世界をめぐる、銀白の翼
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第二章 Lost Heros
銀白VS英雄王
蒔風が携帯を開いてリストを見る。
残る人数は二十もいない。
それから例の時計を取りだし、残り時間を見る。
大体針は48分くらいか。相変わらずどういう単位で進んでいるのかも、何の時間かもわからない。
場所は荒野。
モニュメントバレーのような地形が進み、空には太陽があるくせにオーロラじみた色がついている。
しかも、荒野のような見た目のくせして一面は砂ばかり。
そう、蒔風は今、時間の中を逃げているデンライナーを追っていた。
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「逃げ切れんのかねぇ?」
「天馬、おぬし他人事のように・・・・」
「いやだってよ、俺らはこいつ相手にして倒せたからよかったけどほかのやつらはどーだかなんだぜ?」
「まあ確かに・・・今は理樹殿が朱雀を、クラウド殿が獅子を追いかけているんじゃったかの?」
「おう」
そう言って、天馬と玄武の目の前からタイタンとイフリートが消える。
現在七獣たちは、クラウドと理樹、さらにはクラウドの召喚獣から逃げていた。
当初それぞれ一人ずつ担当して逃げていたが、召喚獣が相手ならば勝機がある。
そこで近くにいた玄武と天馬が合流してこの二体を倒したのだ。
その身体が光となって、ヒビの入ったマテリアの球体へと変わり、どこか――おそらくはクラウドの元――へと飛んで行った。
「ほかの加勢に行こうかの?」
「だなー。オレァ青龍んとこ行きますわ」
「では儂は麒麟のところへ行こうか」
「白虎のガキはいいのか?」
「追いかけられることに慣れとるアイツなら大丈夫じゃろう」
「同感。じゃ、あとでな」
「うむ。健闘を」
そうして、二体が別々に飛んでいく。
主に害を及ぼさないように、その敵を砕くために。
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「見つけた・・・・・」
崖の上で、蒔風がバイクにまたがって呟く。
崖の上から荒野を、蒔風が見下ろしていた。
そこを走る時の列車。
間違いなくデンライナーだ。
このまま電車ごと吹き飛ばしてもいいが、それではいらない犠牲が出る。
オーナーやナオミ、ハナをやる必要はないのだ。
それは最後の手段だな。
そう考えながら、蒔風が崖をバイクで駆け下りていく。
砂埃がうっとうしいが、それはまあ気にするほどでもあるまい。
そうして、デンライナーの後方につける蒔風。そこから前へと追い抜いて線路を攻撃、脱線させてあぶりだす作戦だ。
まだデンライナーの後ろである蒔風が、バイクを加速させようとアクセルを捻る。
が、その瞬間。
無数の剣がデンライナーの上から蒔風に降り注ぎ、蒔風がバイクのアクセルを弱めて後退させた。
デンライナーとの距離が空き、その開いた地面に向かっていきなり宙に現れた剣がつぎつぎと射出されては刺さっていく。
その数に蒔風が思わずバイクを止め、デンライナーを見送る。
が、その列車はUターンし、蒔風の前に停車してきた。
「我自ら潰しに来てやったぞ。雑種」
「・・・ギルガメッシュ・・・・か」
呟く蒔風に、別段驚いた様子はない。
彼は最古の英雄王。その所持する宝具の中に、蒔風の所在を掴むものがあってもおかしくはない。
それに、蒔風はなぜここにきて彼が来たのかも理解していた。
おそらくは彼は無視していたのだ。
これまでのことなど、自分には関係ない。下々が勝手にやっていればよい、と。
だが、そんな彼が出てきた。その理由・・・・・
「・・・・セイバーか?」
「わかっているではないか。あの女は我の物だ。愚かな雑種どもが勝手に争い消えるのは構わん。だが・・・・」
「自分の所有物に手を出すなってか。まあそもそも、おまえはこの世界そのものが自分のものだと思ってる誇大妄想野郎だからなぁ」
「その口のきき方、王に対するものではないな」
「すまんね。俺が長~く相手した「王」はろくな奴じゃなかったもんで」
と、そこで良太郎がデンライナーから降りてきた。
例によって、イマジンに憑依されてだ。
車両の中では残されたイマジンが見守っている。
一人欠けている今、クライマックスフォームはできない。
いったい誰がついているのか。
見ると良太郎の髪は白いメッシュが入り、目は白くなっている。
ジークだ。
「何をしに来た雑種。ここは我の場。貴様ごときが出てくるのはおこがましいぞ」
「まあ何、気にするな。私は何もせぬ。世界の方から動くのだからな」
その二人に、蒔風がやれやれと頭を振る。
この高慢ちき二人を、いったいどうしてくれようかと。
(ま・・・とりあえず保険を掛けとくかね)
《ワールド!!!》
蒔風がメモリを握りしめて挿入する。
特に何を構えるわけではないが、何らかの力が付随されたのだろう。
「でさ・・・やんならやるでこいよ。時間かけたくないんだ。お前らに対する勝算はすでについている」
「なに?雑種が息がってしまったようだな。我に対する勝算だと?ふん、大方我が油断でもすると思っているのだろうが・・・・」
ゴォッ・・・・・
「そんなことはないと思えよ?」
ギルガメッシュが黄金の鎧を構え、背後に剣をいくつも浮遊させる。
王の財宝
彼の所有物であるあらゆる武器を貯蔵する異次元の扉だ。
それを撃ち放つことで彼はかつて「アーチャー」のサーヴァントとして存在していた。
《WING form》
そして隣に立つは電王ウイングフォーム。
自らを「王」だという相手に、蒔風が鼻で大きく笑って見せた。
「かかってこいよ王様ども。王への反旗は慣れている」
そうして、始まる。
バビロンからの宝具射出。
それに対して蒔風が足による畳返しで地面を撥ね上げながら走って回避する。
しかし、その武器の中にいくつか追尾機能のようなものでもついているのか、二、三本が蒔風の後を追って突っ込んできた。
それに対して風林火山で受け流し、地面に刺さったところでへし折った。
だが、そうして足を止めている間にも打ち出された剣はまたバビロンへと戻り、再び射出されていく。
永久機関だ。
この射出は終わることを知らない。
だが、蒔風は避けてばかりで一向に反撃にはうつらなかった。
ギルガメッシュは射出こそすれど、その射撃の精度は低い。
相手のいる一面を、適当に剣を掃射して力任せに薙ぎ払うのが彼の戦法だ。
圧倒的な暴力。
一方的な蹂躙。
それが彼の王たる証であり、あり方だった。
「ふむ・・・私の出番がないではないか」
「だから言ったであろう。あのような男、我一人で充分だとな」
蒔風を視界にとらえながら、隣でぼやくジークにギルガメッシュが言う。
確かに、このままならばいずれはこの男は倒れる。
だが・・・・
(我が友であったこの男がこれで終わる・・・そんなわけ、あるわけないだろうな?)
ジークにはそうは思えなかった。
いやむしろ、そう思わせることがこの男の狙いであるとしか思えないのだ。
「はっはっはっは!!どうした?その程度か!!!」
しかしギルガメッシュは一方的に相手を攻撃している事で興奮し、その事に気付いている様子はない。
慢心、傲慢、油断
それこそが彼の自信と力の源であり、同時に大きな弱点でもある。
「ッう・・・グアっ!?」
と、そこでついに蒔風が地面を転がった。
回避しきれなかった剣を、畳返しで壁にしたもののその勢いに吹き飛ばされたのだ。
そこに降り注ぐいくつもの剣。
地面を独楽のように回りながらもそれを弾き回避して行く蒔風だが、いかんせん数が多すぎる。
五体が刻まれ、血が噴き出す。
そうして右の腿と肩に剣が突き刺さり、更には左手の甲を剣が貫いて地面に縫いつけた。
「ぐぅゥゥゥウウウウウウウウウウウ・・・・!!!!!??」
「ふん。最初からそうして、雑種らしく地べたを這っていればよかったのだ」
そう言って、ギルガメッシュが後方から彼の「担う」一本の剣を引き抜いた。
乖離剣「エア」
その名はただ単に彼がそう付けて呼んでいるだけの、無銘の剣。
しかし、この剣の回転は時空を裂き、その威力はかのエクスカリバーを相殺してなお相手を粉砕しうるというもの。
この局面で彼がそれを出してきたという事は・・・・・
「終わらせようか。貴様自身は払えば消える芥同然のチリではあるが、その翼は我の蔵にもないものだ。しかし手に入らぬならば、それ相応の光で消し去ってくれよう。すまないな乖離剣。余計なものがついてはいるが、それもあの雑種が悪い」
ギィィィィィィィ・・・・と、乖離剣が回転を始めてその腕が振りあげられる。
すでに魔力は充填され、あとは振り下ろすだけで蒔風はこの場から消え去るだろう。
「・・・・・・は、ははは!!あははははははは!!!」
「む?」
「ちゃんちゃら可笑しいぜギルガメッシュ・・・雑種?ははは・・・・傑作だ!」
しかし、左手を地面に刺し止められ、右の肩と腿に剣を突き刺しっぱなしにしながらも、蒔風はおかしそうに笑っていた。
その目に死の恐怖はない。ただ「痛いなぁ」という感情しかないのだ。
蒔風のその姿を見て、ギルガメッシュは今まで感じたことのないモノを感じた。
それは恐怖か?
自らの「知り得ぬ存在」のこの人物が怖いのか?
そんなことはない。
理解の及ばない相手とは今までだって遭遇してきたし、彼はそのすべてを粉砕してきた。
それは畏怖か?
死を超えてしまったこの男に、そんな感情を覚えたのか?
そんなことはない。
自分は王だ。自分が一番だと言うのに、そんな感情は芽生えない。
それは拒絶か?
すべてを理解し、そして何者にも属さないこの男を拒んだのか?
そんなことはない。
拒むようなものは殲滅してきた。許すべきは自らが望んだ者だけだ。
だったらこの感覚はなんなのか。
まるで何もないようなのにどうしてもそこに何かが見えてしまう錯覚。
「いる」のに「いない」この男。生きていながら、死んでいる。
ここまで人間味にあふれ、それでいて人でない彼に、なんとも言えない薄気味悪さを感じていた。
それは形容しがたいもの。
まるで雨上がりに水たまりを見て、そこにどこからか流れてきた油が混ざってオーロラのように見えるかのように。
まるで何色ものスライムを混ぜ、その色が完全に混ざらず、各色が見えているかのように。
そしてそれを見ながら乗り物に酔い、今にも胃液が喉をこみ上げて来そうになりながらも脳味噌をガンガン振られ続けている感じだ。
気色悪い
王として、総てを許容するだけの器を自負するギルガメッシュが、自分は生涯、この男を理解することはないだろうと確信した瞬間だった。
「雑種雑種ってよォ・・・つまりは何かと何かの掛け合わせだろ?それ」
「だからどうした・・・・」
「嫌なに、お前の事を思い出してな・・・・そんなに自分が嫌かい?完全でない自分が?」
「なにを・・・言っているのだ・・・・・」
「そんなに嫌なら死んどけ王様。ハイブリットといえば聞こえはいいけど、そういうお前も半神半人だろう?」
「貴様・・・我を愚弄するかァ!!!!!天地乖離すァ・・・・・・」
ギルガメッシュが激昂し、その剣の名を叫んで振り下ろす。
その瞬間、蒔風が左手から剣を抜き、地面から解き放たれるがもう遅い。
「開闢の星!!!」
ギルガメッシュの右手に握られたそれが、怒りと力のままに蒔風の頭上へと振り下ろされた。
瞬間
「全て遠き理想郷・・・・・・」
バチィ!!!!
ギルガメッシュのエヌマ・エリシュが蒔風と、その後方だけを避けるかのように割れ、その威力を完全に無効化された。
残ったのは、蒔風が四つん這いになって居る場所の両脇を走る深い溝だけ。
その四つん這いになっている頭の前には、神々しい光りを放つ、エクスカリバーの鞘が浮いていた。
「貴様・・・それは・・・・!!!!」
「所有者を別次元におく事であらゆる攻撃の干渉を防ぐ宝具「全て遠き理想郷」・・・・一度発生した貴様のそれを防ぐにはこれしかないからな・・・・」
「おのれ・・・・・・・・・・・・!!!!!!」
ギルガメッシュが更に激昂する。
そうして、再び剣を振るう。
無論、魔力などまだ切れないし、この男はもはやこの一撃で吹き飛ばすと決めたのだ。
しかし
ゴン、という音と共に、力なく握られた蒔風の左拳が振りあげられたそれに触れていた。
それと共に充填された魔力が消えうせ、エヌマ・エリシュが強制解除される。
目の前の現象に信じられないのか、再び下がってそれを振るうギルだが、蒔風が左足だけの跳躍で接近、再び同じように拳をつける。
たったそれだけ。
たったそれだけで彼の発する問答無用の必殺技は封じられた。
「エヌマ・エリシュ・・・・ね。発動すればその質量だ。消しきることはまず不可能。しかし・・・・・」
「お・・・の・・・・」
「天理乖離す開闢の「星」だもんな。発動前にこうして拳をつけちまえば・・・・お前の「星」は「打」ち「滅」ぼされる。」
「れぇぇぇええええええええええええ!!!!」
ゴシャッ!!!という生々しい音と共に、開翼した蒔風の頭突きがギルガメッシュの鼻面にめり込み、その整った顔面を少しへこませる。
そこから左手だけで後頭部を掴んでさらに顔面に膝をいれ、髪の毛数本をブチブチと言わせながら、その体を投げて地面に叩きつける。
たったそれだけの動作だが、その速度が開翼、しかも加速開翼で通常の数倍の速さだったら、その威力はどれほどのものだろうか?
叩きつけられたギルガメッシュは地面に練り込み、その口から血を吐きだして動きが止まる。
「受肉している、って言うのがお前の弱点でもある。いくら英霊とは言え、受肉している以上瞬時に回復とはいくまい!!!」
「こ・・・の・・・・」
《ワールド!!!》
蒔風がメモリを抜き、もう一度起動、挿入する。
すると身体から黒いカーテンのようなモノが帯状に出てきて、彼を食らおうとそれを触手のように伸ばす。
「間桐桜謹製の「影」・・・融けて吸われて消滅しろ」
「が・・・お・・・・・・のれ・・・・・・」
蒔風の足元から、まるで沼のように広がる黒い影。
ありとあらゆる生物を溶解し、吸収する魔術。
間桐桜が「反転」した時に発生させた闇。
それを以って、蒔風が激しかったこの男を、静まりの中に消して見せた。
無論、この間に電王が何もしていなかったわけではない。
しかし、デンライナーからの砲撃ではギルガメッシュが吹き飛んでしまうかもしれないし、接近しようにもエヌマ・エリシュにアヴァロン、更にはこの「影」だ。まったく手が出せない。
「ギルガメッシュ・・・確かにお前は強い。オレの身体も結構やられた。だがな、傷ついた状態でなく、ここまで回復したオレとやり合おうと考える時点でお前は傲慢だったんだよ」
彼のカードを手に、蒔風が呟く。
そうして電王を見、彼の方へと影を伸ばした。
それに対し、咄嗟に下がって回避する電王。
が、あまりの範囲にもはや攻撃は意味を為さない。
見るとデンライナーの車輪が影に巻き込まれ動けない。
このまま逃げられる、もしくはやられてしまうのか。
そう思い、せめて一撃と武器を構えてジークがフルチャージしようとしたその瞬間。
灰色のオーロラがデンライナーを覆ってどこかへと消えていった。
「・・・・・・・なに?」
「舜・・・・見つけたぞ。お前は俺たち二人で斃す!!」
「なかなか厄介でね。でも、なんとか連れてこれたよ」
そうして、電王の横にも同じオーロラが現れて、そこからユウスケと海東が出てきた。
「お前ら二人で?オレを?嗤わせんなよ」
蒔風がイラついた声を出す。
あの列車には標的の対象がまだ何人も乗っているのだ。
それをこのチャンスで逃され、かなりイラついてきているようだ。
が、そんな蒔風を無視し、海東が電王の方を掴んでオーロラに消える。
その光景に、蒔風が首をかしげた。
なぜ逃げる?
いや、それが正しいのだろうが、それならなぜユウスケを・・・・・
そこまで言って、蒔風の顔からすこしだけ 血が引いた。
海東が消えたオーロラは、まだなくなってない。
「まさか・・・・」
「いっただろ・・・・俺たちで斃すと」
そうして、オーロラから人物が出てくる。
この世界に統合されることの無かった世界の主人公が。
「行きますよ、五代さん」
「はい、小野寺さん・・・どうやら、本当みたいだしね」
ユウスケの横に立つのは、五代雄介。
今、目の前の邪悪を撃ち払わんと、古代の戦士が二人立つ。
to be continued
後書き
電王は正直道案内で終わったよ!!!
ギルガメッシュ
「あの男が来たところにわざわざ張っておったというのに・・・・!!!」
はいはいお疲れですた。
ギルガメッシュ
「おい!!一章みたいなカッコイイ見せ場は・・・・」
ないッ!!
マーク
前回忘れた皆含めて、全員令呪のマーク
蒔風が保険だといってメモリで起動させてたのはセイバーでした!!
あれ?でも確かあれって士朗の投影だったから・・・士朗か?どっちでもいける気がするけど!!
電王は・・・なかなかやられてくれないなぁ・・・
ギル(小)
「次回、究極の闇を撃ち払わんと、究極の二人が立ち上がる、です」
え?ギル?
ギル(小)
「大人の僕は拗ねちゃいましたよ」
そうかい。
ではまた次回!!
リスト残り
長門有希
クラウド・ストライフ
小野寺ユウスケ
海東大樹
野上良太郎
モモタロス
ウラタロス
リュウタロス
ジーク
デネブ
直枝理樹
乾巧
剣崎一真
左翔太郎
フェイト・T・ハラオウン
シグナム
ヴィータ
リィンフォースⅡ
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