FAIRY TAIL~無表情な妖精
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5,彼女はネームレス、名のない魔導士
評議員の依頼で魔導士ネームレスの退治に出掛けたスカーは唖然としていた。一人荷物の準備をし、マスターに何も告げずに馬車に乗り出発したはずだ。なのに何故俺の横に寝息を立て寝ているカナが居る?
「何でいるんだ」
確かに馬車に乗ってすぐに寝てしまった。しかし、寝付けなかったからすぐに目を覚ました。そして目を開けた時には居た。何時潜りこんだのか、何時から横に居たのか。考えられることは全て考えた。
それで行きついた答えはこの馬車が定期便である事だ。今から行く場所は定期的に来る馬車でしか行けない、だから時間が限られていたためマスターであるマカロフに何も言わず来た。そしてこの馬車は直ぐには止まらない、街を一つ越えてようやく止まる、寝ている時間は短く誰か乗って来る事は無い。これらからカナは最初からこの馬車に居て、それに俺は気付いて居なかったという答えが導かれる‥‥偶然とは何とも恐ろしい。
「むにゃ‥‥」
「‥‥如何したものか」
起きる気配も無いカナを横目で見ながらどうするか考える。考えて、考えて居ると何時の間にか目的の街に来ていた。カナは起きずに置いて行く訳にもいかず、街にある格安の宿の一部屋を借り、一晩過ごす事になってしまった。
私は目が覚めると暖かなベットの上に居た。可笑しい、確か私は馬車の中に居た。然し視界を巡らすと何処かの個室のようで馬車の中ではない事がはっきりと解った。体を起こし、近くにあった窓の外を見るとすっかり夜だった。
「一体誰が?」
「漸く起きたか」
声は聞き覚えのある声だった。振り返ると其処には入浴を終えたのであろう、下着姿のスカーが頭をタオルで拭きながら出て来た。
「す、スカー!? 何で此処に!」
「あまりにも気持ちよさそうに寝ていたものでな、起こすのもあれだから連れてきた、それでお前は何処に行っていたんだ?」
「‥‥お墓に行ってたの、母さんの」
「そうか」
「貴方のお母さんのお墓は何処にあるの?」
「‥‥遠い所だ、とてもじゃないが行けない」
「‥‥ごめん」
「いいんだ、気にしなくて」
「でも、ごめんね」
しばらく沈黙が続き、それに耐えれずカナは言い出す。
「‥‥迷惑じゃなかったらお仕事手伝っても良い? ほら、宿代今持って無いからさ」
此処で断るのが普通の判断だが彼はそれを許した。
「‥‥解った、だが危険と判断したら直ぐ逃げろよ」
「スカーが一緒だし大丈夫でしょ」
「だと良いがな」
スカーは窓の外見てそう呟いた。
翌日の朝、スカーとカナは街を歩いて居た。
街自体は賑わってはいたが何処か違和感を覚える。それが解らずカナは唸っていたがスカーはすれ違う人達の顔を注意深く見ていた。
そして暫くして一人の女性に話し掛けた。
「済まない、聞きたい事がある」
「あら、何かしら?」
女性は笑顔でそう言うとスカーは率直に尋ねる。
「ネームレスの古城に行きたい、何処に行けばいい」
「!」
「‥‥何か知って居る様だな」
そう言って金の入った袋を彼女に手渡し、案内を頼むと言う。彼女は嫌な顔をしながら道を案内した。
「ここよ」
案内人は看板の前で立ち止まった。看板には立ち入る事許さず、すぐさま引き返せと書かれている。
「貴方達、今ならまだ引き返せるわ。もう多くの人が帰ってきてないのよ」
「そうか、忠告感謝する、だが行かなければならない」
そう告げ、スカーは森の中へと入って行った。カナも追う様に森に入って行った。
残された女はにやりと笑っていた。
「王よ、今回は上玉ですよ」
しばらく歩くと崖があった。
その向こうにはボロボロの城がポツリと立っていた。
道と成る橋は割としっかりしている、それを渡しきり、ようやく城門の前まで着いたスカー達は門を叩く。
すると声が頭の中に響きだした。如何も魔法の様だ。
『要件は?』
「ネームレスに会いたい」
『私がそうだ、何用か?』
「お前を倒しに来た」
『そうか、では素直に入れるわけにはいかないな』
「開けなければこじ開けるだけだ」
『‥‥』
城門が突如開き、二人は中へと足を踏み入れると一本道の両端に甲冑を着た騎士がずらりと整列していた。
「すごい」
「‥‥」
道をまっすぐ進みながらカナはそう口を漏らすがスカーは何も言わない。
暫く進むとメイドが二人現れた。
「ようこそ、名もなき城へ」
「私はジャック、彼女はリッパ―、王女の元までご案内させていただきます」
そう言ってリッパが先導し、ジャックが最後尾を歩く。
また歩き、扉が見えた、それを開けると豪華な装飾がされた部屋が視界一杯に見える。
そしてその中央に白いドレスを着た女性が一人、スカートを上げ、軽くお辞儀をして名乗る。
「初めまして、可愛らしい魔導士様、私、この古城の主であります、ネームレスと申します、以後お見知り置きを」
カナも彼女に続き、名乗ろうとするがそれをスカーは止める。
「ネームレス、一ついいか?」
「どうぞ? 何か疑問でも?」
「いや、あんたは本物なのか?」
「あら、そのような事をどうして言えるのですか?」
「俺が此処に来るまでに感じた魔力とお前から感じる魔力は全く違う。圧倒的魔力、それを感じない」
「ふむ、抑えているからと思わないのですか?」
「なら出してみろ、直感だがアンタが違うと直ぐに解る」
女は困り果て、カナは状況が読めず、首を傾げていた。
「くふ、くははははっ!」
笑い声が突然部屋に響く。そしてそれが背後から聞こえたのをスカーとカナは気付き、振り返った。
振り返った先には真っ白な肌の白衣の女が立っていた。
「きゃあああああっ!!??」
余りにも恐ろしい見えたのか、カナは悲鳴を上げた。
「おぉ‥‥初対面の人間に対して悲鳴を上げるとは失礼だぞ‥‥まぁこの顔だ、もう慣れたものだがやはり傷つくものだ」
軽く肩を落とし、改めてと言い出し名乗る。
「私が本当の古城の主、ネームレスだ。ネームと呼んでくれ」
不気味な笑みと共に彼等は背筋にそれを感じた。間違いなく、この女は強き者であることを。
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