ファイアーエムブレム聖戦の系譜 〜幾多の星達〜
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217部分:聖剣その六
聖剣その六
「これがティルフィング・・・・・・。我がシアルフィに伝わる伝説の神器、かって幾万の魔性の者達を倒し数多の戦いを勝利に導いたというあの伝説の剣・・・・・・」
パルマークは両手に剣を取り眺める様に見るセリスに対し言った。
「シグルド様がヴァルハラに旅立たれるその時にいずれ時が来たならばお渡しするように私に言われたのです。それに従い私は今まで密かに保管していたのですがそれをご存知だったその方のご命令でここまで持って参りました。さあ、その剣をお持ち下さい。その時セリス様が真に光の皇子となられこのユグドラルを暗黒神の手から解き放たれる時なのです」
「・・・・・・・・・」
セリスは両手でゆっくりと柄を握った。力が全身にみなぎってくるのが感じられる。
「これが聖剣の力・・・・・・」
青く輝く気がセリスの全身を包む。セリスの青い髪が生物の様に波立ち瞳の輝きが増していく。
「暖かい・・・・・・。それでいて何と心強い力なんだ・・・・・・」
気が収まった。剣を鞘に戻し腰に着ける。
「ようやく聖剣を手に入れられましたな」
オイフェが言った。
「うん、この剣の光で闇を切り払い大陸を救い出そう」
そう言った直後であった。一人の騎士が肩で息をしつつ天幕に駆け込んできた。
「申し上げます、帝国軍がシアルフィに来ました。その数三十万以上!」
「何っ!」
セリスも諸将も一斉に天幕を飛び出した。そしてシアルフィのある東北東へ急行した。
その後に将兵達が続く。九十万の将兵達が大河の如き流れで動いた。
「あれが帝国軍本軍である炎騎士団・・・・・・。流石に見事な軍容だね」
セリスは赤い軍服、赤い軍旗、赤い鎧、赤い装飾で固めた炎騎士団を見て思わず賞賛の声を漏らした。対峙する帝国軍は整然と、且つ的確に布陣され赤で統一されたそれはさながら燎原に燃え盛る紅蓮の炎のようであった。
その軍の先陣には帝国軍の諸将が一同に立ち並ぶ。とりわけその中心にいる十一人の将達の威容は他を圧し目を見張らんばかりであった。
「あれがヴェルトマーの十一将か。話には聞いていたけれどやはり見事だね」
「彼等こそ皇帝の手足です。彼等を討たなければ皇帝を倒し帝国を滅ぼす事は適わないでしょう」
セイラムは心の中に渦巻く複雑な感情を押し殺しそれをあえて、そして苦心して顔に出さずセリスに対して冷静な口調で言った。
(セイラム・・・・・・)
セリスはそんな彼の苦しい心境を理解していた。あえて声はかけなかった。それが最もよいと思ったからである。
帝国軍は兵力において三倍近い開きがある解放軍に対して臆面も見せず対峙している。その中からどよめきが小雨の様に起こった。それはすぐに豪雨の如き歓声となった。
「何、あの声」
マナが呟く。その歓声は次第に皇帝万歳、という皇帝アルヴィスを称えるものとなった。
「皇帝万歳だと・・・・・・!?」
グレイドとゼーベイアが万歳、万歳、と木霊するのを耳にしながら言った。その木霊は一言発せられる度に大きくなる。
炎の如き軍勢の中から一人の豪奢な軍服とマントを身に纏った男が出て来た。帝国軍の諸将が一斉にヴェルトマー式の敬礼をする。
「遂にご登場か」
「思えば長かったな」
ヒックスとダルシンが言う。言葉はやや軽さが感じられるが表情も口調も緊張したものである。
「アルヴィス皇帝・・・・・・!」
オイフェが憎しみと恨みを含んだ声でその男の名を呼んだ。
アルヴィスは帝国軍とその諸将を従える形で解放軍、とりわけセリスを見据えた。暫くそのままセリス達と対峙していたがやがて解放軍から顔を離し己が軍の中へと帰っていった。
それと共に帝国軍もシアルフィ城の方へと軍を引き揚げていった。すかさずロドルバンとブライトンがセリスの追撃するよう進言する。だがセリスは首を縦に振らなかった。
「今は戦う時じゃないよ。機が熟した時に完全に撃滅する・・・・・・。そうだね、オイフェ」
オイフェはそれに対し黙って頷いた。天下の趨勢を決する死闘の幕が今開けようとしていた。
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