歌集「春雪花」
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
303
雨そ降る
落つるは涙か
空ぞ泣く
想ふも侘し
梅見月かな
春が近いのか…暖かくなり、二月の終わりに雪ではなく雨が降っている。
春…彼がここから立ち去った春が、また寂しさを連れてくるのか…。
この雨は空が泣いているのだろうか…。
彼を想い見上げた空は、まるで止め処なく涙を流しているように見える…。
花びらと
思いて見なば
白雪の
淋しさつのる
朝ぼらけかな
外灯の灯りに、不意に舞った雪が花びらに見え…未だ冬であると覚らせた。
昼の暖かさが嘘のように、真夜中より冷え込みが厳しくなり…朝方にはうっすらと雪が積もっていた。
何もない時…彼のいない町…花びらのような白雪の舞う暁は、私へと淋しさを募らせた…。
ページ上へ戻る