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歌集「春雪花」

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 雪解けの

  水音聞きて

   小夜更けて

 春近しとて

    君そ遠けり



 夜中さえ少しずつ寒さが和らぎ、屋根から雪解けの水が落ちて音をたてる…。

 星のない夜空に響く水音…もう春はすぐそこと言わんばかり…。

 でも…彼は遠いまま…時だけが静かに流れる…。


 どこに夢が…あるのだろう…。



 忘らるる

  身をば思いて

   白雪の

 とけて流るる

     人の命も



 忘れ去られ行く自分のことを考えると…なんとも虚しく、なぜこの世にあるのかさえ理解に苦しむ…。

 雪はただ黙って舞い落ち…春には溶けて消えてしまうように…自分も人の命さえ、何かの意味をもち、それを終えたら消え行く…。

 ただ…それだけなのかも知れない…。


 彼にとって私は…一体、何だったのだろう…。




 
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