渚怺のチュートリアル
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プロローグ
雪の街から#4
扉を開けた。
と同時に、何処のお店にもありそうな
チャリ~ン♪・・・
とドアベルが鳴った。
あくまでも俺の見解なのだが、ウェイトレスとはお客様の事を第一に考えて行動するのが普通だと思う。
だが、現実は違った・・・
店員1「い、いらっしゃいませ・・・」
そこには、青く澄んだ目、青く長い髪、背はやや小さめの少女が立っていた。
見た感じ、歳は俺とあまり変わらないだろう・・・
少女の右腕には薄いメニュー表が抱えられている。
左胸に付けられた名札には
{樹生(Kiki)}
と記されている。
樹生「っあの・・・店内でお召し上がりしますか?お持ち帰りですか?」
多流人「んえ?!・・・えっと、ここで食べていきます・・・」
聞いて驚いた。
俺が知ってるケーキ屋は基本お持ち帰り専用の店ばかりで、大抵のファストフード店みたいにその場で食べられるようなところじゃなかったのだ。
なので、近くの休憩スペースとかで食べるつもりだったのだ。
俺が住んでいた所がたまたまだったというのか?
取り合えず、そうゆうことにしておこう。
ただ、休憩スペースを態々探さなくてよかっただけありがたかった。
今は、それだけで十分だ。
多流人「ここは、店内で食べられるんですね。」
樹生「はい。この街ではここだけです。」
多流人(前言撤回させてもらう・・・)
空いてるカウンター席に座り、メニュー表を受け取る。
樹生という店員がお冷を持ってこようとしたその時・・・・・・・・
店員2「おっかえり~マッカロ~ン!!!」
奥の扉から、これまた大体同じ年頃の少女が出てきた・・・しかし何かが違う!・・・
桃色の目、桃色の短い髪、赤い髪飾りをしていて背は俺とほぼ変わらない。
だが、明らかにテンションの次元が違った!
いきなり扉がバンッ・・・と勢いよく空いたものだから、つい取り乱してしまった。
多流人「何だ何だぁ!?」
小鳥囀る静かな田園風景が何処ぞのお祭過激集団の殴り込みによって一瞬で豪快なカーニバル会場に早変わりしたような感じだった。
樹生「渚怺(Syokora)さぁん・・・もうちょっと静かにぃ!(小声)」
渚怺「っあ・・・ごめんごめん・・・」
樹生「んもぅ渚怺さんったらぁ・・・まぁ、マカロンならそのうち帰ってきますよ。」
それにしても何かおかしい。
今更だが・・・
今の時間は俺にも当然他のお客がいて、その中には3時という時間を優雅に過ごしたいと願う人が1人か2人居てもおかしくない気がする。
だが・・・
誰一人として、渚怺と言われる店員の一人お祭り騒ぎに触れようとしない。
いや、少し語弊がある・・・
触れようとしないわけではなく、既にこの現状を日常と認識しているのだ。
だとしたら・・・
多流人(こんな茶番を何十回、何百回もやってるとでもいうのか!?)
感心していると、樹生が冷たいお茶を持ってきてくれた。
樹生「ご注文は何にしますか?・・・」
多流人「っあ・・・・・(小声)」
やべぇ・・・
非日常的な光景に見とれていて何を頼むか考えてなかった。
咄嗟にメニュー表に目をやり、右下にあるチョコレートケーキに目が留まった。
これにしよう。
多流人「んじゃぁ、このチョコレートケーキを一つお願いします。」
樹生「畏まりました。渚怺さ~ぁん、チョコレートケーキ一つお願いしま~す!」
渚怺「マァカロ~ォン・・・何処にいるのぉ~??・・・」
樹生「あのぉ、何やってるんですか?・・・まだ休憩時間じゃないですよ・・・(棒)」
また始まった。
正直見てられない・・・
渚怺「だって・・・私の落ち込んだ心を癒してくれる抱き枕がいないんだよ~ぉ。(泣)」
樹生「あの、マカロンは抱き枕じゃないですよ・・・そもそも抱き枕にしないでください!・・・」
渚怺「じゃ~私は何を抱き枕にして寝たらいいのぉ?(泣)」
樹生「わ、私に聞かれても・・・(困)」
何だろう・・・
ほんとどうでもいい茶番だ。
疲労の種が増えた気がする。
見せられてるこっちの身のことも考えておくれよぉ・・・(泣)
渚怺「だったら・・・・・・樹生ちゃんを抱き枕にしてもいい??」
多流人「んぶふぅぅ・・・・・・はぁ?・・・」
樹生「何でそうなるんですか!!!」
思わず口に含めてたお茶を吐く。
なんてこと言いやがるんだ・・・
堂々と百合発言できたことにびっくりする。
やっぱりテンションがおかしい。
そんな渚怺は樹生に抱き着こうとスキップして近寄る。
渚怺「樹生ちゃ~ん!!!!」
対する樹生は拳を握りしめて姿勢を落とす。
樹生「渚怺さーーーぁん!!!!」
樹生の一撃必殺パンチは渚怺のお腹ど真ん中を捉えた。
そして・・・
渚怺「ンッフ~♪・・・ってぐはぁーーー~!!!・・・(バタリ・・・)」
見事渚怺を討伐した。
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