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ファイアーエムブレム聖戦の系譜 〜幾多の星達〜

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208部分:金銀妖瞳その一


金銀妖瞳その一

                     金銀妖瞳
ーシアルフィ城ー
 青い宮殿の中の城主の間においてアルヴィスは四つの絵を見ていた。
 見ればどれも肖像画である。彼はそれ等の絵を一つ一つ見ていた。
「父上・・・・・・」
 最初の絵は赤い服に身を包んだ紅髪の男性である。髪は長く波打ち顔には険がある。先代ヴェルトマー公にしてアルヴィスの父ヴィクトル公である。
 幼い頃から母に手を上げ多くの愛人を持っていた父を憎く思っていた。だが父の母に対する辛いまでの愛と執拗な自身に対する苦悩を知った今では愛している。
「母上・・・・・・」
 薄紫の髪の神秘的な美しさを持つ女性であった。アルヴィスの母シギュン、闇の血脈に生まれ夫とクルト王子への二つの愛に揺れ不幸を招き寄せてしまった母。
 何時か必ず帰って来ると信じていた。帰って来た幸福を知らなかったとはいえ自らの手で打ち壊してしまった。
「ディアドラ・・・・・・」
 母と同じ薄紫の髪の儚げな女性である。
 真実を知ったのは彼女が世を去ったその時だった。自分の腕の中で目を閉じようとする彼女が兄と自分を呼んだ時全てを悟った。そして自分が今の今まで、そしてこれからも道化でしかないことも。
「アゼル・・・・・・」
 最後は赤い神と瞳を持つ若者であった。優しい微笑みを自分に対して向けているように見える。
 父と母が自分の前から去った後アゼルだけが家族だった。シグルドとレプトール公の戦いの後戻って来たがバーハラの戦いの直前に自分が陰で行なってきた謀略を知りシグルドの下へ走った。それが永遠の別れとなった。別れた袂は二度と戻らなかった。野心の為にかけがえのないものを失ってしまった。
「結局私は愚かな道化だったのだ。他の者を見下しながらも何もわかっておらず何も見えてはいなかった。この世にいる誰よりも愚かな男だったのだ」
 目を閉じ自嘲を込めて言った。言葉に無念さと血が滲んでいる。
 扉を叩く音がした。入るように言った。
 一人の騎士が入って来た。サッとヴェルトマー式の敬礼をした。
 それを手で制した。用件を聞いた。
「パルマーク司祭が来られました」
 かってシアルフィの司祭を務めバイロン、シグルド二代に渡って仕えてきた男だ。誠実で謹厳な人物として知られている。
 入るよう言った。程無くして白髪の小柄な老人が連れて来られた。
 顔中皺だらけである。青い法衣に包まれた身体はその上からでも痩せ細っているのがわかる。白い髪は薄くなり弱々しく法衣に覆い被さっている。
 騎士に退室するよう言った。後には二人だけが残った。
「久し振りだな、パルマークよ」
「・・・・・・・・・」
 答えようとはしない。主を陥れ死に追いやった男など本当なら見たくもないのだ。
「答えぬか。まあ良い。卿に渡したいものがある」
「渡したいもの・・・・・・」
 パルマークはようやく口を開いた。
 
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