真田十勇士
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巻ノ八十二 川の仕掛けその七
「だからな」
「はい、それでは」
「これで、ですな」
「まだ戦は続きましょうが」
「とりあずはよしとしますか」
「そうしようぞ」
微笑んで家臣達に言った。
「今はな」
「わかり申した」
「ではささやかながら宴を開きましょう」
「源次郎様と十勇士達も呼び戻し」
「そのうえで」
「兵達にも飲ませよ」
酒をというのだ。
「よいな」
「はい、それでは」
「その様にしましょう」
「また戦になるやもですか」
「今はとりあえず」
「その様にな」
こうしてだ、昌幸は幸村達を呼び戻し宴を開いた。しかしその夜に昌幸と幸村は城の窓から星を見てこう言った。
「将星が落ちたな」
「はい」
二人で言い合った。
「あれはな」
「どなたの星でしょうか」
「格別大きくはない」
その星はというのだ。
「では誰か」
「それですな」
「内府殿ではない」
昌幸はこのことはわかった。
「しかし非常に優れたな」
「そうした方ですな」
「果たして誰か」
昌幸は眉を厳しくさせて言う。
「それが問題じゃな」
「まさか」
幸村はその落ちる星を見つつ言った。
「義父上が」
「有り得るな」
「やはりそうですか」
「うむ、刑部殿は業病であられるしな」
「そのこともありますか」
「そしてこの戦に全てを駆けておられた」
「だからですな」
幸村も応えて言う。
「あの方は」
「有り得る」
「そうですか、しかし」
「それでもだな」
「戦で死ぬことは避けられぬもの」
人がだ。
「ですから義父上が亡くなられても」
「受け入れるか」
「そうするしかありませぬ」
こう昌幸に言うのだった。
「その時も」
「そうか、わかった」
昌幸も幸村のその言葉に頷いて応えた。
「あの御仁なら恥ずべきことをされぬ」
「最後まで」
「そうした方じゃ、だからな」
それ故にというのだ。
「そのことは安心してな」
「そうしてですな」
「戦の報を聞こう」
「あちらにも忍を送っていますな」
「何かあればな」
「すぐにここまで戻って」
「伝えてくれる」
幸村にこのことも話した。
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