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ファイアーエムブレム聖戦の系譜 〜幾多の星達〜

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64部分:会談その一


会談その一

                      会談
 トラバント王からの会談の申し出を受けたセリスは次の日トラキア軍の陣地へ向けて出発した。面々はセリスをはじめとした解放軍の諸将の約六十名。ターラ城に残ったリノアンと陣に残ったシャナンの他の主だった将全員が来ていた。その中には入ったばかりのイリオスやシャナム、リーンに半ば強制的に連れて来られたアレス、捕虜でありながらセリスがトラバント王に屈服する姿を見たいと言ってついて来たオルエンとそれに従うフレッドといった面々もいた。
 陣に到着した。一人の騎士が出て来て敬礼した。表面上は恭しく迎える。陣の中へ案内される。
 陣の中は無数の天幕が張られていた。竜騎士団の者達が会うとトラキア式の敬礼で返す。表面上は歓迎しているが内心では解放軍を憎悪しているのが解かる。
「やはり僕達を快く思っていないみたいだね」
 セリスはトラキア兵の態度を見ながらオイフェに言った。
「それだけではありませんな。御覧下さい、彼等の手にする剣や槍を」
 剣や槍はどれも非常に良く手入れされ銀色に煌いている。そして強い殺気がこもっているのが解かる。
「オイフェの言う通りだったね。やはりトラバント王は会談が目的じゃないのか」
「まああの男なら考えられるような事ですな。やはり手を打っておいて正解だったようです」
「その手だけれど・・・・・・」
「大丈夫です。シャナン様がおられます」
「よし」
 セリス達は騎士に案内されトラバント王のいる場へ案内された。そこには机と二つの椅子が置かれ向こう側にはトラバント王が家臣達を引き連れ立っていた。その中にはアリオーン王子とアルテナ王女もいた。
「よくぞ来られた、セリス公子。このトラバント、トラキア王国を代表して礼を言うぞ」
 硬く低い声である。眼は鋭い光を放っている。
「トラバント王、お招き頂き有り難うございます。このセリス、身に余る光栄です」
 グランベル式の敬礼で返した。落ち着いた瞳でトラバント王の一挙手一投足に目をやる。
「まあ堅苦しい挨拶は止めにしよう。席に着こうではないか」
 王に勧められ着席した。
「さて、会談の場を設けたのは他でもない。貴公に頼みがあるのだ」
「頼み?」
 セリスは僅かに声を上ずらせた。しかし表情は全く動かさない。ただトラバント王の眼を見ていた。
「そうだ。ターラから退いてもらいたい」
「何故でしょうか」
「決まっている。ターラを征伐するのだ」
 その眼が剣呑に光った。
「それは出来ません。我々はターラ市民を圧政のくびきから解放する為にここへ来たのです」
 セリスはやんわりと、しかし毅然とした声で言った。
「フッ、面白い事を言う。ターラはグランベル帝国に対し弓を引いたのだぞ。征伐するのは当然ではないか」
「グランベル帝国に大儀があると思われているのですか?帝国の非道はあのロプト帝国と変わりません。あの様な非道こそ征伐されるべきなのではないでしょうか」
「何を言うか、帝国は十二聖戦士のヴェルトマー家とバーハラ家の血を引く由緒正しい家柄だぞ。貴公もシアルフィ家の者、まさか聖戦士としての義務を忘れたわけではあるまい」
「光を司るバーハラ王家を護り、民の憂いを取り除き、大陸を守護する、ですね」
「そうだ」
「ならば今のヴェルトマー家の何処が聖戦士だというのです?先の大戦の折は各地に戦乱の種を撒き多くの民を戦火にさらしバーハラ王家を護る者を排除し王族の方々を暗殺したではありませんか」
「黙れっ、それは根も葉も無い噂に過ぎん。大体卿の父シグルド公子もグランベルに弓を引いた反逆者ではないか」
「父が反逆者!?それは聞き捨てなりません!」
 セリスが席を立った。それを見てトラバント王は唇の左端を吊り上げた。
 
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