トップアイドル
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第四章
だがそれでもだとだ。彼等は言うのだった。それぞれの注文した料理を食べながら。
「けれどな。そこまでの娘か?」
「御前凄いご執心だけれどな」
「幾ら何でも凄過ぎるだろ」
「夢中になってるだろ」
「奇麗だからさ」
それ故にだとだ。剛士は返す。
「それに可愛いし性格だって」
「だからな。そういうの全部込みでな」
「それで俺達聞きたいんだよ」
「それでいいか?」
クラスメイト達はのろける、顔にもそれが見事なまでに出ている剛士に言った。とにかく彼ののろけは傍から見ても相当と言ってもまだ足りないものだった。
その彼にだ。彼等はさらに言った。
「で、何であの娘なんだよ」
「これまでどんなアイドルにも学校の娘にも全然興味見せなかったのにな」
「何であの娘にそんなに夢中になるんだよ」
「っていうかなれるんだよ」
「あれなんだよ」
今度は他人丼を箸に取りだ。口の中で牛肉と卵に御飯、それに加えて葱の味を噛み締めながら味わってだ。そのうえで答える剛士だった。
「はっきり言うな。あの娘ってな」
「ああ、伊豆さんな。何なんだよ」
「御前にとって何なんだよ」
「ちょっと言ってみてくれよ」
「タイプなんだよ」
実にはっきりとだ。剛士はそれだと答えた。
「あの娘って俺のタイプなんだよ。言うならな」
「ああ、何だよ」
「言うなら何だよ」
「何だってんだよ、あの娘は」
「アイドルなんだよ」
文字通りだ。まさにそれだというのだ。
「トップアイドルなんだよ、俺にとっちゃな」
「おいおい、言い切ったな」
「まさにトップアイドルかよ」
「それだってのかよ」
「そうだよ。それなんだよ」
まさにそれだとだ。言い切る彼だった。そうしてだ。
またうどんを食べながらだ。こうも言った。
「そういうことなんだよ。それでな」
「ああ、今度は何だよ」
「のろけてばかりだな、ったくよ」
「こんなにのろける奴なんだな」
「これからも。ずっとな」
決意だった。強烈にのろけながらの。
「俺はあの娘にアタックするからな」
「やれやれだな。こりゃこれからもだな」
「こいつののろけ聞かされてアタック見るんだな」
「妬かされるのかよ、何かと」
「迷惑な話だよ」
クラスメイト達は彼ののろけた決意を聞いてだ。そうしてだ。
それぞれの箸を止めてそれからだ。苦笑いと共にこう言ったのだった。
「まあ。人の恋路は邪魔しないからな」
「あの娘が御前にとってのトップアイドルならな」
「それならそれでいいからな」
「頑張って恋愛楽しんでくれよ」
「勿論だよ。今度はカラオケだって行きたいしな」
カラオケもだというのだ。一緒に行きたいというのだ。
「それからテーマパークに映画館に商店街に球場にな」
「ああ、あの娘何処ファンだ?」
「巨人じゃないよな」
「まさかとは思うけれどな」
「中日らしいな」
そこだというのだ。
「まあ俺は阪神だけれどそれはどうでもいいさ」
「巨人じゃないならいいな」
「それで合格だな」
彼等もそれで納得した。巨人は良識ある日本国民共通の敵だからだ。
このことを聞いてだ。彼等も納得して剛士に言った。
「じゃあ阪神中日戦も行くんだな」
「龍虎の戦いもな。二人でか」
「観に行くんだな」
「外野席を考えてるさ」
観る場所も既にだ。彼は考えていた。
「そこで観るさ。お互い勝っても恨みっこなしだよ」
「じゃあそっちも楽しんでくれよ。それじゃあな」
「甲子園でもな」
彼等が住んでいるのは神戸の八条町だ。だから甲子園もすぐなのだ。
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