ファイアーエムブレム聖戦の系譜 〜幾多の星達〜
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3部分:旅立ちその二
旅立ちその二
「ラドネイ・・・・・・」
ラドネイと呼ばれたその少女は横にいる自分と同じ髪と瞳の色をした若者の方へ顔を振った。その若者は紺の上着と青いズボンを着ている。
「ロドルバン兄さんもそう思うでしょう?」
「勿論。今打って出なくてどうするんだよ」
そう言うと二人は二階から飛び降り鮮やかに着地した。
「もうすぐオイフェさん達も戻って来られるわ。それに敵っていっても先遣隊じゃない。負ける相手じゃないわ」
「そう思うでしょ、二人共。さ、兄さんも行きましょうよ」
「う、うん・・・」
妹達に気押されてスカサハも渋々とではあるが了承した。
「ちょっと待って、わたし達を置いてくの?」
ラドネイとロドルバンに置いてけぼりにされた形になった二人が外へ出ようとする四人に上から声をかけた。二人共僧侶であるらしく丈の長い白い法衣を着て杖を持っている。一人は巻き毛の長めの金髪に青い瞳、もう一人は肩の辺りで切り揃えた黒髪と漆黒の瞳を持っていた。二人共大人し気な感じのまだ子供っぽさの残る可愛らしい少女だった。
「あ、ラナ、マナ。忘れてた。御免」
ロドルバンが二人の方へ顔を見上げて申し訳なさそうに言った。
「ちょっとお、それはないでしょ」
金髪の少女ラナがふくれると黒髪の少女マナも言った。
「そうよ、大体回復魔法使える人間を置いていくなんてどういうつもりよ」
これにはロドルバンも参った。
「御免御免、じゃあ一緒に行こうか」
「勿論」
「当然でしょ」
かくして六人となった一行が扉を開けるとそこには二人の男が立っていた。一人は紫の髪を後ろだけ長く伸ばした紫の瞳を持つ男であった。茶色のズボンと薄めの白い上着を着ている。端正な優男であり水晶のネックレスが目立つ。背負ったマンドリンから彼がバードであると解かる。
「よお、皆して何処行くの?俺も混ぜてくれよ」
「ホメロスさん・・・」
「こっちにイザークの奴等が来るんだろ?俺も行くぜ」
「けどお客人に・・・」
「何言ってんの、堅いことはいいっこなし、これも何かの縁さ」
「いいんですか?」
「いいよ、それに俺はセリス公子が気に入ったしね。あの人を見てると何か一緒に行きたくなったんだ。御前もそうだろう?ラルフ」
ホメロスにラルフと呼ばれた男は黙って頷いた。ホメロスとは対照的に大柄で筋肉質であり茶色の髪は短く切り込まれ顔つきも男らしくブラウンの瞳も強い光を放っている。白いズボンと灰色のシャツという出で立ちで腰に剣を吊り下げている。
「それに俺達だけじゃないぜ。ここにいる皆が準備を整えているぜ」
「嘘!?」
「嘘じゃねえよ、見てみな」
周りから剣や鎧で武装した若者達が出て来る。
「早く行かねえと遅れるぞ。行こうぜ、ラルフ」
「うむ」
「あーーっ、待ってよぉ」
先に駆けていったホメロスとラルフを六人は追いかけていった。周りから解放軍の兵士達が現われそれに続く。城門が見えてきた。そこに一人の若者が立っていた。
「セリス様・・・・・・」
ラクチェに名を呼ばれた若者は静かに一同の方へ近付いてきた。青の長い髪とサファイアの輝きを放つ瞳を持つ中性的な面立ちの細身で長身の美しい若者である。青い軍服とズボンに身を包み赤地の青マントを羽織っている。ブーツは白い。表情は穏やかかつ優しげであり、物腰は優雅で気品が漂っている。セリスが微笑みながら口を開いた。
「まさか僕を仲間外れにするつもりじゃないよね」
少し悪戯っぽさを含んだ笑みだった。
「しかしセリス様、セリス様にもしもの事があれば・・・」
「止めてよ、ラクチェまで僕を子供扱いするのかい?これでも剣の修行は十分積んでいるよ。少なくとも皆の足手まといにはならないさ」
「・・・・・・・・・」
ラクチェ達はしばし考え込んでいたがやがて顔を上げセリスを見やった。
「解かりました。セリス様、共に参りましょう」
スカサハの言葉にセリスはにこりと微笑んだ。そして剣を抜き高々と掲げ言った。
「行こう、皆。イザーク軍を追い返すぞ!」
城内が歓声に包まれた。
イザークの先遣隊三千はティルナノグとガネーシャの境にあるコーンウォール峡谷を抜けティルナノグへ向け進軍していた。山賊やならず者を兵に仕立てた者達で構成されており錆すら満足に落としていない斧や粗末な皮鎧といった武装であり、隊形すらとっていなかった。彼等の前に迎撃に出たセリス率いる解放軍二千が姿を現わしたのは三千の兵がほぼ峡谷を抜けた後だった。
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