ソードアートオンライン~黒の流星~【リメイク版】
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第一層ボス攻略
前書き
明日は試験があるというのに勉強しない叶愛です(笑)
試験といっても進学先の学校のものなのですが。
アキ「尚更やらないと駄目だろ…。」
叶愛「…あとでやるさ!」
アキ「信用できない。」
叶愛「うぐ…、とりあえず本編へ…!」
アキ「あ、逃げた」
叶愛「…。」
あれから俺達は宿屋に移動して、アスナが借りた部屋に集まって俺とアスナが初めて会った日、デスゲームが始まった日の話をしていた。
「そうだったのか…。」
「あぁ、だから俺とアスナはこっちに来た日に会って今日久し振りに再会したんだ。」
「あのときは本当に助かったよ。」
アスナは、つい1ヶ月前の事を懐かしむように思い出していた。
「大げさだって…。」
俺は苦笑しながら、アスナとキリトに向かい合うように椅子に座った。
俺に向かい合うに右側にアスナ、左側にキリトが椅子に座っている。
「大げさなんかじゃないよ、本当の事だもん。」
「でも、確かにアキは凄いな。」
俺はキリトの言葉に疑問を感じた。
「何も凄くないけど。」
「いやいや、デスゲームが始まったあの日に自分以外の他人にそんな優しく出来ない。」
アスナもコクコクと頷いた。
「…優しくなんか無いさ。」
俺はボソッと呟いてから右手を振ってウィンドウを開いた。
「さて、明日の攻略について話を始めようか。」
キリトは「あぁ、そうだな。」と言ってから、右手を振ってウィンドウを開いて、アスナはそのまま俺とキリトの話を聞いていた。
気付けば21時を過ぎている。
俺達はお互いの部屋に行くため解散した。
「キリト君、スイッチ!」
「あぁ!」
――二人とも強すぎじゃないか…?
あまりにも二人の強さに俺は圧倒されていた。
――俺、必要ないような…。
そう考えていた時、キリトが俺の名前を呼ぶ。
「アキ、スイッチ!」
「!?、あぁ!」
俺は一瞬驚いたがすぐに戦闘に頭を切り替えた。
青色のイノシシは、俺の左手で握っている"アニールブレード"から繰り出させる初段ソードスキル≪スラント≫でダメージを食らいHPが0となって、ポリゴンへと変わった。
「ふぅ…。」
「アキ、大丈夫か?」
「大丈夫、少し考え事をしてただけだ。」
「戦闘中は集中しないと危ないよ?」
「あぁ、すまない。」
そうして俺達は3人でスイッチで交代しながらボス部屋へと進んだ。
目の前には大きな扉。
「ここがボス部屋…。」
真っ黒な鉄で出来ている大きな扉は閉まっており、見る限りこの先には悪魔がいることが分かる。
アスナの呟きは静寂なダンジョンに消えていく。
ボスに挑むための最終準備を済ませ、ディアベルが攻略メンバーに一言。
「絶対に勝とうぜ!」
「「おおー!」」
ディアベルの一言に反応する攻略メンバー。
俺達はお互いの目を見て1つ頷いてから、開いた扉の中に入った。
それからはひたすら剣を振った。
スイッチしては、斬りつけてまたスイッチの繰り返し。
俺達3人の役割は雑魚であるコボルドの処理。
6人パーティがボスを潰している間に、雑魚のコボルドがボスと戦っているパーティを攻撃しないようにするためだ。
「キリト!」
「大丈夫だ…、あれは…!」
POPしていたコボルドを倒し終わり、ボス戦側に向かおうとしたときキリトの態度が変わった。
ディアベルが一人、ボスに向かって走っていく。
――確か情報では刀では…あれ、刀?
「ディアベル駄目だ!やめろー!」
キリトが横で叫ぶ。
次の瞬間、悪魔が大剣をディアベルに向かって振り落とす。
ディアベルのHPが耐えられるはずもなく、吹っ飛ばされ床に叩きつけられる。
「ディアベルはんー!」
「ディアベルさん…!」
キバオウの声とアスナの震える声が響き渡る。
俺は急いで吹っ飛ばされHPが減り続けるディアベルのもとに走り、ポーションを飲ませようとした。
だが、その手はディアベルによって止められる。
「!?、ディアベル早くしないと!」
「頼む…。」
「え…?」
ディアベルは、ポーションを持つ俺の左手を震える手で掴みながら…。
「皆を…頼む…、ボスを倒してくれ…!」
「ディア…。」
パリン――
水色か透明なガラスのようにディアベルは割れて消えた。
俺の後ろに来ていたキリトは顔を伏せ、アスナは口を両手で塞いでいた。
「ディアベルはん、アンタが死んだらワイラは…。」
俺は無言で立ち、腰にある剣を抜いて悪魔に視線を向ける。
「アキ、やめ…。」
キリトの声を遮り、俺は悪魔のもとに走った。
「俺が相手だー!」
悪魔の右足、バックステップして反対の足に斬りつける。
悪魔の大剣をアニールブレードで流して避けては、後ろに回り背中を斬りつける。
背中を斬りつけた時に前のめりによろけた瞬間、俺は初段ソードスキル≪ヴァーパルストライク≫を撃ち込む。
ソードスキルを使ったため硬直し、悪魔の攻撃を食らうが今はそんな事どうでもいい。
俺のHPは緑から少しずつ黄色に変わっていくが、気にせず何度目か分からないソードスキルを撃つ。
ボスはダメージを食らいHPも黄色に変わる。
黄色に変わった事で攻撃パターンが変わり、俺に大剣が振り落とされる。
その時だった、後ろから2つの人影が横を通りすぎていった。
「アキ、無茶するな!」
「後ろに下がって回復して!」
その人影はキリトとアスナ。
俺は一瞬二人に呆気に取られたが、すぐに冷静になって頷き後ろに下がろうとした。
だが、身体が動かない。
先程のソードスキルによる硬直で下がるにも下がれない。
そのとき、アスナとキリトがボスの大剣で吹き飛ばされ俺に標的を向ける。
「ちっ…!」
――まだなのか…動け、動いてくれ…!
俺は剣を握る左手の力を入れ、無理矢理でも動かそうとするが短いはずの硬直時間が長く感じる。
「アキ(君)ー!」
俺は目の前に迫る大剣に何もできずに立つことしか出来ない。
――俺、死ぬのか…?
まだ何も変われてないじゃないか…。
まだ、まだ死ぬわけにはいかない…!
俺は抗う事が出来ず、死の恐怖で目をつぶった。
だがいっこうに大剣は来ない。
変わりに聞こえてきたのは攻略会議の時に場を納めた人物の声、エギルというプレイヤーの声だった。
「おらー!」
「貴方は!?」
「すまないな、回復に時間がかかった。ここからは俺たち盾装備がアンタらを支える。」
「ありがとう。」
俺はエギルに感謝してから後ろに下がって、ポーションを飲みHPを回復する。
そして、HPが回復したのを確認してから剣を握る力を強めて前で戦ってるパーティメンバーのもとに走った。
「ごめん、遅くなった!」
「よし、やり方はコボルドと同じだ!行くぞアキ、アスナ!」
キリトの指示に頷き、ボスに向かう。
「やぁぁぁぁぁ!」
「うぉぉぉぉぉ!」
アスナが鋭く正確な初段ソードスキル≪リニアー≫を足下に撃ち、キリトとスイッチし初段ソードスキル≪スラント≫を逆の足に撃ち込む。
そして、俺はキリトとスイッチしボスの縦に降り下ろす攻撃を避け、ふらついたボスの横腹に初段ソードスキル≪ヴァーパルストライク≫を撃つ。
「はぁぁぁぁぁ!」
ボスのHPは、アスナとキリト、俺のソードスキルによって黄色から赤へ変わり残っていたHPが吹き飛んだボスはポリゴンへと姿を変えた。
目の前には『Congratulations!』の文字が浮かび上がった。
そして、俺の目の前には『LastAttack!』と書かれたウィンドウが現れた。
「た、倒したー!」
「よっしゃー!」
その瞬間、張り詰めていた攻略メンバーはハイタッチや抱き合ったりなど歓声の声がボス部屋に響き渡る。
「なんでや…!」
だが、その雰囲気は一人の男によって一気に変わった。
その声がした方向、キバオウが顔を伏せて怒鳴り散らした。
この場にいた俺を含めた全員は何が起きているのかが分からなかった。
「なんで、皆殺しにしたんや…!」
「皆殺し?」
キリトはキバオウの発言に疑問を感じたようで、聞き返した。
「そうや!アンタはボスのスキルを知ってたやないか!それをディアベルはんに伝えていなかったから、ディアベルはんは死んだんや!」
「そ、そうだ!ソイツ、さっきボスのスキルを知ってた!」
「ソイツ、βテスターだ!」
あるプレイヤーがキリトを指差しながら怒鳴り散らす。
「…っ。」
キリトは顔を伏せ、辛そうな表情を浮かばせていた。
――あぁ…あの顔…。
俺は何度も見てきた、あの顔は…。
毎日見ていた鏡に写る自分の顔にそっくりじゃないか。
気付けば俺は、キリトをかばうようにキリトの前に腕を伸ばす。
キリトは驚いた様子で俺の顔を見てきた。
まるで、「アキ何をしようと…?」と聞いてくるかなような顔。
「βテスター?」
俺はキバオウに話始めた。
――あぁ、俺はいつからこんなにも人の前に立てるようになったんだろ…。
俺はこの世界に来てからの自分の行動に驚きすぎて笑ってしまう。
「ふ、ふははは!」
「な、なんや!」
俺がいきなり笑いだした事に怒っているのだろう。
俺は笑いをやめて、睨み付けた。
「こんな子供がβテスターだと思うか?」
「!?」
この場にいた全員が俺の言葉に呆気に取られる。
キリトは驚きとはまた違う反応だったが。
「βテスターは1000人だ、確かにこんな見た感じ中学生の子供もいるかも知れないが俺は見たことがない。」
「お、お前もβテスターか…!」
「俺、聞いたことあるぞ…!アキって言うβテスターがいるって話…!」
――コイツ、はったりを言ったな。
俺はβテスターじゃない、正真正銘の初心者だ。
確かに動きが普通の奴とは違うが、それはリアルで剣術をしていた時があったからであってβテスターでは無いのだから。
だが、今の俺にとっては好都合。
「そうだ、俺はβテスターだ。しかも、そこら辺のβテスターとは違う。さっきのボスのスキルをコイツが知っていたのは俺が隣で呟いたからだ。」
「呟いただと…!?」
「あぁ、本当の事を大声なんかで言ったらそれこそ俺は「βテスターです」って言ってるようなものだろ?それに、攻略会議の時に言いづらい雰囲気を作った奴が悪いんじゃないのか?」
「お前!」
金髪の男が俺の胸ぐらを掴んだ。
「それと、俺は情報屋よりも知ってるぜ?何十層も上にβテスト時に行ったからな。」
「ふざけんな、それじゃあチートじゃねぇか!」
「チートのβテスターで、"ビーター"だ!」
俺は慣れない手付きをバレないようにウィンドウを操作し、先程の戦いで手に入れたLA(ラストアタック)を身につける。
"ミッドナイト・コート"
真っ黒でビーターと呼ばれた俺にぴったりの装備だ。
「そうだ、俺はビーターだ。そこら辺のβテスターやそこにいるゲーム好きの子供と同じにしないでくれ。」
――さて、どうするかな…。
βテスターではない俺が、ここから一人でやっていける確証なんてものは存在しない。
俺は、その場から離れるため出口へと歩いた。
「アキ…!」
「怖いなら始まりの町にでも戻ったらどうだ?」
「!?」
「俺が第二層のアクティベートは済ませとくさ、始まりの町に帰れば?」
「お前…!」
俺は相手を苛つかせるような口調で笑いながら話した。
そして、第二層に向かうため階段を登っていると誰かが後ろから追いかけてきた。
「アキ!」
「アキ君!」
「…どうした?」
アスナは俺の手を掴み、顔を合わせるように俺を半回転させる。
「アキ、俺は君を…。」
「気にしないで。」
「え…?」
俺は笑いながら下にいる他の奴等に聞こえないようにキリトに話す。
「もともと俺は一人だから別に構わない、だけどキリトは絶対に一人になるなよ。」
「違う…俺は…。」
「ソロプレイヤーになるなってわけじゃない、全てを一人で解決しようとするなって事さ。」
俺はウィンドウを開き、パーティを解消した。
「アキ君…!」
「アスナ、君は強くなれる。βテスターじゃない俺が言ってもあれだけどキリトを頼んだよ?」
「そんな君は…どうするの…?」
「俺はビーターだから二人と一緒にはいられない、でも攻略には参加する。」
俺は今日あったばかりのキリトと再開したアスナに別れを告げた。
――何故かは分からないけど、あの場でキリトを独りにさせてはいけない気がしたけど…。
二人と別れて真っ暗な道を進んで見えてきたのは綺麗な夕焼けと草原の景色。
「第二層…だな。」
偽りのβテスターで汚名を被った、ビーターと呼ばれるアキとして始まった日だった。
後に『黒の剣士』『閃光』『氷の狙撃手』と呼ばれるトッププレイヤーの中の一人『黒の流星』と呼ばれるほどの強さと素早さ、鋭さをもつ剣士になるとは誰も想像していなかった。
もちろん、アキ本人も。
後書き
やっと進めるぜー!
アキはβテスターじゃないのにどうするかね…(笑)
まだ第二層だというのにアキの性格が変わってきているような…。
でも、まだ変わってない!きっと!(←自信無い)
では予告!(いきなり時間が飛びます!)
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「はぁぁぁぁぁ!」
無惨にポリゴンへと消えていく。
ビーターと呼ばれ始めてから約1年が過ぎた。
そして街では様々な噂がたっていた。
それは、目にも見えない剣技で殺人者を殺していくプレイヤー『紅の死神』がいるという噂。
「第五十層攻略へ…か。」
悪魔の忌々しい体を死神が貫く。
「終わりだ。」
次回『噂と悪魔』
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