とある科学の裏側世界(リバースワールド)
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second contact
ep.038 全ては途中式
怒涛の耐久戦の後、遂に万策尽きた子規は銃を手放し、目の前にある死を待っていた。
モニタールームから子規を観察する。
『呆気ない幕切れね。 さよならぶっ飛び軍師さん。』
ゴム弾による弾幕が消滅。
残り"1分丁度"で弾丸の雨が迫り来る。
誰もが子規の死を確信した。
たが叶と時雨はこの時、子規の恐ろしさを改めて実感することとなった。
発射された弾丸がすべて同じく発射された別の弾丸によって相殺されたのだ。
そして、最後の1分は子規は指一本動かすこともなく乗り越える。
「おい時雨!! これはどういう.......なっ!!」
叶はこのエラーの正体に気付く。
入り口の銃に指示を出すコンピュータのシステムの配列が完全に入れ替わっていたのだ。
叶はモニタールームから子規を確認する。
子規はフゥーと大きく息を吐き落ち着いた。
「作戦.......大成功だ。」
そう呟く子規の顔は無邪気な子供の顔だった。
それが叶の癇に障る。
「あの野郎、目的はこれだったのか。」
子規の本来の目的は"30分間"の耐久戦ではなく。
"29分間"のハッキングだったのだ。
つまり、シールドエフェクトもゴム弾を使った銃も全てはハッキングを気付かせないための手段だった。
しかも、叶や時雨に勘付かれないように少しずつ文字列を崩して組み替えていくという周りくどい方法を実行したのだ。
子規は足に力が入らなくなったかのように座り込む。
計画通りとはいえ今回は一か八かの賭けでもあった。
ハッキングに使ったシステムは子規が以前から"簡単には見破られないハッキングを仕掛けられないか"と模索した果てに作ったシステムを使用した。
「これで俺以外の奴らが来ても食い止められなくなったってわけだ。 もっと相手のことを考えるんだな。」
『もっとも、ハッキングを思い付いたのは、この建物に入った瞬間にobjectのネットワークに接続できるようになったからなんだが........機械よりも人のほうが恐ろしいってことだな。』
子規はゆっくりと立ち上がり、玄関ホールの監視カメラを発見すると、そこに笑顔で手を振った。
あきらかに挑発なのは分かっているが、今は無闇に子規を狙うのにもリスクがあるため叶は堪える。
子規は懐からマグナム銃を取り出す。
本人曰く、発注元は秘密らしい。
その銃口を監視カメラに向ける。
表情は相変わらず笑みを崩さない。
「"俺ッチ"の勝ちだ。」
引き金を弾く。
銃弾は監視カメラのレンズのど真ん中を撃ち抜き、内蔵された機械ごと破壊する。
モニタールームの液晶の1つが砂嵐になる。
『"俺ッチ"なんて数ヶ月ぶりに言ったなぁ.....夏に俺は的場に負けた。 あれは俺が余裕をひけらかして、油断をしてた故に的場に"読み"で負けた戦い。 俺の独壇場において俺は負けた。 これは恥ずべきことだ。』
それから子規は二度と同じミスをしないように自身にある種の制限を設けた。
それは"力でゴリ押しをしない"、"計算で勝利を導き出す"というものだった。
子規はこんな時になって昔のことを思い出した。
studentでのにぎやかな日常で忘れていたものを思い出したのだ。
『俺の本当の名前は"影縫子規"じゃない。 本名も忘れちまったけどな....。 俺の本名は呪われたもの、過去にあった地獄のゲームで多くの命を奪ってしまった殺戮者の名前だ。 俺はその呪いから逃げた。』
しかし、その反面で別の呪いを受けた。
それは『死ぬまでゲームを続けなければならない』というものだった。
子規は"ゲーム"をしたいのではなく、続けることを強いられているのだ。
◆◆◆◆◆◆
ドンと大きな破壊音がして、玄関ホールの大きな扉がぶち破られる。
これも子規の予定通りだった。
このタイミングで本拠地に辿り着いたのは"神薙 悠持"、"桐崎飛鳥"、"騎城優斗"、"七草花夜"、"神薙仁"、"的場聖持"だ。
「無事か影縫!!」
悠持が先頭に立って突入した。
それに続いて飛鳥が飛び込む。
「あそこだ! あの感じはかなりの重傷だぞ!」
飛鳥はそう言うと、自身の形状を不死鳥に変えて飛行してすぐさま子規の元に着く。
「無茶しやがって。」
飛鳥は能力で応急措置をしながら子規を叱る。
「任せろ」と言わんばかりの状態で本拠地に突撃した奴が次会った時に重傷を負っていればこんな反応になるのは当然だろう。
「急所はギリギリで外してあるんだけどな。」
子規は言い訳のように話す。
10発以上の弾丸をくらえばそれも関係なさそうだが。
子規の傷はどんどん消えていく。
体にめり込んだ弾丸は修復の過程で体から出される。
そして治療から僅か3分ほどで子規は全回復した。
ここで子規は1つの未来を予測した。
子規からすれば"ようやく"という感じだった。
しかし、確定ではない可能性のため発言を伏せた。
「お前はもう少し休んでろ。」
飛鳥が子規に言い付ける。
子規もそれに従うことにした。
玄関ホールからは合計で4つの道が繋がっていた。
子規の予想のもとではどこにもobjectの誰かが配置されているそうだ。
「俺は仁と進むことにする桐崎、騎城、七草には別の道を頼みたい。」
「いや。」
悠持の言葉を遮ったのは操作だった。
一同がその俊足に驚く。
鈴菜を抱きかかえて追い付いたのだから相当だ。
「1つは僕が行くよ。」
ここで鈴菜も目を覚ます。
鈴菜は操作に同行する意志を示した。
聖持に関しては子規の作戦から本拠地の入り口に門番の役目として待機してもらうことになっている。
こうしてobjectの本拠地にての戦闘が開始された。
後書き
影縫くんの過去は機会があれば
remember memory編にて書くつもりです。
これからはバトルの嵐です。
次回もお楽しみに。
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