ファイアーエムブレム聖戦の系譜 〜幾多の星達〜
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186部分:暗黒教団その三
暗黒教団その三
「そしてディアドラ様は暗黒神の化身となった我が子に殺された・・・・・・。何ということだ」
イリオスが頭を振った。
「そしてそれ等を全て企んだ男がいる」
「誰ですか、それは」
シャルローが問う。
「マンフロイ」
「マンフロイ!?いつもユリウス皇子の側にいたあの不気味な老人か!?」
「はい」
ヨハンの言葉にそれまでイシュトーの後ろに控えていた少女が答えた。
「一体何者なんだ、あのマンフロイという男は」
「暗黒教団の大司教です」
少女はデルムッドの問いに答えた。
「暗黒教団の大司教・・・・・・。じゃあ一番偉い人ですね。ところで貴女は一体どなたですか?」
ロナンが尋ねる。
「サラと申します。そして・・・・・・」
サラは言葉を続けた。
「マンフロイは私の・・・・・・祖父なのです」
「何っ!?」
セリス、レヴィン、そしてシレジア組以外の殆どの者が身構えた。そしてサラを取り囲んだ。
「待ってくれ皆、落ち着くんだ!」
セイラムがサラを庇うようにして間に入った。
「セイラムどけよ、そいつは暗黒教団の奴だぞ」
リフィスが剣を握りつつ言った。
「そうだ、暗黒教団の奴は一人も生かしてはいけない、そう教えられただろ」
アサエロも弓をサラに合わせながら言った。
「かって大陸を地獄に落とし今また暗黒神の世にしようとする奴等の大司教の孫・・・・・・。よく私達の前に姿を現わせたわね」
マチュアが今にも首を斬り落とさんと身を屈めた。その目は殺意で燃えている。
「・・・・・・暗黒教団の者は誰であろうと生かしてはおけぬのか。例え仲間でも」
「えっ!?」
セイラムは右手を顔の高さに出した。そして指を曲げ上に向けた手の平から黒い炎の様なものを出した。
「!?」
炎の様に見えたがそれは炎ではなかった。絶えず動きその中心には邪な顔が映っていた。
「セイラム、それは・・・・・・」
「フェンリル。暗黒魔法の低位に位置する悪しき魂を操る魔法だ」
「暗黒魔法!?それじゃあ・・・・・・」
「そうだ、私は暗黒教団のダークビショップだ」
レスターとフィーにそれぞれ答えた。一同は言葉が出なかった。
「私は暗黒教団の隠れ里で生まれ幼い頃よりこの闇の魔法と暗黒神の教義を教えられてきた。はじめは暗黒神こそが絶対の正義だと信じていた。しかしユリウス皇子が帝国の実権を握り我々が皇子の側近として世に出ると王子やマンフロイ達の残忍な行いに疑問を感じるようになった。こんな事を続けていてはいけないと考えていた。そんな時イザークでシグルド公子とディアドラ王女の遺児セリス公子が反帝国の旗を掲げていると聞きバーハラを出奔しイザークへ向かったのだ」
「そしてリボーで僕達の軍に志願してきたんだね」
「そうだ。そして解放軍の力で暗黒神の世が復活する事を阻止するつもりだったのだ。・・・・・・私の素性もいずれ明かそうと思っていた。・・・・・・信じて欲しい」
セイラムが語り終えたのを見計らいイシュトーが口を開いた。
「このサラの母は父マンフロイの反対を押し切りある若者と駆け落ちした。だがすぐに見つかり目の前で恋人を父に殺され連れ戻された。母もサラを産んでから暫くして悲しみのあまりこの世を去った。この娘は祖父に両親を殺されたのだ。それからはマンフロイに育てられたが両親を殺した祖父や暗黒教団の教義を嫌い密かにある司祭の教えを受けシスターとなった。そして卿等を挟撃する軍を得ようとしてミレトスに入りペルルークの森で暗黒教団の者と出会った私の前に現われ私にあの教団の存在を教えてくれたのだ。サラなくして今の私はないだろう」
「・・・・・・・・・」
一同はイシュトーのその言葉に沈黙し動きを止めた。イシュトーが嘘を言っていないのはわかる。サラが悪い人間ではないこともだ。だが何か心に妙なしこりが残っていた。
「皆マイラの話は知っているだろう」
レヴィンが語りはじめた。
「ロプト帝国の皇族でありながらその虐政に苦しむ民衆の為に立ち上がり帝国に反旗を翻した聖戦士マイラ。さっきも話に出て来たな」
一同その言葉に頷いた。彼が何を言わんとしているかもわかった。
「暗黒教団の教義は確かに邪悪なものだ。ユリウスやマンフロイのような者もいる。だがマイラのように教団の誤りに気付き民衆を救う為に戦った者もいるのだ。それを忘れないで欲しい。もし忘れたならば我々も暗黒教団やホプキンズのような異端審問官と同じになってしまうだろう」
まずセリスが二人に歩み寄った。そして最初はセイラムの、そしてサラの手を両手で強く握り締めた。
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