Blue Rose
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第四十四話 あえて罠にその十
「そうなりますね」
「そうよ、絶対にね」
「そいつ先輩なんですけれど」
「あら、そうなの」
「陸上部の、ですがそうしたことをしたんで」
過去にだ、そうしたことをしたというのだ。
「皆から嫌われてます」
「人は見るのよ」
「裏切り者は信用されないんですね」
「そうよ、嫌われているというか」
「信用されてないんですね」
「龍馬君もその先輩を信用してないですね」
「二人いますけれど信用も尊敬もしていません」
先輩でもというのだ。
「無視してます」
「そうね、そんなことをする人はね」
「本当に信用も尊敬も出来ないです」
「それも自業自得ね」
「全く以てそうですね」
「龍馬君とは彼等と逆ね」
まさにというのだ。
「正反対と言っていいわ」
「そうですか」
「そう、間違ってもそんなことしないし」
「かえってですね」
「焦るのよ、けれどその焦りはね」
龍馬のその目を見てだ、優子は彼に話した。
「今はね」
「禁物ですね」
「仇になりかねないから」
だからこそ、というのだ。
「注意してね」
「わかりました」
龍馬は優子に強い声で頷いた。
「そのことは気をつけます」
「絶対にね」
「あいつを守る為に」
「とにかく相手は餓鬼よ」
優子はこのことも強調した。
「人間でなくね」
「生きながら人間でなくなっていて」
「餓鬼になった様な連中だから」
「こちらも餓鬼に対する必要がありますか」
「そういうことよ、人間には人間の対し方があってね」
そしてというのだ。
「餓鬼にはよ」
「餓鬼の対し方があるんですね」
「その通りよ、では餓鬼退治に行くわよ」
佐世保までとだ、優子はここまで話して車窓の外を見た。目の前の有明の海は泥沼の様だ。しかしその上の空はというと。
「奇麗なお空ね」
「そうですね」
「青空が広がっていてね」
「はい、ただ」
龍馬はその海を見て言った。
「海の方は」
「泥ね」
「はい、ここの海は」
「いつもこうなのよね」
「最初見た時は驚きました」
その泥の海をというのだ。
「本当に」
「ええ、けれどこれがね」
「ここの海ですね」
「そうよ、けれど泥の海の上にね」
「青空が広がってますね」
「面白い対比ね」
「確かにそうですね」
龍馬も頷いて肯定した。
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