ファイアーエムブレム聖戦の系譜 〜幾多の星達〜
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246部分:裁かれるべき者その一
裁かれるべき者その一
裁かれるべき者
ドズル城を攻略し新たにイシュタルと光騎士団を加えた解放軍は次にフリージへ向けて進軍を開始した。
その報はフリージ城にいるヒルダにもすぐに伝わった。彼女は手勢である雷騎士団全軍に対し出撃命令を出し自らも陣頭指揮を執ることにした。
フリージ城南のフリージ峡谷の入口において雷騎士団は布陣した。ここなら大軍が相手でも充分に相手を出来ると考えたからである。
雷騎士団の主力は重厚な鎧に身を包んだバロンである。ジェネラルよりもさらに強力でありかなり高位の魔法も使用出来る相当に強力な者達である。カナンやアトラスといった闘技場において伝説的な強さを誇る者もいる。攻守に極めて強い彼等なら解放軍とて恐るるに足らずと思われた。だがヒルダは自らの率いる軍の異変に気付いていた。
「全くやる気が無いねえ。どうしたことだい、これは」
ヒルダの残忍な性質と非道な行いは皆の知るところであった。彼等は彼女よりもフリージの本来の主であり政戦両略に長け人望もあるイシュトーとイシュタルに心を寄せていた。
二人は今解放軍にいる。自らの若き主達に剣を向けることなど出来る筈もなかった。士気が奮わぬのも当然であった。
「ならやる気を出させるまでさ。暗黒教団の連中を呼んでおいで。戦おうとしない奴がいたら殺しておしまいって」
彼等はそれにより止むを得ずヒルダの命令に従い解放軍と戦うことにした。
解放軍が峡谷の前に現われたとの報が入った。ヒルダはすぐに雷騎士団全軍に戦闘態勢に入るよう命じた。同時に暗黒教団の者達に対し督戦をするように言った。
解放軍が峡谷を進撃して来る。ヒルダはトローンの射程に入ったならばすぐに斉射するよう命じた。
もうすぐ射程に入る。手が構えられる。ジリジリと手に宿らせた稲妻が音を立てる。
「止めろ!」
不意に峡谷の上から声がした。解放軍も雷騎士団も一斉に声のした方を見る。
峡谷の上にはラインハルトやオルエンといったフリージ出身の解放軍の将達とアミッドやティニー、リンダといったフリージ家の者達がいた。その中央にはイシュトーとイシュタルがいる。両軍それを見て声を挙げた。
彼等は大旗を掲げていた。雷の御旗、十二聖戦士の一人であるフリージ家の祖魔法騎士トードの旗であった。それを見ただけで充分であった。
雷騎士団の者達は皆次々にフリージ万歳、トード万歳と叫び出した。それは瞬く間に全軍に拡がった。
最早ヒルダにはどうすることも出来なかった。暗黒教団の者達も手が出せず逆に次々と捕らえられ斬り捨てられていった。
これ以上この場にいると命が危ない、ヒルダは本能的に悟った。
死ぬつもりは毛頭無かった。暗黒神の世でこれからも思う存分拷問と殺戮を楽しむつもりであった。人々の苦悶の表情と断末魔の呻き声、そして鮮血の生臭い匂いをもっと味わいたかった。
だがその前に障壁が現われた。否、それは天の裁きであろうか。ヒルダの前に馬に乗った銀髪の若者がいた。
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