Three Roses
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第三十三話 落ちる薔薇その五
「何も出来ない」
「我々としては」
「残念なことに」
「それでですね」
「お妃様のことを」
「何とかするべきですね」
「そうだ、しかしだ」
マイラの体調のことを考えてだ、また言ったのだった。
「危ういな」
「そうですね、それで儀礼のことは」
側近の一人が太子に問うてきた。
「どうされますか」
「そのことか」
太子はその即金に顔を向けて言葉を返した。
「当然だ」
「旧教としてですね」
「対する、しかしだ」
「お妃様は」
「いない、その分こちらの力は弱い」
彼等にとっての旗印となっているのがマイラだ、その彼女がいないのならそうなってしまうというのだ。これもまた現実だ。
「このことも踏まえるとだ」
「はい、どうしてもですね」
「我々は劣勢ですね」
「論戦でも引き分けでしたし」
「勢いも削がれていますし」
「防戦になる」
太子は今の彼等の状況を見据えて言った。
「そうなる」
「今のところは」
「どうしてもですね」
「そうなってしまう」
「しかしですね」
「やることはやる、相手が優勢でもだ」
例えそうであってもというのだ。
「やるべきことはやっていこう」
「わかりました」
側近達も応えた、そしてだった。
太子達は儀礼の話にも赴いた、この件は太子の予想通り論戦での引き分けとマイラに欠席が響いてだ。
太子達旧教徒側に勢いがなく。
マリーが率いる新教徒達優勢のまま最初から最後まで進み彼等の思い通りの流れとなった。その結論もだ。
マリー達新教徒達の願い通りになった、新教と旧教双方の儀礼を取り入れた新教を優位としながらも融和を図ったものだった、その儀礼の詳細を読みだ。
マリーは満足してだ、全てが決まった後で彼女の部屋で側近達に話した。
「これでよしです」
「全てはですね」
「我々の考え通りになった」
「だからですね」
「はい、旧教徒側に勢いもなかったので」
マリーはこのことも話した。
「それが幸いしてです」
「終始我々のペースでいけましたね」
「こちらの提案通りにです」
「儀礼は決まりました」
「まさに幸いとすべきですね」
「そうですね、しかし」
ここでだ、マリーは顔を曇らせてこうも言った。
「お姉様がおられないことは」
「そのことはですね」
「やはり気になりますね」
「お身体は相当に悪い」
「そのことは間違いないですね」
「お姉様は政治の場には常に出ておられました」
マリーと同じだ、生真面目な彼女らしくそうしていたのだ。
「そしてご自身のお考えを述べられて動かれていましたが」
「やはり近頃です」
「お身体が相当に悪く」
「その為にですね」
「この度は出席されていませんね」
「その様ですね」
「そうですね、では」
マリーは暗い顔のままだ、こうも言った。
「セーラとマリアにお話していきましょう」
「お二方にですか」
「そうされるのですか」
「はい」
まさにとだ、マリーは側近達に答えた。
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