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/Reproduction:私の幸せ

作者:竜造寺。
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終わりの始まり:始まりの終わり

 きっと私は幸せでした。
 きっと私は幸せではなかった。

 きっと私は幸せになれたでしょう。
 きっと私は幸せにはなれなかったでしょう。

 きっと私は幸せになる。
 きっと私は幸せはなれない。


 /explanation

 幸せ。それって何なのだろう。あると嬉しくなるの? 無いと哀しくなるの?
 あると、何か変わるの? 無いと、何か変わるの?
 それは本当に必要なものなの? それがなければいけない、そんな事って、あるの?

 もし、幸せというものがそれほどに曖昧で、私を悩ませるような存在だとするなら。
 そんなもの、私は要らない。

 それがあってしまったら──


 きっと私は私を見下してしまう。
 きっと私は私を涙を流してしまう。

 explanation/


 ◇──◆──◇






 ブレイブソード×ブレイズソウル


 清福の方舟 / 序


 #0






 ◇──◆──◇


 そこは、薄暗い研究室。
 乱立する本の塔はいつ崩れるか分からない。本棚に入りきらなかった本は、それに怯えている。



 ──────ねぇ、マスター。


 静かに私が口を開くと、マスターは振り返り、決まって少し笑ってから、口を開く。いつもの動作。
 ぼさぼさの、茶髪混じりの黒髪はなんだかいつもよりも寝癖が多い気がする。白衣を着ているけれど、なんだか医者には見えない。飾りでつけているようにしか見えないし、実際のところ本人も『飾りだよ』と苦笑いで言っていた。

 ぱらぱらと何百枚もある紙の束を捲る手を止める事なく「ん、どうしたの」と言う。するとその紙の束を後ろに放り投げて、次の紙の束を持ち上げる。

「私、やっぱり怖い」

 その言葉に、マスターは動きを止めた。

「……大丈夫だよ。痛くはない。怖くもない。ただ、君が心底恐ろしいと言った君自身の力を二分割する、ただ、それだけ」

 そう、痛くないのも、怖くないのも分かっている。実際、痛いとは思ってないし、怖くもない。
 でも、いざそれをするとなると、それとは違う、よく分からないものが込み上げてきた。

 まるで、私と言う自意識はここに残ったまま、でも誰にも知覚されずに永遠を過ごしてしまいそうな、感覚。
 まるで、私と言う存在が真っ暗闇に一人取り残されて、誰も返事をしてくれない悲しい現実に包まれてしまいそうな、感覚。

「ううん、違うの、そうじゃない」

 マスターが顔を傾げるのを見て、少し、分かった。

「そう、だ。うん。私は、私はね、マスターと離れるのが、嫌なの。ずっと、二人で居たいって、思えたの」
「……そっか、君は、もうそんな感情が芽生えてしまうほどに、大きくなっていたんだね。気付かなくて、ごめん」

 ぺこりと頭を下げたマスターの行動に、とても驚いた。
 こんなことする人じゃないのに、そう考えて、あることに気付いた。そもそも、マスターは私に頭を下げたことなんてない。いや、正しくは、私がマスターに罪悪感を持たせたことはない。
 なのに、どうして、私はその行動が悪いものだと思ったのだろう。
 あれ、『ざいあくかん』? って、何……?
 考えがぐるぐると回る。訳が分からなくなる。
 でも、そうして混乱しながらも、私はしっかりと言葉を発していた。

「い、いや、違うの! マスターは何も悪くない……」

 尻すぼみになってしまったけど、私の本心が少し顔を出したような気がした。
 でも、マスターは自分の非を、認めていた。それを、私に許させることは、きっとない。私にとってそれは、とても嬉しくて、とても、寂しい。

「ううん。全部僕のせい。君を自分勝手に拾おうとしたのも、君をアンロック出来てしまったのも、全部僕のせい。だから……だからこそ、僕に償わせてほしい」
「……で、でも」

 言葉に詰まる。
 なんて言えばいいのか、分からない。
 結局、何も言うことも出来ず、私は俯いた。

 そんな私の頭に、手が乗せられる。マスターの、手。とても暖かくて、離したくない、手。
 私はその手の上に、自分の手を置く。
 離れたくないという想いを、込めて。


「…………ねぇ、マ────







 顔に、何かが付いた。
 なんか、凄く嫌な、液体。
 反射的に手で触る。
 どろどろする。


 赤黒い液体。






 ────す、たぁ……?」





 《起動準備:完了》

 《魂魄剥離術式・起動》

 《0100101100101011/:第一回路-第一七八〇回路・解放(オープン)



「いや、うそ、ますたぁ、起きて、起きて……いや、いやぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!」



 《警告(アラート)・一七八一回路の解放にバグを確認》

 《警告(アラート)・一七八一回路〜二五六〇回路に異常(エラー)を確認》

 《警告(アラート)・全二九六七〇〇回路が正常に解放出来ません》

 《警告(アラート)・正常な魂魄剥離不可です。術式を止めますか?》

 《dgy.''mgd,dpw,M..dw....64969〜°6%9.》

 《マスター権限によりtwd@a/w,..w,vg魂魄はくr離術式をjwu.?jtpdこnまま発動しmす。ただしjpjdx!(%×/正常な魂魄剥離jtwm2が発動しなi可能性があrます》




【術式展開】




 《──────》

 《────.──,》

 《──,──異常(エラー)を検知しました》

 《異常を検知しました》

 《異常を検知しました》

 《異常を検知しました》

 《異常を検知しました》



 《警告(アラート)








「…………ぃ、や……」








 《術式展開の失敗を確認しました》



 《機密保持の為、自爆シークエンス起動》 
 

 
後書き
次作、『清福の方舟』のプロローグとなる話です。 
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