真田十勇士
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巻ノ八十 親子の別れその九
「一日で終わらずな」
「長引くこともですか」
「考えられる、だからな」
「ここは、ですか」
「この城を最後の最後まで守り抜く」
上田城、この城をというのだ。
「攻め落とされては話にもならぬ」
「折角一方についたというのに」
「そうじゃ、最後まで残ってこそじゃ」
「勝っても敗れても」
「話が続く、だから生き残るぞ」
「わかりました」
幸村も頷いて答えた。
「それでは」
「その様にな」
「この城を最後の最後まで守りますか」
「御主と御主の家臣達にも働いてもらうぞ」
「十勇士達にも」
「こうした時の御主達じゃ」
まさにというのだ。
「だから頼むぞ」
「わかり申した」
「ではな」
「はい、思う存分戦いまする」
「そうせよ、敵の数は多い」
昌幸はこのことを誰よりもわかっていた。
「対するのは容易ではない」
「だからこそ知略を使い」
「術も使う」
「我等のそれを」
「そうじゃ」
まさにというのだ。
「わかったな」
「それでは」
「ではな、それで中納言殿の軍勢じゃが」
秀忠、彼のというのだ。
「この城に向かっておる」
「そうですか」
「我等の読み通りな」
「関ヶ原に向かう途中にですな」
「道を確かにする為にじゃ」
石田方についた城を攻め落とす必要があると判断してだ。
「来るぞ」
「しかも大軍で」
「そうじゃ、そして我等は足止めをする」
秀忠のその軍勢をというのだ。
「そうするぞ」
「わかり申した」
「では兵達にはな」
昌幸は今度は彼等の話をした。
「大飯を食わせてやれ」
「戦の時に力をつける為に」
「そうじゃ」
まさにそうだというのだ。
「よいな」
「それでは」
「うむ、連日たらふく食わせてやれ」
その大飯をというのだ。
「飯にな」
「しかもですね」
「精のつくものもじゃ」
そうしたものもというのだ。
「食わせてやれ」
「わかりました」
「それではな」
「それがしの家臣達も」
「無論じゃ」
十勇士達にもとだ、昌幸は幸村に答えた。
「だからな」
「それでは」
「御主も食え、よいな」
「では丁度よい魚が入りましたので」
「それをあの者達にか」
「いえ、それがしもです」
幸村は微笑んで父に答えた。
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