ファイアーエムブレム聖戦の系譜 〜幾多の星達〜
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222部分:決戦その一
決戦その一
決戦
両軍が出陣して数日後シアルフィ平原において解放軍九十万と帝国軍三十三万は遭遇した。互いを確認した両軍は直ちに陣を組んだ。
解放軍の陣は大三角の陣であった。左右に騎士団を配しそれに混ざるように竜騎士及び天馬騎士を置いている。中央は歩兵部隊でありセリスがいる本陣も置かれている。圧倒的な兵力を背景とし相手を押し潰そうと考えているのが解かる。
「何、騎士団を前面に出すのでも鶴翼の陣を組み機動力を活かす為に左右に配したのでもないのか?単に兵力のみで我が軍を押し潰すつもりなのか?」
アルヴィスは前線に出て敵の布陣を見ながら思わず首を傾げた。例え劣勢であろうとも敵の虚を衝き劇的な勝利を収めてきた解放軍にしてはあまりにも陳腐で稚拙な陣である感じられたからであった。
「それにしても中央にあれだけ兵力を配しその上本陣まで置くとは・・・・・・。まさか我等の戦い方を知らぬわけではあるまいに。いや・・・・・・」
アルヴィスは自身の言葉を自嘲し口の端を歪めて打ち消した。
「最早知略を使う必要も無いということかな。滅びる運命の私には」
「!?陛下何か仰いましたか!?」
護衛の騎士が問い掛けた。
「いや、何も言ってはおらぬ。何もな」
彼はその問いをはぐらかす様に否定した。
本営に帰って行くその背は寂しくえも言われぬ哀しみを羽織っていた。それは大陸の君臨する皇帝のものとは思えないものであった。
一方解放軍本陣においてこの戦いの総指揮を執るセリスも自軍の布陣に少し違和感を覚えているようである。隣に控えるオイフェに問うた。
「何度も聞くけれどオイフェ・・・・・・、いくら兵力で優位に立っているかあrといってもこの布陣は危険ではないかい?」
「危険?何がです?」
これはオイフェの性格からくるのであろう。他の解放軍の者ならばいささか悪戯っぽく笑って答えたりするものであろうが彼は全くの真顔でもって答えた。
「決まっているじゃないか。まさか帝国軍の戦法を知らないわけじゃないだろう?」
「はい」
やはり真顔である。
帝国軍の戦術は『星落とし』として知られている。陣を三つに分け第一陣は中央に重歩兵と軽歩兵、弓兵、魔道部隊を組み合わせた部隊の左右に騎士団を置く。横に平行に攻撃し敵軍を圧迫する。第二陣は治療担当のそう兵団と親衛隊からなる。アルヴィスはこの陣において指揮を執る。この戦術の要は第三陣にあった。
第三陣はヴェルトマーがグランベル王国内で六公国の一つとして存在していた頃から炎騎士団の中核を務めていた炎魔道師の部隊である。彼等は横に整然と長方形の陣を組んでいる。装備は炎を司るヴェルトマーに相応しく炎系の魔法である。とりわけ極めて攻撃範囲が広く射程も長いメテオを全員が装備していることが特色である。このメテオが問題であった。
メテオに限らず遠距離用の魔法は使いこなすには相当な魔力と技量を要する為夜間においての単独攻撃や撹乱戦等相手の戦力を削り取っていく場合に使われてきた。その使い方の難しさから戦術指揮において卓越したものを持つイシュトーも本格的に戦闘に入る前に敵の戦力を少しばかり減らさせるものとして使用するだけであった。それはどの軍においても同様であった。相手の虚を衝く知略及び機動力、攻撃力を駆使した急襲により勝利を収めてきた解放軍などは全くといって良い程使用していない。こうした遠距離用魔法の使い方を根本から変えた者がいた。その者こそ他ならぬアルヴィスでありこの変革こそがヴェルトマー炎騎士団を大陸最強と謳われるまでに押し上げたのである。
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