そこに気付いても
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第一章
そこに気付いても
声だった。彼、弓削浩一は声優マニアだった。それでいつも大学でもだ。
声優の雑誌を開いてチェックしていた。とにかく丹念にチェックしてそのうえで友人達に言っていた。
「で、このアニメで出て来たな」
「ああ、竹発さんかよ」
「竹発綾那さんだな」
「声がいいしな。しかもルックスもいいだろ」
声優も、とりわけ女性の声優はルックスも見られる。実際に舞台に立つことも多いせいだがそれを差し引いてもグラビア等になることが増えてそうしたものが見られる様になっていたのだ。
だからだ。浩一も今言うのだった。
「小柄で童顔でしかもな」
「胸、大きいよな」
「結構以上にな」
「声優さんは胸小さい人多いけれどな」
そこまでチェックしている浩一だった。何故かそうした傾向がある様だ。
「それでもな。この人胸もあるしな」
「ああ、これからも伸びるか」
「声優業界のアイドルとして邁進していくんだな」
「そうなるな。この人はな」
こうだ。自分の席で声優雑誌を広げてそのうえで友人達に話すのだった。彼は他の声優さん、殆どは女性の声優ばかりをチェックしていた。アニメもかなり観ていた。
アニメはまさに声優の仕事の基幹だ。何しろ声優という職業が世に知られる様になったのは人気アニメの人気キャラの声は誰かという関心からはじまったからだ。
それで彼はアニメも観る。そのうえでアニメも声優のことも楽しんでいた。
そしてそれはアニメに限らずだ。さらにだった。
「ゲームもいいよな」
「ああ、スパロボとかだよな」
「あれもいいよな」
「ほら、髪矢さんな」
声優業界の大御所と言っていいベテラン声優である。数多くのアニメに出て来ている。
「あの人の叫びがいいだろ」
浩一はベテラン声優もマークしていた。そうした意味で本物のマニアだった。
だからこそだ。その髪矢朗についても言うのだった。
「必殺技の時な」
「ああ、あれは痺れるな」
「凄くいい絶叫だよな」
「あの人しかできないよな」
「あの人みたいな人がいてくれてるからなんだよ」
浩一は力説した。そのベテラン声優に関して。
「今の声優業界があるんだよ」
「そうだよな。今も現役だしな」
「あの世紀末アニメの演技なんか今聴いてもいいよな」
「御前はもう死んでいる、ってな」
胸に七つの傷があるそのキャラクターについての話にもなった。
「あれ一回聞いたら忘れられないよな」
「本当に凄い演技だよな
友人達も笑顔でこうした話をする。アニメだけでなくゲームの話題も。そしてそのゲームの話題の中でだ。
友人の一人がだ。こう浩一に言ってきたのだった。
「なあ御前この前誕生日だったよな」
「ああ、そうだけれどな」
「もう十九か」
「それがどうしたんだよ」
「いや、十八からだけれどな。高校生じゃまだやばくてもな」
それでもだとだ。彼は浩一に言っていく。
「大学生で十九だともう大丈夫だろ」
「何が大丈夫なんだよ」
「だからな。エロゲだよ」
このジャンルのゲームの話題をするのだった。
「エロゲな。御前それはやらないのかよ」
「ああ、そういえば最近エロゲ原作のゲーム増えてるよな」
彼に言われてだ。浩一もこのことに気付いた。
「エロゲから一般のゲームになったりな」
「そっちはしないのかよ」
「パソコンは持ってるけれどな」
まずはこう返した浩一だった。
「けれど。言われてみればな」
「そうか。エロゲはしないんだな」
「アイドルの画像とか二次画像はチェックしてるぜ」
こうしたところは歳相応だった。浩一もやはり男だ。
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