。
「ファントムブレ…」
「シュート」
ティアナが放つよりも早く、はのはが撃つ。
「きゃあぁぁあっぁぁ!」
なのはのクロスファイヤーがティアナを撃ちのめした。
「ティア!」
スバルがティアナの元に駆け出そうとするが、
バン!
「え、バインド?」
白い魔力光の捕縛魔法、バインドがスバルを拘束する。
「よく見てろ。今のお前達に必要な事だ」
アスカだった。
「アスカ?離して!バインドを解いて!」
スバルが暴れるが、バインドはビクともしない。
その様子を一瞥したなのはは、再びティアナに目を向ける。
「……!」
撃ち抜かれたティアナは、それでも身体を引き起こして立ち上がる。
「クロスファイヤー…シュート」
なのはが再び十字を切る。
「なのはさん!」
スバルが悲痛な叫びを声を上げるが、なのはは再び魔力弾を撃った。
これがダメ出しとなり、ティアナは弾き飛ばされ、ウイングロードに叩きつけられる。もう意識はない。
「ティアァァァァ!」
目の前で起きた事がスバルには信じられなかった。
なのはがティアナを撃ちのめす。
スバルにとって見たくない、信じられない光景。
「ティア!ティ…」
スバルが走りだそうとしたので、アスカはバインドを解いた。
ティアナに駆け寄るスバル。その時、後ろからなのはの声がした。
「模擬戦はここまで。今日は二人とも撃墜されて終了」
冷たい声。今までスバルが聞いた事のない声だった。
涙を流し、唇を噛みしめるスバル。やり場のない怒りが湧き出てくる。
分かっている。勝手な事をしたのは自分たちだ。
だが、ここまでする必要があるのか?
ティアナがどれだけ苦しんで、どれだけ頑張ってきたか。
その全てを否定された。
スバルがなのはの方を睨む。だが、そこにいたのは、血塗れのアスカだった。
なのはとの間に割り込むように立っている。スバルの苛立ちの全てがアスカにぶつけられる。
「……」
アスカは何も言わず、スバルの視線を受け止めた。
暫し睨み合うアスカとスバル。だが、アスカはすぐに背を向けた。
「アスカ君はすぐに医務室に行くように」
なのははそう言い、先を歩いて行った。
「アスカ、早く行かないと!」
それまで入る事のできなかったフェイトがアスカに近寄った。
アスカはフェイトに促され、なのはを追うように歩き出す。
「…………ん?」
アスカはその時、はっきり見た。
なのはの肩が小さく震えているのを。
(泣いてる…隊長…)
後書き
いつも読んでいただき、誠にありがたく思い、大変感謝しています。
下手な文章で恐縮ですが、続きを書けるよう努力していきたいと思います。
さて今回、魔王降臨編でしたが、いかがだったでしょうか?
一応、なのはは苦しみながらも撃った、と言う事を表現したかったんですけど…
あと、ティアナの心の内はきっとこうなっだろうなと思って、「アタシには何も無い…」のくだりを入れてみました。
認めてくれない怒りをなのはにぶつけようとしたスバルの視線を、受け止める事によって全ての負の感情を受け入れようとしたアスカ。
今回は結構な修羅場だったような気がします。胃が痛いです…
この後、シグナムさんがティアナをぶっ飛ばすイベントも残ってるんですよね…
マジ、書きたくないっす。
まあ、次はオリジナル回で、アスカの正体がいよいよハッキリします。
彼は何者なのか?
まあバレてると思いますけど、そこはスルーでお願いします。
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