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お化け

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第一章

                 お化け
 お化けと聞いてだ、皆口希は小学一年から四年の今まで同じクラスである鷹森美奈代にこう言った。
「ああ、国道のトンネルの?」
「あそこ出るって言われてるわよね」 
 美奈代もこう返す。希は茶色い髪をツインテールにしていて目が大きい。美奈代は少し天然パーマの黒髪ではっきりした二重の目だ。二人共背は普通暗いだ。
「夜の十二時か二時に」
「あれ本当の話なの?」
「さあ、どうかしら」
 美奈代は希の問いに首を傾げさせて返した。
「実際のところは」
「わからないのね」
「バイクや車に乗ってる人の間では有名だけれど」
 心霊スポットしてだ、そのトンネルはネットや本でも紹介されることの多い全国区と言っていい場所である。
「私達そうした場所には行かないから」
「そうよね、あそこ街から離れてるから」
「だからね」
 まさにそれで、である。
「実際のところはどうか」
「それわからないわよね」
「お化けが出て来て食べられるとか」
「取り憑かれて殺されるとか」
「言われてるけれどね」
「本当はどうなのかしら」 
 二人で首を傾げさせながら話をする、とかく街を走り隣の市に向かうその国道のトンネルにはそんな噂があった。そして。
 その噂をだ、県内で有名な不良高校でもとりわけ素行が悪い清原和毅が聞いて悪友達にこうしたことを言った。
「そんなんホンマにおったらじゃ」
「見てみたい」
「そう言うんだな」
「そうじゃ、お化けとか幽霊とかおるか」
 いないとだ、清原は言うのだった。大柄で筋肉ばかりが目立つ身体だ、細長い顔で髪の毛を丸坊主にしており如何にも柄の悪い顔をしている。
 その彼がだ、こう周りに言ったのだ。
「何ならわしが見て来るわ」
「実際にあの国道のトンネル行ってか」
「そうするんだな」
「そして調べる」
「そうするんだな」
「そうしたるわ」
 こう言ってだ、清原は噂のトンネルに行く用意をはじめた。たまたま清原の家と近所の美奈代は希にこのことを話した。
 そのうえでだ、美奈代は清原についても美奈代に話した。
「正直近所の嫌われ者よ」
「そんなに酷い奴なの」
「子供の頃から悪いことばかりしててね」
 清原、彼はというのだ。
「いじめとかカツアゲとかね」
「そうしたことばかりしてなのね」
「そう、物凄く評判が悪いの」 
 清原、彼はというのだ。
「私も嫌いよ、子供もいじめてくるから」
「高校生なのに?」
「自分より弱い相手いじめるのが大好きなのよ」
「最悪な人ね」
「将来はヤクザ屋さんよ」  
 そうなっていくともだ、美奈代は言った。
「本当に最低の人間だから」
「それでその最低の人がなのね」
「そう、トンネルに行ってね」
「お化けがいるかどうか見ようとしてるの」
「実際にいるかどうかね」
「本当にいたらどうなるの?」
 希はその場合についてだ、美奈代に怪訝な顔になって尋ねた。
「一体」
「さあ、何かとんでもないことになるらしいわね」
「食べられるか取り憑かれて祟り殺されるか」
「そうなるのよね」
「そう言われてるけれどね」 
 こうした話の常としてだ、真相は不明だが言われているのだ。 
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