ナンパは危険
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第二章
「その分貰っててな」
「金の心配ないのかよ」
「そうなんだな」
「じゃあユンケル飲んでちょっと行って来る」
それで体力を整えてだというのだ。
「それじゃあな」
「ああ、じゃあ武勇伝聞かせてくれ」
「楽しみにしてるな」
こうした話をしてだ。そのうえでだった。
彼は大学の講義が終わると街に出た。そして実際にだ。
手当たり次第に声をかけてだ。忽ちのうちに四人を陥落させた。
相手は女子高生にバツイチ、それに仕事帰りのOLに大学生だった。
四人をゲットしてご満悦のまま居酒屋に入った。最後の一戦に備えての腹ごしらえだった。
居酒屋の和風のそのカウンターに座りビールを冷奴を頼む。その隣にだ。
彼は見た。そこに凄い美人がいた。
睫毛は長く二重の切れ長の垂れ目で右目、彼が見る方向のそこに泣き黒子があった。唇は紅で大きく鼻立ちは彫刻の様に整っている。
髪は黒く波だっていて腰まである。実に艶やかな感じだ。
紫のワンピースは丈は長いが背中が出ている。その背中も見事だ。
そこまで見た瞬間に決めた。こう。
(五人目だよ)
こう決めるとすぐにだった。彼はその隣の美人に声をかけた。
「あの」
「はい」
声もだった。実に艶やかな感じだった。
「何でしょうか」
「今晩、いえ今から」
女の子への声の掛け方はわかっていた。それでだ。
こう声を掛ける。自然に。
「何処かで遊びませんか」
「何処か、ですか」
「はい、何処かで」
「では」
美人の方から彼に言ってきた。
「いい場所を知っています」
「いい場所とは」
「たまたま今は居酒屋にいますが」
だが、だというのだ。
「それでもです。ここで少しご一緒してから」
そしてだというのだ。
「紹介したい場所がありまして」
「といいますと」
「楽しい場所です」
美人は微笑んでこう小泉に述べた。
「一度入られればきっと離れられなくなります」
「一度入ればですか」
「そうです。必ず」
そうなるとだ。美人は思わせぶりな笑みで小泉に言っていく。そうしてだった。
小泉も美人の誘いに何かミステリアスな快楽を感じてだ。美人のそれに乗ることにした。
それでまずは居酒屋で二人で飲んだ。それからだった。
美人の案内を受けて店を出て夜の街を歩く。その中でだ。
彼は美人にだ、こんなことを話した。
「悪いですが俺はしないことがあります」
「しないこととは」
「喧嘩とドラッグです」
「暴力は振るわないですか」
「そうしたことは好きじゃないんです」
これは本当のことだ。彼は確かに女好きだが暴力は嫌いなのだ。間違っても女性に手をあげるようなことはしない。だから女性から人気があるのだ。
「それにドラッグも」
「されないですか」
「あれは偽物の快楽ですよ」
こう言い切るのだった。ドラッグについては。
「そんなのをしてもですよ」
「何にもならないというのですね」
「はい、とても」
これも彼のポリシーだった。快楽主義者だがそうした快楽は否定しているのだ。
「それで若しもですよ」
「美人局やボッタクリの類ですね」
「これでも逃げ足には自信がありますから」
相手の女性の男が部屋に駆け込んできたり怪しいボッタクリの店に入ってしまったことも幾度もある。女遊びをしていては付きもののことだ。
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