ファイアーエムブレム聖戦の系譜 〜幾多の星達〜
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42部分:魔剣その三
魔剣その三
「俺の名を知っているのか。有り難いな。では話が早い。リーンを自由にして欲しい」
「解った・・・・・・」
渋々衛兵達に命令し下がらせた。リーンはアレスの側にひしと寄り離れようとしない。
「礼を言う。だが二度目は無い」
「くっ・・・・・・・・・」
二人は大広間を去って行った。踊り子達や傭兵達も部屋を去って行った。後にはブラムセルとジャバローだけが残った。
「糞っ、何が黒騎士だ、忌々しい奴め」
血管を震わせ歯軋りをするブラムセルにジャバローが宥める様に笑った。
「まあそう怒られますな」
「これが怒らずにいられるか。あの若造め、よくもわしの楽しみを邪魔してくれたな」
「ですからブラムセル殿が怒られる必要なぞ無いというのです」
「貴様っ、わしを馬鹿にしておるのかっ」
脂ぎった顔が真っ赤になり汗が滲み出る。
「大体貴様の部下ではないのか。貴様がしっかりしておらぬから・・・・・・」
「そう、私の部下であるから大丈夫なのです」
「何!?」
「明日我等は出撃します。その先陣は当然アレスに務めさせます。ブラムセル殿はその間に・・・・・・」
「おお、そうかそうか。ジャバローよ、お主も中々悪よのう」
「いやいやブラムセル殿こそ」
「フォッフォッフォッフォッフォッ」
「ハハハハハハハ・・・」
二人が何やら古典的な密談をしている頃アレスとリーンは街から少し離れたオアシスに二人で座っていた。
「アレス、明日出撃するの?」
リーンが心配そうにアレスを見つめる。
「ああ、ジャバローの命令だ」
アレスは葡萄を一粒一粒皿に取りながら話した。
「そう」
皿に入れた葡萄をリーンに手渡す。
「有り難う」
リーンは皮を剥き一粒ずつ口に入れ呑み込む。甘い香りがアレスにも漂ってくる。
「アレス、やっぱりジャバローについて行くのね」
「ああ、あいつは飢え死に寸前だった俺を拾ってくれ今まで育ててくれた」
「けれどあいつはアレスを利用しているだけよ。そのミストルティンが有るから・・・・・・」
アレスの隣に置かれている剣を見た。豪奢な黒い鞘に納められ静かに横たえられている。
「解ってるさ。しかしあいつは今まで俺の親替わりだった。物心ついた時からいつも一緒だった。御前の言う通り俺を利用しているだけなのは解ってる。だが裏切る事は出来ない。それに・・・・・・」
「それに・・・・・・?」
「解放軍の盟主セリス公子は俺の親父を殺したシグルド公子の息子だ。あいつだけは俺のこの手で殺してやる」
アレスの藍氷色の瞳に強い憎悪の光が宿る。
「・・・・・・まだ忘れられないの?」
リーンの澄んだ緑の瞳が暗くなる。
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