ファイアーエムブレム聖戦の系譜 〜幾多の星達〜
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176部分:バルドの十字その二
バルドの十字その二
「でしょ?男って女の手料理が大好きなのよ。レスターもすごく美味しいって言ったんだから」
「これからはレパートリーと盛り合わせね。自分でも味付けは大分良くなってきたと思うわ」
「じゃあ今度はケーキかカステラ作りましょ。二人共あれで甘いもの好きだし」
「ええ」
湯船の中で和気藹々としている面々をアルテナは微笑みながら見ている。
「いい雰囲気ですね。自然と心が落ち着いてきます」
長い髪を後ろでまとめている。スラリとした長身は均整が取れておりきめ細かな白い肌をしている。
「はい。私はここの方々が大好きです」
ユリアが湯から顔を出しニコリと笑っている。薄紫の柔らかい髪はアルテナと同じように後ろでまとめられている。小柄な身体は他の者達に比べて幼い身体つきであるがその肌は透き通らんばかりに白い。
「あっ、貴女は・・・・・・えっと・・・・・・」
「ユリアと申します。これから宜しくお願いします」
「あっ、はい。こちらこそ」
互いに頭を垂れた。双方共悪い印象は受けなかった。
「ユリアさんは解放軍に入って長いのですか?」
「はい。ガネーシャで入れてもらいました。それと私の事はユリアと呼んで下さい」
「はい。見たところ魔法を使われる職業のようですが」
「シャーマンです。杖と光の魔法が使えます」
シャーマン、その職業のことはアルテナも知っていた。杖ばかりでなく他の職業の者ならばどう努力しても低位に位置するライトニングまでしか使えない光の魔法を高位まで扱う事が出来る特殊な職業である。しかしその特殊性故強大な魔力と秀でた才能を必要とし上級職にも昇格出来ない為光の魔法を天敵とする闇の魔法の使い手である暗黒教団の者達が滅んで以降シャーマンとなる者は殆どいなくなった。アルテナ自身シャーマンに会ったのは初めてであった。
「シャーマン・・・・・・。ユリアは何故シャーマンになったのですか?シャーマンになれる位の魔力があればすぐにハイプリーストやセイジになる事が出来るのに」
「最初からなんです」
「えっ!?」
ユリアの予期せぬなおかつ多少ピントの外れた答えにアルテナは戸惑った。
「実は私記憶をなくしてバーハラ城の外で倒れていたところをレヴィン様に助けて頂いて・・・・・・。気が付いたらシャーマンになっていたんです」
「そうだったの・・・・・・。すいません、ひどいことを聞いてしまいました」
「いえ、そんな」
優しい娘だ、そう思った。そして同時にユリアから何か暖かくそれでいて周りの全ての者を癒す不思議な気を感じた。
(何かしら、この気・・・・・・)
アルテナはふとユリアを見た。
(何か二つの気が感じられるわ。一つは芯の強いそれでいて優しい気、もう一つは暖かく癒される気・・・・・・)
ユリアはアルテナを見てニコリと笑っている。あどけない、それでいて月の輝きのように人々を和ます笑みである。
(誰かに似てる、この気・・・・・・。特に強くそれでいて優しい光・・・・・・。けど誰のだろう・・・・・・)
その時パティやカリンたちがユリアの名を呼んだ。ユリアが彼女達の方を向いた時左耳の後ろが見えた。
「あら!?」
左耳の後ろにうっすらとであるが十字の痣があった。それはセリスの右腕にあるバルドの聖痕と同じものだった。
(さっきは無かったのに・・・・・・。お湯で上気して浮かんできたのかしら)
その痣がバルドの聖痕に酷似している事もアルテナにはわかった。自分やリーフにもあるからである。だがその形の痣がユリアにあるのは偶然であると思った。そんな痣もある、と考えただけであった。
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