ファイアーエムブレム聖戦の系譜 〜幾多の星達〜
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212部分:聖剣その一
聖剣その一
聖剣
ミレトス神殿においてユリウス皇子が直率する暗黒教団との攻防を終えた解放軍の諸将と精兵達はミレトスとシアルフィを繋ぐ橋を渡らんとしていた。
ミレトスとシアルフィは海峡によって隔てられている。この海峡はミレトス海峡と呼ばれている。狭く浅い為に橋が架けられた。ミレトスからグランベルへの交通の要地であり古くから橋が架けられていた。
平時には旅人や行商人の往来が盛んであるが一度戦乱になると激戦地となる事でも知られていた。
聖戦の時にはミレトスから北上する十二聖戦士のダイン、ファラ、ネールの軍と暗黒教団の有力な将であるピツァロの軍が激突した。
橋を落としたピツァロは持久戦をとり海軍の援軍を得てから叩こうとしたが飛竜の高い輸送力を使った聖戦士達の空からによる渡河作戦により帝国軍は崩壊した。援軍として来た帝国海軍もダイン達の援軍に来たオードの斬り込み作戦により全滅した。この時オードは船から船へ次々に飛び移り敵を斬り伏せていたが後世の詩人達はこれを『オードの船崩し』と称えた。今百年を経て聖戦士の子孫達がこの海峡を渡ろうとしている。
「予想していた様な帝国軍の迎撃は無かったんだね」
セリスは馬に乗り橋を渡りながら隣に騎乗するオイフェに対して言った。
「はい。落とされていた橋も何事もなく無事修復出来こうして渡河できました。我が軍の主力は既にユングヴィ城に入城しております」
「ユングヴィ城での戦いは?」
「それが無血開城なのです」
「無血開城!?」
セリスはそれを聞いて思わず声を上げた。
「はい。兵力のほぼ全てをメルゲンとの境に新たに築いた砦に集結させ当主であるスコピオもそちらへ行っていた為我等の軍が来るとすぐに開城してしまったようです」
「そしてスコピオ公は?」
「我等の動きに対し軍の殆どを引き連れユングヴィ城に向かっております」
「やはりね。すぐに迎え撃とう」
「いえ、それが講和の使者を先に送って来たのです」
「講和の!?」
セリスは講和という言葉に反応した。
「はい、弓騎士団全軍解放軍の末席に加えて頂きたい、と。その代わりにユングヴィの民の安全を保障して欲しい、と。これが偽りでなき証拠としてメルゲンとユングヴィの境の封鎖を解くと言っています」
「本当かい!?」
「はい、それが事実である証としてメルゲンに集結していたアグストリア解放軍が渡河してこちらに向かっております」
「アグストリア解放軍が全軍加わる事になるのか。これは大きな戦力になるね」
「それだけではありません。クロード神父と神器の継承者であるコープルが我が軍にいる事を知ったエッダ僧兵団が我が軍に合流する為こちらに来ております。既にシアルフィを越えユングヴィまであと三日のところまで来ております」
「エッダもか・・・・・・。それにしても帝国はこうした相次ぐ離反に対して何も手を打っていないのだろうか」
セリスはふと首を傾げた。
「最早帝国は事実上瓦解しております。やはり先の大戦における一連の謀議が公にされたのが決定打となっております。我が軍を倒すべく帝国軍本軍を動員するのが精一杯のようです」
「帝国軍本軍・・・・・・あの炎騎士団だね」
セリスはオイフェの話を聞いて言った。
「はい。皇帝アルヴィスの忠実なる腹心である十一将を中心とした歴戦の将達と炎魔道師を核とした混成軍が特色です。その高度な指揮系統とどの様な戦局にも対応出来る軍編成及びアルヴィス自身の天才的とも言える戦術により今まで無敗を誇ってきました。兵力は三十三万、装備も良く帝国の切り札とも言うべきものです。今現在十一将達に率いられドズルからアルヴィスが鎮座するシアルフィへ進軍してきているとの報告が入って来ております。彼等との戦いがおそらくこのユグドラルの命運を決定するでしょう」
オイフェはシアルフィの方を見て言った。
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