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真田十勇士

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巻ノ八十 親子の別れその七

「内府を破る」
「わかった、では城に入らずな」
「一気に攻めようぞ」
「おそらく場所は美濃になる」
 戦の場、そこはというのだ。
「岐阜城を奪われた場合はその西か」
「そこになるか」
「関ヶ原辺りでな」
「わかった、ではあの地でな」
「内府を倒すな」
「そうしようぞ」
「布陣は任せよ、しかしな」
 ここでだ、大谷は石田にこうも言った。
「どうも気になるのはな」
「何じゃ」
「毛利家と金吾じゃ」
 この二つだというのだ。
「どうもな」
「金吾殿か」
「何か態度がおかしいと思わぬか」
 石田のその目を見て問うた。
「その様にな」
「そうであろうか」
「わしの気にせいならよいが」
「わしは別に思わぬが」
「同じ様に毛利家もな」
 石田方の総大将であるこの家の軍勢もというのだ、軍勢の数も宇喜多家のそれよりも遥かに多い数を誇っている。
「吉川殿がな」
「あの御仁か」
「徳川家と懇意であったしな」
「ではか」
「若しやと思うが」
 この家にしてもというのだ。
「あちらにな」
「それはないであろう」
「しかしわからぬ」 
 大谷は真剣に危惧していた。
「この二つの軍勢が寝返ったりすれば」
「我等は勝てぬな」
「動かぬともじゃ」 
 その場合もというのだ。
「危ないぞ」
「確かにな、では」
「うむ、我等もな」
「この両家にはか」
「気をつけてじゃ」
 そうしてというのだ。
「進もうぞ」
「それではな」
「あと島津殿じゃが」
 大谷はこの家についても述べた。
「動いて欲しいが」
「それはか」
「どうもな」
「動かれぬか」
「そうやも知れぬ」
「島津家は強いが」
 その強さは天下に知られている、唐入りの時もである。
「しかしどうも行き違いでじゃ」
「こちらに来たからか」
「だからな」
 その為にというのだ。
「動かぬとな」
「思った方がよいか」
「残念だがな」
「そうか、島津殿はわかった」
 石田はこの家の軍勢については諦めた、だが金吾即ち小早川秀秋と毛利家についてはこう言ったのだった。 
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