ファイアーエムブレム聖戦の系譜 〜幾多の星達〜
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188部分:光を奪われてその一
光を奪われてその一
光を奪われて
「勝負あり!」
闘技場の審判が高らかに叫ぶ。勝利を讃える歓声がイシュトーを包む。
「イシュトー兄様、御見事!」
リンダが客席から立ち上がりはしゃいでいる。彼はそれに対して微笑んで手を振る。
「おいリンダ、はしたないぞ。少しは周りの目を気にしろ」
アミッドがはしゃぐ妹を窘める。二人の手に持つ焼き栗が零れ落ちそうだ。
「こんな小さな身体で全く・・・・・・。そんな事だと嫁の貰い手が無くなるぞ」
「いいもん、ここにちゃんといるから。兄さんに言われる筋合いは無いわ」
そう言うとホークを抱き締めて舌を出す。いきなり抱き付かれ告白されたホークは目が点になった。
「トローンの三連発か。あれは避けられないよな」
「流石雷帝、メルゲンの時からまた腕を上げたわね」
かってイシュトーと剣を交えたスカサハとラクチェが感歎の声を漏らす。
「炎と雷の高位魔法に素早い剣技・・・・・・。俺達の中でもかなり強い方だな」
シヴァが分析する。
「その上頭も切れる。メルゲンでよく勝てたものだ」
ブライトンも言う。そしてその間に次の対戦相手が闘技場に入って来た。
「ん・・・・・・!?」
イシュトーと同じマージファイターらしいその男を見て解放軍の者達は何やら違和感を覚えた。それは闘技場の中で対峙するイシュトーも同じであった。
「成程な、そういう事か」
はじめ、の声もかからぬうちに敵は魔法を放って来た。エルサンダーだ。
「甘いっ!」
剣に雷を込め横に払った。雷球が撃ち消された。
「皆出番だ!この中にも随分紛れ込んでいるぞ!」
観客席にいた解放軍の将達が一斉に席を蹴る様に立つ。混乱し逃げ惑う客達に紛れて刺客達が襲い掛かる。それを剣と魔法で受け止め逆襲に転じる。
「どうだ、やっぱり弓じゃ俺の右に出る奴はいないだろう」
出店の的屋で買った矢十発を振り向きながら射抜き全て真ん中に当てたファバルは意気揚々だ。
「それさっき俺もやったぜ。御前だけ出来るわけじゃない」
「そうそう、自慢するならもっと凄いのを見せて欲しいな」
レスターとロベルトが文句をつける。一緒にいるアサエロやディムナ、タニアも同意する。
「何、じゃあ目隠しをしてこの店の的を全部真ん中で射抜いてやるよ。ロナン、悪いが布で目を覆ってくれ」
「はい」
布がファバルの眼にかけられるとする。そこで彼は言った。
「来てるぜ」
「ああ」
一同彼の言葉に頷いた。
「人に紛れてないで・・・・・・」
そう言いながらイチイバルを引く。
「正々堂々と来な!」
タニアが矢を放つ。矢は店の親父の頬を掠めた後すぐ後ろの妖しげな男を撃った。
「親父さん、驚かせてすまねえ。今から少し厄介な事になる。後で弁償するから勘弁してくれよ」
周りからゾロゾロと妖しい男達が短刀や弓矢を持ち現われた。店は忽ち撃ち合いの場となった。
リフィスはパーン、トルード、セイラム、そしてティナと五人で路を歩いていた。リフィスとパーンの手にはジャラジャラと音がする袋がある。彼等はその袋を楽しそうに玩んでいる。
「大漁大漁、やっぱり小銭を稼ぐのはギャンブルだな」
パーンは袋に手を入れて掻き回しその音を聞いて楽しみながら言った。
「全くだ。これでサフィにネックレスでも買ってやろうか」
リフィスも手に金貨を取り袋の中に落として遊んでいる。こんな事には意見が合う二人である。
「どうせイカサマで稼いだ金だろう。そんなもの身に着かんぞ」
トルードが釘を刺す。
「そうよ、そんな事続けてたらまたオイフェさんにどやされるわよ」
ティナも言った。
「うるせえ、そう言う御前等は俺達が稼いだ金で遊んだり飲み食いしたりしてんじゃねえか。同罪だ」
「それにいつも俺達のイカサマを隠そうとしてくれてるよな。おかげでやり易いよ」
リフィスとパーンは開き直っている。この辺りは流石である。
「それはそうだけど」
ティナが口をくぐもらせる。
「どうだ、グウの音も出ねえだろ。じゃああの若親父には黙っててくれよ」
リフィスが軽い笑いと共にそう言った直後にセイラムは足を止めた。
「・・・・・・上だ」
他の者も足を止めた。
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