酒呑童子
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第二章
「だからあまり参考にはならないわよ」
「そうなのね」
「まあ初心者だからちびちび飲みなさい」
「それじゃあね」
小雪は母の言葉によくわからないといった顔で応えた、そしてだった。
桐子と学校であれこれ話してだ、そのうえで小雪の団地の部屋に二人に入った。部活も終えて夕食も済ませた休日の前日の夜だ。
桐子はテーブルに座ってだ、向かい側の席の小雪に言った。
「じゃあ飲むか」
「今からね」
小雪は桐子にぽつりとした言葉で応えた。
「そうしましょう」
「ああ、ただな」
「うん、お酒は買ったけれど」
見れば安い焼酎の瓶が二本、それに柿ピーがある。つまみも買ったのだ。
「飲めばいいのよね」
「柿ピーと一緒にな」
「それだけ?」
「色々読んで聞いても」
桐子もよくわからないといった顔である。
「先輩達もそう言うだけで」
「あまりね」
「参考にならなかったな」
「そうよね」
二人で明らかに要領を得ていない顔で話をした、桐子はここで小雪に尋ねた。
「あとおじさんとおばさんは」
「お父さんは今日会社の人達と飲んでるらしいわ」
「じゃあ帰り遅いか」
「そう、お母さんはいるけれど」
「おばさん今お風呂だしな」
二人にさっき入って来ると言って実際に風呂場に入った。
「何か聞けないな」
「お母さんお風呂あがるの待つ?」
「それから聞くか」
「そうする?」
二人でそんな話をした、そしてだった。
とりあえず焼酎と柿ピーはそのままにして由貴を待った、程なくしてすっきりとした顔で風呂から出て来た由貴に二人で聞いた。
「ちょっとお酒の飲み方教えて」
「そうして下さい」
「だからそう言われてもね」
由貴はジャージにどてらの姿で娘とその友人に応えた。
「私の飲み方は参考にならないわよ」
「そう言うけれど」
「お願いします」
「じゃあね、お母さんの飲み方見せるわね」
娘達に応えてだ、由貴は仕方なくといった顔でだ。メイクを落として眉がなくなっているその顔で言ったのだった。
そのうえでだ、リビングの端に置いていたウイスキーの瓶を取ってだ。
空けて酒をコップに入れてストレートで水を飲む様にだ。
ゴクゴクと飲んでいく、そしてあっという間に一本空けてから言った。
「これでいいかしら」
「えっ、もう?」
「もう飲んだんですか?」
「だから寝酒で飲むだけだから」
それに過ぎないというのだ。
「すぐ飲んですぐ寝るだけだから」
「いや、幾ら何でもね」
「それでもですよ」
二人で由貴に突っ込みを入れた。
「あっさりし過ぎて」
「全然わからなかったけれど」
「だから言ったじゃない」
見れば顔は次第に赤らんできている、酒が入ったのは明らかだった。
「これがお母さんの飲み方よ」
「あっという間だったわね」
小雪もいぶかしみながら母に返した。
「本当に」
「だからそう言ってるじゃない」
「あのですね」
桐子は右手を挙げて由貴に尋ねた。
「そうしてお酒ごくごく飲めます?」
「普通の人は出来ないみたいよ」
由貴は桐子の問いにもあっさりと答えた。
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