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Three Roses

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第三十五話 臨終の床でその七

「そうなっています」
「そうですか」
「はい、とても」
「そうなのですね、何か今は思います」
 マイラはまた言った。
「貴女達と共にいるべきでしたかった」
「四人で」
「薔薇はそうであるべきでした、しかし」
「それでもですか」
「私はもうこの世を去ります、後は」
「これからは」
「貴女達三人はこれからもです」
 マリーとセーラ、マリアの三人を見ての言葉だった、今度は。
「その絆を守っていって下さい」
「三人で」
「そうです」
 まさにというのだ。
「その絆を大事にして下さい、そのうえでお願いします」
「この国、ひいては」
「四国を」
 その全ての国をというのだ。
「お願いします」
「再び一つにし」
「そうして共に生きていくことを」
「私達にですか」
「頼みます」
 こう言うのだった。
「後は」
「わかりました」
「そうして下さい」
 マリーの目を観て言った。
「是非、そして」
「そして?」
「旧教は」
 信仰のこともだ、マイラは言った。
「貴女は害するつもりはないですね」
「そのつもりです」
「そうですね、わかっていました」
 このこともというのだ。
「実は」
「そうでしたか」
「ですが私はあくまで」
「旧教徒としてですね」
「旧教の優位を願っていました」
 あくまで、というのだ。
「そうでした」
「わかっていました」
「旧教は絶対でした」
 マイラにとってはというのだ。
「何があっても、しかし」
「それでもですね」
「それは危険であることも」
「はい、教皇庁もロートリンゲン家も」
「この国を手に入れようとしていましたね」
「その為にです」
「私の周りにいた」
 マイラは言った。
「そうでしたね」
「おわかりでしたか」
「はい、しかしあの方は」 
 太子のことも話した。
「そうでありながらも」
「お姉様を」
「そのことはやがてでしたが」
 それでもというのだ、
「そのことが嬉しかったです」
「愛ですね」
「愛されるなぞ」
 マイラは自嘲も込めた、自身の言葉に。
「思っていませんでした、ですが」
「そのこともですね」
「嬉しかったです」
「そうでしたか」
「一人ではなかったですし」 
 マリーはさらに言った。
「幸せを感じましたので」
「だから嬉しかったのですね」
「あの人のことは」
 そこからだ、この国がどうなるかがわかっていてもというのだ。 
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