| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

世界をめぐる、銀白の翼

作者:BTOKIJIN
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第二章 Lost Heros
  銀白VS薄緑



「まだ逃げるのか・・・・!!」


理樹が追う。
眼前十メートルほどの位置には青龍が計四本の剣を抱えて飛んでいる。

クラウドは来ない。どうやら足止めを食らったようだ。



「どこに・・・まさか・・・」



飛んでいくうちに、理樹はある推測を立てる。
このままいくのはまずいのではないか?

もしかしたらおびき寄せられているのかもしれない・・・・・
この先に罠があったら・・・・


最硬の翼人として、いかなる攻撃も防ぎきる自信はあるし、実際に彼はそれだけの力を有している。

だが、なんといっても相手はあの蒔風だ。
隙を突く、背後から一撃、搦め手、非道、卑怯、なんでも使ってくるだろう。


そんな相手と、理樹はなかなか戦ったことがない。
否、そもそもがただの高校生だった彼に、そんな機会などなかったのだが・・・・



それでも、一癖も二癖もある仲間たちを遊んでいるうちに彼にも騙しなどの耐性はついていたし、この戦いの中で蒔風の手法もだんだんとわかってきた。

その仲間たちはいない、蒔風は敵だ。
「友情」の名を冠する翼人は、すべてを失ってしまうのか・・・・・


そうしていると、青龍が一気に急降下して地表に向かって下りて行った。
それを追って行く理樹。



雲に突っ込み、そこから飛び出したその瞬間



「獄炎弾!!」

「わ!?!?」



ドォウ!!!



地表から離れているにもかかわらず、蒔風の声が聞こえ、理樹めがけてバスケットボールほどの大きさをした球体が飛んできた。
それをスレスレで回避、一気に加速して急降下する理樹の後ろで、獄炎弾が一気に膨れて爆発した。


それは巨大な火球となって雲を飲み込み、その肥大によって理樹を飲み込もうとするが、それよりも早く理樹はその範囲から脱し、地面に降り立つ。




「チ・・・・流石に避けるか」

「舜!!」



そうして降りてきた理樹の前に、蒔風がいた。
すでに四本の剣は鞘に納められ、その右手に青龍刀が握られている。


が、その体はどう見ても満身創痍だ。


もっとも目につくのは、左腕。
力なくだらりと下がり、持ち上げたらそれだけで千切れてしまうのではないかというほどに力ない。

そして良く目を凝らすと、外見こそ傷は目立たないが、体内部に蓄積されたダメージはかなりのもののようだ。
ゴホゴホと咳込んでもいるようだから、内臓へのダメージは確実にある。


いったい、ここまで誰が戦っていたのか。
そして、やられてしまったのか・・・・



「覚悟しろ、理樹・・・・お前を倒すぞ」

「・・・・そんな状態でよくも言えるね・・・僕を舐めすぎていない?」



だが、そんな満身創痍でも、彼は一切臆することがない。

死を恐れない彼にとって、「死にそうである」などというのは一切戦闘に躊躇いを持たせない。
せいぜいが「痛くて動きにくい」くらいの認識だ。


そんな男を直視し、次第に気分が悪くなって理樹が視線を逸らす。



ゴガッ!!!



その瞬間、理樹の側頭部を蒔風の蹴りが襲った。


しかし、そこにはバリアが張られ、理樹には一切届いていない。



「よそ見したと思った?そんな簡単にやれると思った?」

「・・・・少しは思ってたな」


「バカにするな!!!」




ドォウ!!!




理樹の翼が大きく開かれ、そこから発せられるオーラで蒔風の体が吹き飛んだ。
地面に背中を打ち、肺から空気が吐き出される。


「かッハ・・・・・て・・・めえは・・・・」

「?」


「てめえは・・・・あっさり倒すって決めてんだよ!!!」



ドンッ!!!



青龍刀では無理だと悟ったのか鞘に納め、蒔風の右手に光が集まり、それが腕の細さにまで圧縮、光速を以って打ち出された。




絶光尖





貫通力と瞬間的な速度を誇り持つこの絶光の力を、さらに細めて貫くことに特化した「尖」にして打ち出す、絶光系最高の攻撃。


それを蒔風が理樹に向かって撃ち放った。



しかし




バチィン!!と、「弾く」という事をまさに音で表したかのような音とともに、理樹のバリアでそれは難なく防がれてしまった。

その事実に、蒔風が流石に冷や汗を流す。
最高攻撃力を誇る雷旺砲も防がれ、最突力を持つ絶光尖も効かない。


いま、改めてこの翼人の強さを感じた。
こいつに効く攻撃なんてものがあるのだろうか?


「それだけ?だったら・・・・・」

「ッッ!!こいやァ!!」

「こっちから行くよ!!!」



ザゴン!と理樹がバリアを柱状にして自分の背中から地面に突き出し、その反動で一気に飛び出してくる。



そして、蒔風の懐に一瞬で踏み込んできた彼は、バリアを拳にまとわせ、それだけでなくそれで巨大な拳を作って蒔風を殴りつけた。


その拳の大きさは通常の拳の五倍ほどもあるか。
バリアを自由に組み上げれば、このようなナックルを作り出すこともでき、それがこれだけの硬さを持っているのならば十分に脅威となりうる最たる例だ。


が、それを蒔風は右掌で受け、受けて触れた瞬間に掌を下げながら舞うようにするりと回して後ろに流す。
そして、カウンターでそのまま右拳を理樹の顔面に正面から突き出した。


しかし、それも阻まれて理樹が今度は蹴りを放ってきて腹にめり込む。


「ぐぼっ・・・・っは!!」


蒔風が腹を抱えながら、地面を転がって呻いた。


全く効かない。
こちらの攻撃は防がれる。


これが、彼が「賢者」と分類した防御系の翼人。


その頂点に立つ者だ。



しかし、だからと言って




蒔風が諦める理由にはならない。




「オオオオオオオ!!風斬車!!!」


天地陰陽を組み上げて、蒔風が風斬車で削りかかる。
手を振り、その遠心力で回転する風斬車が理樹のバリアと接触した瞬間、まるでフラッシュを焚いたかのようなスパークが起き、二人の目の前を白で覆い尽くした。


「う・・わ・・・・」

「オオオオオオ!!!リャァアアアアアア!!!!」



その光に目を細めてしまった理樹に、蒔風が咆哮を上げて蹴りを放つ。
全く見えていなかった理樹の腹部に蒔風のつま先が鋭く突き刺さり、理樹の内臓が圧迫された。

その体が転がって、膝立ちに立ちあがった。


「ゴホゴホっ!!蹴り一発で・・・これ?」

「さぁて・・・はぁ・・・・はぁ・・・・視界を奪えば・・・どうにかなることは証明されたし・・・こんな感じで行くから・・・・フーッ・・・・・ハー・・・宜しくゥァ!!!!」



そう叫んで蒔風が再び風斬車を振って理樹へと走る。


それに対し、バリアを張らず理樹は回避で対処した。
あれに対してバリアでは逆効果だ。

無論、全身をバリアで覆えばいいのだろうが、それでは身動きが取れない。
そうなれば滅多打ちにされるのみ。こうして一撃ずつだったりなら受け切る自信はあるが、滅多打ち状態が継続されてバリアが破壊されないとは言い切れない。


が、受けるだけがこの翼人の強さではない。



ゴン!!!




「ウゴッ・・・・?」




バカッ!!!




「ア・・・ガッ!!」





重い鈍撃の音と、蒔風の口からそれに応じた音が漏れる。



バリアを展開する勢いで、理樹が蒔風に向かって柱状のバリアを突出させたのだ。

咄嗟の攻撃に対処するバリア。その展開速度は蒔風の拳と同程度だ。
つまり、蒔風が突っ込んでくるのに合わせてその速度で出現させれば、こちらのその速度と蒔風が突っ込んでくる速度とでのカウンター攻撃が可能となる。


強い




決して理樹からは激しい攻めをしてこない。
彼ならばこのバリアを刃状にしての攻撃もできるはずなのだが、彼はそれをしない。

攻撃に転じるのはもっともっと優位になってから。
あくまでも自分は防御に秀でた翼人だ。無茶はしない。そんなことをしてはつけ込まれて返り討ちにされるだけだ。


だから、相手が来たときにその数倍はあるカウンターを入れよう。



こちらは決して攻撃を受けてはならない。さっき蹴りの一発を受けて分かったが、理樹自身の耐久力は決して高くはないからだ。
それゆえに高い防御力なのかもしれないが、だからこそこのバリアは破られるわけにはいかない。

そして、彼はこの戦いでも学び、経験し、成長していた。
彼はかつての悲劇を、幾度も繰り返してきた虚構世界での経験で乗り越えた。

その繰り返しの記憶はない。
しかし、体にしみこんだ経験は生き残っているのだ。



彼は、何一つとして無駄にせず、取り込んでいく。

それこそ、努力の最終形態。
彼の成長率は果てしないものだった。






「チ・・・テメェ・・・いつまでも受け切れるとか思ってんじゃ・・・・!!!!」


「な・・・・・!?」

「ねェェェェェエエエえええええぞ!!!!」

「ゲふっ!?おグっ・・・・は・・・・!!」



が、それでも彼との経験の差は大きい。
彼は《the days》時代にすでにそれなりの強さを持ち、さらに世界をめぐって戦いを経てきたもの。


彼の拳がまるで蛇のようにうねり、攪乱、そして渾身の一撃を打ち放ってきたのだ。

それが理樹の腹部に命中、腹を押さえて理樹が転がる。呼吸が一瞬止まった。



「オォラァ!!!」

「ぐ・・・あああああ!!!」



と、そこにさらに蒔風の右拳が理息の顔面に放たれた。

無論、それ自体はバリアで防げる。
威力も速度も、不可能なものではないはずだ。



しかし、一瞬呼吸が止まったのが悪かったのか、ついにそのバリアに亀裂が入った。



しかも、それだけではなく、拳は半分ほどこちら側に突っ込んでまで来たのだ。


そのバリアの欠片と衝撃にとって、理樹は後ろに転がった。
さっきの声はその時のだ。


受け切れるはず、それが受け切れないかった。



それは仕方のないことだろう。攻撃に続く攻撃、しかも呼吸が途切れていた。
しかし、そうわかっていても、その事実は理樹を確実に焦らせた。



どうするどうする・・・・・



もう生半可な(それでも蒔風の攻撃のほとんどを受け切ってしまうのだが)バリアではだめだ。
しかし、それほど強固なバリアでは瞬時には出せないし、だからと言って展開しっぱなしでは動けない。



・・・・・・・・・



「そう・・・か!!!」

「何を思いついた?さあ・・・やってみろ!!!」



そうして、蒔風が理樹に駆ける。

理樹はバリアを張ったようには見えない。




だから蒔風は、狂気じみた邪悪な笑みを浮かべて、理樹に向かって右手で手刀を、その首をへし折ろうと振り下ろした。










それはゴスッ、という音とともに押しとめられた。

蒔風の手刀は間違いなく理樹に振り下ろされた。
理樹はバリアを張っていない。



かのように見えた。



しかし、理樹はしっかりとバリアを張っていた。


しかも、その強度は今までのモノと比にならないほどに硬い。




「これが・・・僕の力の最高/硬だ」

「鎧・・・だと!?」


理樹が微動だにせずにその体を動かす。

その全身を、見えないほどに薄く、それでいて最高強度のバリアで覆っていた。


「は・・・・でもそれじゃあ動けるはずが・・・・」




ドゴッ!!




「が・・・・」

「動けるよ?そういうふうにしたんだ!!」



理樹の身体が異常な速度で動いて蒔風を攻め立てる。
それに対して右腕一本ながら受けきる蒔風。

理樹自身の格闘能力はそこまで高くはない。

しかし、その腕や足を覆うバリアの硬さに、受けるたびに防御しているはずのこちらの腕が傷ついていく。


更に言うならば理樹は自分から動いていない。
理樹は自分を覆うバリアの方を動かす事で、自分の身体を動かしていた。

故に、無理な動きもできる。

そのために少し身体が痛むが、そうも言ってられない状況だ。
耐えられる許容範囲内で、全力で動く。



今や理樹に手出しできる者などいない。



この鎧こそが理樹の今の最高の力。
持てる力のすべてだ。




「さあ・・・終わらせるよ。今までの事、これからの事、全部!!」

「テメェ・・・」





蒔風が理樹を睨む。

その姿にはバリアを纏っているなど思いもよらない。


なにも見えないのだ。
それほどに薄く、体に密着させたバリア。


普通に立っているようにしか見えない。




これが、翼人。





今、立場が逆転した。




理樹が見下ろし、蒔風が見上げる。








戦いの終わりは近い。









to be continued
 
 

 
後書き

理樹、超善戦。

賢者の翼人はさすがだぜ!!!



何ひとつとして効かないバリアを纏い、一体どうすればいいのか・・・・・





ではまた次回!!!



リスト残り


長門有希
クラウド・ストライフ
海東大樹
野上良太郎
モモタロス
ウラタロス
リュウタロス
ジーク
デネブ
直枝理樹
乾巧
剣崎一真
左翔太郎
フェイト・T・ハラオウン
シグナム
ヴィータ
リィンフォースⅡ

 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧